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英国出身デザイナー ニック・ウェイクマン(Nick Wakeman)が手掛ける「スタジオ ニコルソン(STUDIO NICHOLSON)」が、日本初の旗艦店「STUDIO NICHOLSON AOYAMA」を南青山にオープンした。ロンドン・ソーホーに旗艦店を持つ同ブランドは、昨年アジア初の実店舗を韓国に出店。「ザラ(ZARA)」とのコラボレーションも展開し、性別・年齢を問わないタイムレスなデザインと高い機能性が顧客の支持を集めている。
2010年のブランド始動から13年、スタジオ ニコルソンが追求し続けるクリエイションの原点はどこにあるのか。そして、日本初出店への想いとは?クリエイティブディレクターとしてブランドを統括するニック氏に話を聞いた。
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日本初出店、建築の決め手は「安藤忠雄氏らしさ」
ーまずは日本初となる旗艦店について。これまで日本では自社オンラインおよびセレクトショップのみでの展開でしたが、このタイミングでオープンに至った理由は?
スタジオ ニコルソンにとって大きなマーケットの1つである東京で、顧客と直接的なコンタクトを取りたかったからです。顧客ひとりひとりの性格や好みを知ることができるのがリアル店舗の魅力で、日本の顧客を理解するためには直営店の出店が必要不可欠であると考えたんです。
ーなぜ青山というロケーションを選んだのでしょうか?
近隣に店舗も多く、ショッピングエリアとして最適だからです。来日した際に何度も訪れ、良い場所だと常々思っていたことも理由の一つです。
ー店舗の内装・外装の特徴を教えてください。
コンクリートブロックの外装が気に入っています。好きな建築家である安藤忠雄氏の建築に似たものを感じますよね。この建物は、私の好みをよく理解している日本のスタッフが見つけてくれました。
インテリアは、ロンドン・ソーホーの旗艦店のために、建築家と共同で制作したものを模範にしています。日本のスタッフが良い仕事をしてくれたおかげで、2022年にオープンした韓国の店舗に比べて上手くソーホー店を再現できました。まるで故郷のロンドンにいるような気持ちになります。
STUDIO NICHOLSON AOYAMAの外観・内観
Image by: FASHIONSNAP
ーオープン時に扱うおすすめ商品は?
おすすめしたい商品はたくさんありますが、今シーズンのカラーであるインディゴウォッシュのデニムジャケットとパンツは特に気に入っています。縫製は、イギリスの「ブラックホース レーン(BLACKHORSE LANE)」という老舗の工場にお願いしたため、ハイクオリティのプロダクトに仕上がりました。
デビューから13年、原点は母との服作り
ー2010年のデビューから13年。今の率直な気持ちを聞かせてください。
ブランドが順調に成長しているので誇らしい気持ちが一番大きいですね。36歳でブランドを始めて、気づけばもうすぐ50歳。多忙なせいか、時間の流れがとても早く感じます。
ーブランドはイメージ通りに成長しているんですね。
立ち上げ時に10ヵ年計画を立てたのですが、今のところは計画通りに進んでいます。ブランドスタート時は卸先からオーダーがあったにも関わらず支払いがなかったりと多くの困難がありましたが、なんとかここまで続けることができました。
ー13年間で変化したと感じる点は?
コレクションの規模が大きくなり、ブランドの認知度も格段に高くなりました。立ち上げ当初は、スタッフも私だけでしたが、現在は40人をオフィスに抱えています。ただ変わったものがある一方で、ブランドコンセプトやクリエイションへの姿勢は当初から変えていませんし、今後も貫き通したいと考えています。
ー自身のクリエイションに影響を与えた経験はありますか?
幼少期に母が私に服を作ってくれていたことですかね。素材を一緒に選んだりしていたのですが、今思えばそういった経験に影響を受けてファブリックにこだわるスタジオ ニコルソンのクリエイションは生まれたのかもしれません。
16歳から服作りを重ねるにつれて自分は素材の方に興味があると気が付いたので、チェルシー・カレッジ・オブ・アーツでテキスタイルを専攻しました。生地選びは私が最も情熱を注いでいる部分で、着心地の良さを追求するというブランドコンセプトに繋がっています。
ークリエイティブディレクターの立場から見るスタジオ ニコルソンの魅力もやはり生地ですか?
そうですね。ファブリックはスタジオ ニコルソンにとって最も大事な部分で、それぞれの生地が持つ良さや背景、服に合っているのかを考えてディレクションしています。生地の質がいいからこそ、顧客がスタジオ ニコルソンのファンでいてくれるのだと思っています。
もちろん服のシルエットなどにもこだわっていますが、適切な生地選びができていなければ話になりません。生地がどう構成されているのか、構造や手入れの方法、デザインや用途との兼ね合いなど、考慮すべきポイントは沢山あります。
ーどのような思考回路で服をデザインしているのでしょうか?
頭の中が図書館のようになっていて、映画、音楽、雑誌など、幅広いインスピレーションソースが浮かんでいます。その中からビビッときたものを適宜選んで服に落とし込んでいるイメージです。服を作る時はイメージから概要を練り、コレクションのムードや方向性を文字や画像で起こしてからデザイナーに渡します。そこからデザイナーがアイデアを膨らませ、私が生地を選んでディレクションを行うという流れです。
ーこれから伸ばしていきたいところはありますか?
バッグとアクセサリーの展開を年末までに増やそうと考えているところです。トラベルバッグやハンドバッグなど、今後は種類豊富に展開していく計画です。スタジオ ニコルソンではメンズウェアとウィメンズウェア、バッグ、靴とそれぞれのカテゴリーに担当デザイナーが就いていますが、今回は新たなバッグデザイナーと手を組む予定です。
ー2017年にはメンズラインを始動しました。メンズラインの現在の調子や顧客の反応はいかがですか?
好調に推移していると思います。立ち上げ当初と比較するとコレクションの規模感は約3倍です。地区や国によって異なりますが、グローバルで見ると売上の比率はメンズとウィメンズで同じくらいです。
ーウィメンズとメンズ、それぞれの購買層を教えてください。
ウィメンズとメンズともに、主に28〜35歳と50〜60代が購買層です。若い層とシニア層の両方に買い求めてもらえているのは嬉しいですね。
年齢が上の客層にはテーラードやスマートなアイテム、若い層にはデニムや太いシルエットのソルテパンツなどが好評です。
上質な製品をいつまでも、日本人に通じるブランド精神
ー1999年に初来日したときから、日本に対する印象は変わりましたか?
初来日した時には、英語の標識が一切なく、誰も英語を話していませんでした。今でも、旅行するのが大変だったことを覚えています(笑)。ファッションブランドなどは入れ替わりもありますが、昔からのお店は残っているので印象としてはそれほど変わってはいませんね。ただ、当時と比較するとインターナショナルブランドがかなり増えたと感じています。
ー日本に来たときにルーティーンにしていることはありますか?
同じ服を何十年も着用しているような東京の年配層を見るのが好きです。生地に使用感が出ていたり、シルエットが変わっていたりと、着古すことによって起こる変化がとても魅力的に映ります。人間観察が好きなので、わざと空港に早く行くこともあるくらいです。
ースタジオ ニコルソンの服にも、アレンジしながら長く着てほしいという想いを込めている。
そうですね。「長く着る」というのはまさにブランドが掲げる精神です。タイムレスで、いつでも着ることができて、一旦離れてもいつかは戻ってくることができる。スタジオニコルソンと日本人の性質はマッチしていると思います。
ー2022年には韓国にも出店しました。今後の出店計画は?
数年以内には中国または台湾に店舗を作りたいですね。アジア以外では、今年の後半にロンドンで2店舗目をオープンします。いずれはパリやミラノなどヨーロッパにも出店したいですね。
ー最後に、ファッションデザイナーを志すユースに伝えたいことはありますか?
率直な気持ちを伝えるなら「やらない方がいい」ですね。今のファッション業界は飽和状態で、沢山のブランドがある上に、すぐに思いつくようなことは全てやりつくされています。しかも本当に厳しい世界なのにも関わらず、自分のクリエイションを理解している人はほんの一握りしかいません。手元に100万ポンドでもあれば話は別ですが、元手に何もない場合はデザイナーを目指さないほうがいいと思います。
ただ、これを読んでもどうしてもファッションをやりたいのであれば、常に周りを見て、多くの情報をキャッチすることを心がけてほしいですね。スマートフォンの画面ではなく、本当に大切なのはリアル。広い視野を持って、貪欲に進んでいってほしいなと思います。
■STUDIO NICHOLSON AOYAMA
住所:東京都港区北青山3丁目7-10
営業時間:11:00〜20:00
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