Image by: FASHIONSNAP
ファッションに関わるクリエイター・アーティストを紹介していく新連載「私が紹介したい表現者」。お互いのことをよく知る"友人"であり仕事をともにする"仲間"でもある2人が、それぞれの作品の魅力やこれからの展望について語ります。
第1回に登場するのは、フォトグラファー 岡崎果歩とスタイリスト 中本ひろみ。ルームシェアをする程プライベートでも親交の深い2人だからこそ見えてくるお互いの作品の魅力とは?
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- 中本ひろみが紹介する「岡崎果歩」 -
岡崎果歩 / フォトグラファー
「白桃ピーチかほかほちゃん」
まっしろでふわふわで可愛いかほちゃんです。得意分野は漫画とお酒とゲームと料理です。とっても優しいです。
写真は一流です。
- 岡崎果歩が紹介する「中本ひろみ」 -
中本ひろみ / スタイリスト
「 ありがとう、ひろみがいてくれて本当よかったよ」
機嫌の振り幅が"Like a cat"でむかつく時もあるけど(特に朝はMEOW!)結局なんでも話せる親友であり、ファッション撮影のバディだなと思います。よく映画や音楽など、その時々のお勧めを教えてくれます。カラオケの十八番は松任谷由美さんと小泉今日子さん。
2人の出会い
ー2年前からルームシェアもスタートし、プライベートでも親交の深いお二人。まずは、最初の出会いについて教えてください。
中本:2016年にインディペンデントファッションマガジン「STUDY」の撮影現場で初めて会いました。私はスタイリスト小山田孝司さんのアシスタントとして、かほちゃんはフォトグラファー奥山由之さんのアシスタントとして現場に入っていました。
岡崎:奥山さんは色々なカメラを使いながら撮影をするので、その準備やフォローでいつも現場でテンパっていました...。とにかく自分のことで精一杯だったので撮影中に誰かと話す機会はほとんどないのですが、その時は現場が海ほたるだったこともあり、撮影後に少し休憩時間があって。その時に初めてなかぽんと話しました。
中本:話した内容は覚えてないので、当たり障りのない会話をしていたんだと思います(笑)。
岡崎:撮影が終わった数日後、街でたまたま会って。その流れで飲みに行くことになり、一気に意気投合しました。好きな作品や見ている雑誌などがすごく近くて、一緒に何かやりたいなと思うようになりました。
ー初めて2人で取り組んだ撮影は?
岡崎:海外のファッション誌「NR」から"talented"をテーマにした撮影依頼があり、初めてなかぽんに依頼しました。これまで海外誌の話などをできる知人があまりいなかったのですが、なかぽんは見ている範囲が近くて感覚が合うなと。この企画では自分達でキャスティングも行い、モデルの酒井いぶきちゃんと弓ライカちゃん、知り合いのあきらくんの3人にお願いしました。リラックスして撮影に臨んで欲しかったので、近すぎず遠すぎない距離感で撮ることを意識しました。
中本:ただ結局この企画お蔵入りになってしまって….いろんな意味で思い出深い作品です(笑)。
「NR」の為の撮り下ろし作品
Image by: Kaho Okazaki
ー何度も撮影をともにしてる2人ですが、意見が食い違うことはありますか?
中本:もちろん意見が食い違う時もありますが、写真に関してはかほちゃんを信頼しているので、セレクトなどの最終判断はかほちゃんの意見を優先することが多いです。ルームシェアを始めてからは2人でいる時間がすごく増えたので、一緒出かけた時にロケハンができたり、ふと湧いてきたアイディアを鮮度高く共有できるので、情報交換の質と量がすごく上がったと思います。
岡崎:ファッション的な感覚はなかぽんを信頼しているので、私としては大きく揉めることはないなと思っています!
中本ひろみに聞く「岡崎果歩の"写真"の魅力」
作品の特徴は?>>やわらかな写真に見えて芯がある
中本:かほちゃんの人間性を知っているから思うことかもしれませんが、やわらかな写真の中にブレない芯を感じます。撮りたいものは譲らないし、作品のセレクトや構成を決める重要な時はきちんと自分の意見を言うんですよね。それって自分の作品を守る為に必要な行動なのですが、中々できない。そういう姿勢が作品に表れていると思います。
岡崎:アシスタント時代に奥山さんが自分の作品に対して真っ直ぐに向き合う姿勢をずっとみてきました。なので、私からすると意見を言うことはすごく自然なことだと思っています。
中本:初めて見た作品はかほちゃんがロンドンに住んでいた頃に撮影したものだったと思うんですが、今よりもっとガーリーな雰囲気がありモデルも含めてすごく可愛い写真でした。
岡崎:もう10年程前に撮影したものですね。ロンドン時代は中々目的を見つけて撮影するということができてなかったので、今より荒さがありました。ただ、今と変わらず"最高にプレシャスな瞬間を撮りたい"という気持ちで挑んでいるので、可愛いって言ってもらえるのは嬉しいです!
好きな作品は?>>写真集の写真
中本:好きな写真…たくさんあって選べないんですけど、やっぱりかほちゃんの写真集「心臓」の写真が素敵だなと思います。仕事で撮影しているものは色々な制限があることが多いので、撮りたいものに全力で向き合えている作品はより一層素敵ですよね。
岡崎:この作品集は6年間撮り溜めたものをまとめたものなのですが、表紙の写真は一緒に住んでいる家の機材部屋から見える電柱の景色なんですよ。たまたま夕焼けがすごく綺麗な日があって、その景色を撮ろうとしたらなかぽんが「こっちの部屋の方が夕焼けきれいやで」って教えてくれて。その時に撮影した写真が表紙の1枚です。ずっと作品集の方向性を彷徨っていたのですが、この写真の電柱が心臓のようにみえたことで"世の中にある普遍的な景色がまた違う何かに見えたらよいな"という気持ちが湧き、作品集の方向性が決ました。なかぽんが教えてくれなければ気づけなかった景色だったので、本当に感謝です。
挑戦してほしいことは?>>被写体の新しいイメージの創造
中本:今までかほちゃんが撮影している被写体は未発見の魅力を探りたくなるような方が多かったのですが、世間的にイメージが確立している俳優さんや国民的スターのような方の新たなイメージを、かほちゃんの写真を通して生み出してみて欲しいです。
岡崎:普段撮影するモデルは天気でいうと"曇り"っぽい子をキャスティングしている気がします。"曇り"の子は自分のキメ顔を持っていない方が多いので、一番素敵な表情を探りながら撮っていく工程がすごく楽しいんですよね。あと、最近気になっている方はタレントのYOUさん。すごくチャーミングで、最高のコメディエンヌだなと思います。もし撮影が実現したら絶対緊張すると思うのですが...いつか撮ってみたいですね。
岡崎果歩に聞く「中本ひろみの"スタイリング"の魅力」
スタイリングの特徴は?>>ミニマル+α
岡崎:なかぽんのスタイリングは、ミニマルなんだけどそこに何かプラスされていて、最終的にすごく上品に仕上がっている。そのバランス感覚がすごく長けていると思います。あとピックアップするモデルがそれぞれオリジナルな雰囲気を持った子が多くて、そのセンスもさすがだなぁと。
中本:いつもそのモデルにとっての"最高なファビュラスを作りたい”という気持ちでスタイリングを考えているし、本人にも楽しんで欲しいと思っています。なのでただ崩すだけではなくて、本人に気に入ってもらえることも大切。本来の姿である私服とすっぴんが一番可愛いと言われたりしますが、そことは違う最大級の”ファビュラス”を提案したいですよね。
好きなスタイリングは?>>福生での撮り下ろし作品
岡崎:私も好きな作品が多くて選びきれないんですが、今年4月に発売されたカルチャーマガジン「フィアシブ(FIERCIVE)」に向けて一緒に制作したファッションストーリーのスタイリングがすごく好きでした。違和感を残しながらも上品なスタイリングにまとめてくれて、なかぽんの良さが特別際立っていたと思います。この撮影ではメイクにユカハイラックさん、ヘアにハヤテさん、モデルにタクマさんが入ってくれたのですが、このチームのムードが本当に最高で。撮影したかったイメージにスタイリング、ヘア、メイク、モデルがすべてハマっていて、何も考えなくてもシャッターを押せば良い写真が撮れるという感じでした(笑)。それくらいチームのパワーがすごかったです。
中本:いわゆる流行のファッションや整えられた都会ではなく、少しカオスな雰囲気の街やそこに生活する人から偶然生まれた奇跡的なスタイリングや写真が好きで、それをファッションストーリーで再現したいと思い進めた企画です。ロケーションと写真、モデル、ヘアメイクが合わさった時のバランスを考えて、服自体にインパクトがあるものをサラッと着てもらうのが丁度いいかなと思い、詰め込み過ぎないスタイリングを意識しました。
「FIERCIVE Magazine」
Image by: Photo : Kaho Okazaki Styling : Hiromi Nakamoto Makeup : Yuka Hirac Hair : Hayate Maeda Model : Takuma Fujiwara
挑戦してほしいことは?>>海外誌での活動
岡崎:日本で活動する面白さもたくさんあると思うのですが、その分縛りも多い様に感じます。なかぽんのスタイリングは自由度が高いほど活きると思うので、海外誌で中本スタイリングを炸裂させてほしいです!
中本:海外誌はまだやったことがないので、やってみたいですよね。近々、ロンドンに行こうと思っていて。スタイリングで日本の若手ブランドを使用することが多いので、そういった視点からロンドンは楽しそうだなと。あと中国や韓国などアジアのファッションもすごく興味がありますね。活動領域を広げながら、提案できる幅をもっと広げていきたいです。
2人が思い描くこれから
中本:私個人の目標としては、現状9割がウィメンズなのでもっとメンズのスタイリングをやっていきたいです。既成概念に捉われず、ファビュラスでオリジナルなスタイリングを追求していきたいです。
岡崎:私は来年の2月に福岡で個展を控えているので、それに向けた作品作りを進めるというのが目先の目標です。 あと、なかぽんと2人で「ネネプティ(néné petit )」というクリエイティブユニットを作ることを考えています。これまでも2人で仕事をする機会はたくさんあったのですが、キャスティングからディレクションまで引き受けられることをもっと認識してもらいたいなと思い、ユニット名を掲げて窓口をつくりたいなと。
中本:ヴィジュアルを作る上で、トータルディレクションできることはすごく強みだと思います。私たちが表現出来る可能性を「ネネプティ」を通して発信していきたいです!
岡崎果歩
奥山由之氏に師事。第21回1_WALL ファイナリスト。主な展示に「なまもの」(ガーディアン・ガーデン ,2020 / Place M ,2021)、「心臓」( テラススクエア フォトエキシビション,2022)。2022年に初の写真集「心臓」を出版。
>>Instagram
中本ひろみ
1993年生まれ。小山田孝司氏に師事。独立後はレディスを中心にファッション誌や広告で活動を続ける。
>>Instagram
■ネネプティ:インスタグラム
(企画・編集 : 城光寺美那)
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