Image by: tanakadaisuke
誰にでも、まじない的な存在がある。それは神社のお守りかもしれないし、誰か大切な人からもらったプレゼントかもしれない。あるいは星座占いのラッキーアイテムだったり、ネイルアートやジュエリー、洋服だったりする人もいるだろう。持つだけで、身につけるだけで、なんだか強くなったような気持ちになれるもの。「タナカダイスケ(tanakadaisuke)」のクリエイションには、そんな風に着る者に力を与える、魔力のような力がある。
「おまじないをかけたようなお洋服で、自分の中にいるまだ見ぬ自分と出会えますように」という言葉はタナカダイスケのブランドコンセプトである。田中のクリエイションといえば、やはり刺繍が一番に頭に浮かぶ。そのほかにも、パールやビジュー、柔らかなシフォン素材、レースなど繊細なディテールが特徴だが、それらを組み合わし、一着の服になった時の強度は他に類を見ない非凡さがある。
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東京コレクションへは2度目の参加となった、タナカダイスケの2024年秋冬コレクション。ショー会場の床には、カラフルな星のモチーフやスパンコールが散りばめられ、暗闇の中で光を放っていた。また、ショーが始まると、会場中央、モデルを照らす大きなライトの中から、星屑のシャワーが降り注ぐ。それらが何を意味しているのか、田中の口から直接聞くことはできなかったが、おそらくはおまじないをかけているのだろう。ランウェイを歩くモデル、ゆくゆくはブランドの服を着るすべての人に、おまじないをかける思いで服づくりを行う田中らしい演出だ。
コレクションには、学生服を思わせるようなクラシックなジャケットやスラックス、グレーのプリーツスカートとテーラードジャケットを組み合わせたスタイルをはじめ、レースで切り替えたドレスやナポレオンジャケットを模した真っ赤なジャケット、刺繍のブラウスにネクタイを締め傘をさしたスタイルなど、全20ルックが登場。手元には本を持ち、フレームレスの眼鏡をかけたモデルも多く見られた。羽が生えたフレームを通して読む本には、どんなことが書かれているのだろうか。そんな想像が膨らんだ。
Image by: tanakadaisuke
終盤に登場した、繊細な花の刺繍を施したピンクのジャケットとパンツのセットアップは、目を凝らして見ると、胸元にはウサギのイラストが刺繍で施されていた。どこか子どもじみた、でも癒されるモチーフは、子どもの頃に母が持ち物にした刺繍を思い起こさせる。思えば、あの刺繍もおまじないだったのかもしれない。ショーのラストには、壊れたオルゴールのような音楽とともに、ピンクのシフォンドレスが登場。フリルを段々にあしらった美しいスカートのフォルムには、おとぎの国に迷い込んだような、純粋な少女時代の夢を彷彿とさせた。
魔法とは所詮は架空のもので、実在はしない。しかし、プリキュアの変身に魅せられた少女時代のように、装うこと、変身することで人はいつでも、いつまでも魔法にかかることができる。ショーの序盤、会場に流れる女性の声が、優しく柔らかにこう歌った。
秘密の箱に眠っている
記憶は今もきらめいたまま
星の屑を集めてみる
まやかしみたいなおまじない
終わりのない遊びの続き
僕は王子様 君は姫様
針と糸とほんの少しの魔法があれば 夢の中へ
会場床に散りばめられた装飾
Image by: FASHIONSNAP
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