誰もが知るあのブランドの歴史を「タグ」の変遷で紐解く連載。第2回は、“ファストファッションブランドの元祖”とも言われるアメリカのカジュアルブランド「ギャップ(GAP)」。SPA(製造小売業)の先駆けとして、企画から製造、販売までサプライチェーン全体を自社で一貫して手掛け、50年以上にわたって世界中でカジュアルウェアを展開してきました。そんな同ブランドの古着は、「オールドギャップ(OLD GAP)」として10年ほど前から再注目されています。今回は、時代とともに変化してきたギャップ商品の製造年の見分け方を、タグの変遷を通して解説。また、オールドギャップならではの魅力や、特に人気やレア度の高いアイテムなどについて、下北沢で古着屋「MIMIC」「ft.」を営むオーナーの渡辺宝さんに教えてもらいました。
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ギャップの歴史をおさらい
ギャップは、「自分に合うジーンズを簡単に見つけられるようにしたい」というシンプルなアイデアと「洋服を売る以上のことをする」という信念のもと、1969年にドン&ドリス・フィッシャー夫妻がアメリカのカリフォルニア州で創業。サンフランシスコのオーシャンアベニュー1950番地にオープンした「ギャップ1号店」では、当初「リーバイス(Levi’s®)」のメンズジーンズとレコードテープのみを取り扱っていたそうですが、数年のうちにアメリカ国内で店舗数を拡大。その後、1974年に初の「ギャップ」製品の展開をスタートすると、1980年代後半にはイギリスやカナダなど海外に進出し、1990年代には日本でも路面店を複数出店。2010年には中国にも店舗をオープンするなど、大手衣料品チェーンとして世界中で親しまれてきました。
オリジナル製品では、ルーツであるデニムをはじめ、トレンドに左右されないベーシックなアメリカンカジュアルウェアをメンズ、ウィメンズからキッズ、ベビーまで幅広く展開しています。
オールドギャップとは?
オールドギャップとは、その名の通り“ギャップの古着”のこと。ただし、基本的には1990年代以前に製造されたギャップの製品を指します。同社が「ギャップ」タグを付けた商品を展開し始めたのが1974年なので、そこから1990年代までの約25〜30年間に作られたアイテムが該当します。
渡辺さん
ギャップの古着が「オールドギャップ」として注目されはじめたのは、今から約10年ほど前。当時は1990年代までに作られたものをそう呼んでいましたが、それから10年が経った今では対象範囲が拡大して、2000年代前半製のものも「オールドギャップ」に含まれるようになった感覚があります。今後も時代とともに、オールドギャップと定義される年代の範囲は変化していくかもしれません。
【年代別】ギャップのタグ変遷
ギャップの創業は1969年ですが、創業当初はリーバイス製品などを扱う小売店だったため、ブランドオリジナルのラベルが付いた商品は1974年に展開をスタート。それから2000年代に登場した現行タグに辿り着くまで、そのデザインはさまざまな変遷を経てきました。ここからは、近年その魅力が再評価されつつある「オールドギャップ」と呼ばれる年代を中心に、年代ごとのタグデザインの違いとその見分け方を紹介します。
渡辺さん
厳密には、各時代ともにラインやアイテムに合わせてより多様で細分化されたデザインのタグが存在していたかと思いますが、それを全て網羅するのは難しいのが実情。今回は、「これを押さえておけば間違いない」という各時代の主要なタグを中心に、その変遷を解説していきます。
1974〜1987年
ギャップとして初めてのタグが1974年に登場して以降、1980年代後半まではアイテムやラインによって何種類かのタグが作られ、同時期に複数のタグが存在していたこともあったようです。順を追って、各タグの特徴を見ていきましょう。
初期タグ
1974年に登場した最初期のタグは、「小文字タグ」とも呼ばれる通り、丸みのある小文字のフォントで「gap」と書かれているのが特徴。黒地に白い文字で刺繍されているものが多かったようです。このロゴは、現在も馴染みのある大文字の「GAP」ロゴが登場する以前の1987年まで用いられていました。
渡辺さん
以前はよく見かけましたが、最近は古着で「小文字タグ」のアイテムを見る機会はかなり減った印象があります。
Pioneerタグ
1978年には、ジーンズやコーデュロイ商品を展開するレーベル「Gap Fashion Pioneers」が登場。「gap PIONEER」もしくは「gap Fashion Pioneers」のロゴと馬車を配したデザインが特徴で、アイテムの色や素材に合わせてさまざまなカラーのタグが存在していたようです。
Gapタグ
1980年代に入ると、ロゴの頭文字の「G」だけが大文字になった「Gapタグ」も登場します。ちなみに、ギャップのアイコン商品の一つである21色展開の「ポケットTシャツ」は、同時代の1984年に発売。1985年公開の映画「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で、マイケル・J・フォックスが着用したことでも注目を集めました。
渡辺さん
「Gapタグ」は製造期間が限られていたため古着として流通している数が少なく、レアタグと言えますね。
1988年〜1990年代
そして、現在も同ブランドを象徴する大文字の「GAP」ロゴが、1988年にデビュー。正方形の白地に紺文字の「白タグ」、紺地に白文字の「紺タグ」のほか、銀地に白文字の「銀タグ」と呼ばれるタグが登場し、いずれも1990年代を通して展開されていたようです。
渡辺さん
この年代のタグに共通する特徴は、「GAP」タグのすぐ近くにサイズ・素材・洗濯表示が記載されたタグが付いていること。後年、白タグや紺タグに似たデザインのタグが付いたアイテムも多く生産されていますが、品質表示タグが首元ではない場所に付いていることで、時代を判別できるようになっています。
白タグ
紺タグ
銀タグ
渡辺さん
銀タグは、白タグや紺タグと比べて付けられていた製品が限られていたのか、古着では見かける頻度が少ないレアタグです。
2000年代〜
2000年代以降は、1990年代の「白タグ」や「紺タグ」に近いデザインのタグを中心とした、現行タグへと移行。刺繍タグからプリントダグが主流になり、品質表示タグが首元にないことが、前年代との大きな違いです。
オールドギャップの見分け方
オールドギャップのタグ(1990年代製)
現行のタグ(2016年製)
ここで改めて、1990年代製の「白タグ」や「紺タグ」と、類似したデザインの現行タグを見分ける方法をおさらい。下記の2点をチェックして、もし特徴に当てはまっていればオールドギャップ、違っていれば近年の製品と判断できます。
- 「GAP」タグの近く(多くは右上の位置)にサイズ・素材・生産国・洗濯表示が書かれたタグが付いている。
- 「GAP」タグのスペースに対して文字が占める割合が大きく、余白が少ない。
渡辺さん
フリマアプリや一部の古着屋などでは、実際には近年の製品であるにもかかわらず、「オールドギャップ」として誤って販売されているケースも見受けられます。一見間違えやすいので注意が必要です。
ギャップのタグをレア度順にすると?
ギャップのタグのレア度は、基本的には「古い順」。ただし、1980年代の「Gapタグ」や1990年代の「銀タグ」など、製造期間や製造数が限られていたものは古着としての流通も少なく、レアと言えるようです。一方、レア度とは別に人気が高いのは、1990年代の「紺タグ」。当時はまだUSA製のアイテムも多く、アメリカの古着らしい肉厚でタフな作りと風合いの魅力や、初心者でもディグりやすく、ヴィンテージの中ではコスパが良いこともその人気の理由だといいます。
渡辺さん
今ではコストカットなどの影響もあり、タグもプリントが主流になるなど簡素化が進んでいますが、オールドギャップには昔の仕様が残っている。普段見慣れているようなベーシックな服だからこそ、その“違和感”のようなものが魅力の一つなのかもしれません。
■タグで紐解くブランドの歴史
Vol.1 「ヘインズ」
Vol.2「ギャップ」
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