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誰もが知るあのブランドの歴史を「タグ」の変遷で紐解く新連載がスタート。第1回は「パックTシャツ」でお馴染み、アメリカを代表するアンダーウェア・カジュアルウェアブランド「ヘインズ(Hanes)」。白Tシャツの定番として現在も広く愛されている同ブランドは、創業120年以上の長い歴史を持つため、古着として流通するアイテムの種類や年代も多岐にわたります。今回は、そんなヘインズ商品の製造年の見分け方を、タグの変遷を通して解説。また、古着好きなら押さえておきたい商品名や素材、特に人気やレア度の高いアイテムなどについて、下北沢で古着屋「MIMIC」「ft.」を営むオーナーの渡辺宝さんに教えてもらいました。
目次
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ヘインズとは?
ヘインズは、1901年にプレザント・ヘンダーソン・ヘインズとジョン・ウェスレイ兄弟が、紳士用アンダーウェアを製造する会社としてアメリカで創業。「快適さ」をコンセプトに、複数枚を手頃な価格で提供する「3P-Tシャツ(3枚パックTシャツ)」をはじめ数々の画期的な製品を生み出し、メンズアンダーウェアで不動の地位を確立。また、1970年代にはヒッピー文化の象徴の一つである「プリントTシャツ」のボディとして、その後はさまざまなイベントやキャンペーンのユニフォームとして「ビーフィーT(BEEFY-T®)」が多くの人々に愛用されるなど、長年アメリカのライフスタイルとともに歩み、アメリカはもちろん世界中で親しまれてきたブランドです。
押さえておきたい商品・ライン名
タグの変遷を辿る前に、まずはヘインズの歴代の代表的な商品名やライン名をおさらい。
- ビーフィーT(BEEFY-T®)
ヘインズを代表する商品の一つとして、1975年に誕生。 ヒッピー文化の象徴でもある「プリントTシャツ」のボディとして開発されたこのアイテムをきっかけに、“アウターとしてのTシャツ”が世の中に定着したと言われています。「牛のようにタフでたくましい」を意味するその名の通り、丈夫で洗えば洗うほど肌に馴染む、独自の風合いが特長のTシャツです。現在も白Tシャツの定番として、男女問わず圧倒的な人気を誇る商品。
- ヘインズ ハーウェイ(Hanes HerWay)
1980〜90年代に展開していたウィメンズライン。女性向けのため、メンズと比べて身幅が細めのアイテムが多い。
渡辺さん
古着として流通している個体数が少なく、比較的レアなアイテム。トレンドや好みにもよりますが、個人的には独特の身幅や風合いが魅力だと思っています。
- ヘインズ スポーツ(HANESPORT)
1965年に、兄のヘンダーソン・ヘインズが設立したヘインズニッティング社と、弟のジョンが設立したヘインズポージャリー社が合併し、ヘインズ コーポレーションとなった際に誕生したライン。
渡辺さん
このラインが生産されていたのはおそらく5年間ほど。古着屋としては、このタグが付いていたら大体「60年代」と判断します。
- ウィンド シールド(WIND SHIELD)
「風除け」を意味する、1940〜1960年代頃に作られていたスウェットシャツの名称。商品のタグには、ヘインズロゴの上部または下部に「WIND SHIELD」と表記。
- ブリーズ シールド(BREEZE SHIELD)
「微風除け」を意味する、1940〜1960年代頃に作られていたウィンド シールドよりも生地が薄い仕様のスウェットシャツの名称。商品のタグには、ヘインズロゴの上部または下部に「BREEZE SHIELD」と表記。
渡辺さん
ヘインズに限らず、今ではヴィンテージスウェット自体が貴重なアイテムになりつつあります。この2つは年代が古いこともあって、見かける機会はかなり少ないですね。
赤・青・ゴールドラベルの違いは?
赤ラベル
ヘインズの代表アイテムの一つとも言えるパックTシャツには、「赤ラベル」「青ラベル」「ゴールドラベル」と呼ばれる3種類が存在します。その違いは「素材」。赤はコットン100%で柔らかい肌触り、青は綿75%/ポリエステル25%で型崩れしにくく乾きやすい、ゴールドは“交編”と呼ばれる2種類の太さの違う糸を組み合わせたプレミアムコットン100%を用いた、凹凸感のある豊かな表情が特徴の素材感となっています。
赤と青の2種類は古くから展開しており、1970年代にはそれぞれ素材に合わせた色のタグが使用されていたようです。現在展開されている商品も、素材ごとにサイズ表記のプリントがそれぞれ赤・青・ゴールドで施されています。
【年代順】ヘインズのタグ変遷
ヘインズのタグは、1924年にブランドとして「赤ラベル」のタグを初めて発表して以来、 2005年に現行のデザインになるまで様々な変遷を経てきました。そのため、タグのデザインによっていつの時代に作られた製品なのかを判別することが可能です。ただし、同年代の中でも素材やラインなどによって多種多様なタグが存在しており、その細かい違いを全て把握して判断するのはかなり難しいといいます。
渡辺さん
元々が“アンダーウェア”という消耗品である性質上、そもそも古着として流通していないものも多く、また大量生産品のため、古い在庫が捌けるまでは新旧タグの商品が混在しているなど明確な時代の区分が難しいケースも多々あります。そのため、今回は最低限押さえておくべき時代ごとの大まかな変遷を解説します。
1924〜1940年代
まずは、最初期の1924〜1940年代のヘインズ製品に付けられていたタグの解説からスタート。ブランドとしての地位を確立するため、ヘインズは1924年に初代「赤ラベル」を発表するともに、自社の全ての商品を「ヘインズ」ブランドに統一し、ロゴを独自の赤いラベルに表示するようになります。それによって、「ヘインズ」の名が広く世の中に浸透するようになったそうです。
この初代タグの特徴は、白く縁取られた赤地に白い大文字のロゴがあしらわれ、「HANES」のEとSの文字の一部がクロスしていること。その交差の度合いが深いほど時代が古いという説もあるようですが、正確な年代判別は難しいとのこと。また、当時は刺繍タグとプリントタグの両方が存在しており、刺繍タグの方が年代が古いと言われています。
渡辺さん
この時代の商品はかなり古い上に完全なる“肌着”なので、古着屋界隈でもほぼ目にすることはないレアアイテムです。ヴィンテージマニアやコレクターの方にとっては垂涎モノ。
1950〜1960年代
1950年代になると、ロゴのデザインを一新。引き続き大文字のロゴではあるものの、白い縁取りがなくなってやや簡素化され、字体も少し角張った形に変わります。タグの種類も刺繍タグからプリントタグが主流に。また、「ウィンド シールド」や「ブリーズ シールド」のタグが付いたスウェットは、1950〜1960年代に作られたものが多く見られます。「ヘインズ スポーツ」タグのアイテムも、1965〜1970年頃に製造されたものです。この時代には、商品のハイクオリティーが世間に認知され、ヘインズはアメリカの紳士用アンダーウェアのマーケットで不動の地位を確立していきました。
渡辺さん
タグ上のサイズ表記も、「SMALL」「MEDIUM」「LARGE」から「S」「M 」「L」の略表記に変化したり、「36/38」「42/44」表記との併記になったりと年代によって違いがあるものの、それを元に製造時期を厳密に断定するのは難しいのが正直なところです。
1970年代〜
1970年代には、大きく分けて3つの種類のタグが登場します。その特徴をそれぞれ見ていきましょう。
レッドフラッグタグ
1970年代になると、通称「レッドフラッグタグ」と呼ばれるタグに刷新。この頃からロゴの表記が小文字の「Hanes」になり、ロゴの右下に商標登録を示す「®」マークが付くようになります。このデザインのタグは、赤のほか青や緑、黒地に黄色の縁付きのものなど、さまざまなカラーが存在していたようです。
三角タグ
同じく1970年代には、通称「三角タグ」と呼ばれる白地にオレンジの三角形のマークが印象的なタグが付いた製品も登場。そのデザインの特徴から、「三角タグ」以外にも「オレンジタグ」や「チビタグ」とも呼ばれているそうです。そして、1975年にはヒッピー文化の象徴であるプリントTのボディとして開発された、肉厚な素材感の「BEEFY-T」がデビュー。タグにはブランドロゴと併せて「BEEFY-T」の文字が入っており、現在に至るまでの各年代のBEEFY-Tタグが存在します。三角タグのBEEFY-Tバージョンも。
オレンジタグ
1970年代後半〜1980年代には、「オレンジタグ」と呼ばれるタグが用いられます。黒縁の白文字「Hanes」ロゴの下に、オレンジ色の文字で「BEEFY-T」や「poly-cotton(*コットン75%とポリエステル25%の混紡素材)」「FIFTY-FIFTY COMBED(*コットン50%とポリエステル50%の混紡素材)」などと書かれているのが特徴。
渡辺さん
三角タグの別称である「オレンジタグ」と同じ通称なので、ちょっと紛らわしいですね(笑)。ちなみに、よく見るとこのタグでは「BEEFY-T」の横に商標を意味する「™️」マークが付いているのですが、1980年代に登場する「青タグ」では「®」に変わっているので、そのタイミングで商標登録が完了したという歴史がわかるようになっています。
1980年代〜
1980年代にはタグのデザインが大きく変わり、ブルーを基調とした色合いの通称「青タグ」にリニューアル。ロゴの頭に付いた青と赤の丸からなる「H」マークが特徴です。このタグでも、オレンジタグと同様「BEEFY-T」や「poly-cotton」「Fifty-Fifty(*コットン50%とポリエステル50%の混紡素材)」と書かれたものが多く見られます。
1990年代〜2005年
1990年代に入ると、赤の四角い「H」マークが特徴のロゴをあしらったタグが登場。ヘインズは1996年のアトランタオリンピックの公式スポンサーだったため、当時のオフィシャルウェアにもこのタグが使われていました。
渡辺さん
ヘインズに限らず他のアメリカブランド全般にも言えることですが、この時代になると製造拠点がアメリカ国内から徐々に国外へと移っていきます。そのため、「MADE IN USA」ではない他国製表記のタグが増え、素材や生産国表記も英語のみから多言語表記に変化しているのが特徴です。
2枚タグ
そして、1990年代後半〜2000年代初め頃に多く流通していたのが通称「2枚タグ」。1枚目の短いタグにはブランドロゴやライン名が、2枚目のタグの表面には素材や生産国表記、裏面には洗濯方法がそれぞれ3ヶ国語でプリントされています。
渡辺さん
1970年代のヒッピー文化から始まった「プリントTシャツ」ブームは、1990年代にさらに加速。「BEEFY-T」をはじめヘインズのTシャツは“ボディ”として多用されたので、2枚タグの上もしくは1枚目のヘインズロゴタグをカットした上から別ブランドのタグが縫い付けられたTシャツを、古着として目にする機会も多いのではないでしょうか。
タグレス
さらに2002年には、従来のタグ式ネームを熱転写ネームに替え、首筋の違和感を解消させた“タグレス”3P-Tシャツが全米で発売されます。
2005年〜現在
そして、2005年に現行の「フラッグロゴ」にリニューアル。それまではずっとロゴの右下にあった商標登録マーク「®」が、同ロゴでは右上に移動。現在もヘインズ製品にはこのフラッグロゴが用いられ、広く親しまれています。
ヘインズのタグをレア度順にすると?
ヘインズのタグのレア度は、ズバリ「古い順」。歴史が長いブランドであることもあり、特に1940年代以前の初期タグは、なかなかお目にかかれない貴重なタグです。また、アイテムとしての人気度では、肉厚な「BEEFY-T」は昨今のトレンドともマッチしているため、ヘインズの古着の中では人気が高いそうです。
渡辺さん
元々はアンダーウェアブランドであるという特性上、古ければ古いほど流通している数は少ないと思います。個人的な見解では、「ヘインズ ハーウェイ」は1980〜1990年代と時代は比較的新しいものの、レア度が高いタグではないかと思っています。
■タグで紐解くブランドの歴史
Vol.1 「ヘインズ」
Vol.2「ギャップ」
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