ビーミング by ビームスの「シンプル イェット」が追求するワンランク上のベーシックとは?

影山達郎「ビーミング バイ ビームス」メンズディレクター
Image by: FASHIONSNAP

影山達郎「ビーミング バイ ビームス」メンズディレクター
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ビーミング by ビームスの「シンプル イェット」が追求するワンランク上のベーシックとは?

影山達郎「ビーミング バイ ビームス」メンズディレクター
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ビームスのライフスタイルレーベル「ビーミング by ビームス(B:MING by BEAMS)」には、幅広い世代に向けたオリジナルとセレクトのアイテムが並ぶ。中でも、心地よさとクオリティにこだわったワードローブを提案するシリーズが「シンプル イェット(SIMPLE YET)」だ。
ベーシックなアイテムこそ、使いやすくて上質な一着を長く愛用したい。デザインではクローゼットのどんな服とも寄り添う懐の深さを備え、ものづくりではスタッフ自ら育てた綿花を一部使用するなどこだわりを追求。それでいて「ビーミング」らしいグッドプライスにも配慮している。“シンプルなのに”という意味のライン名に込められた数々のこだわりを、影山達郎メンズディレクターに聞いた。

影山達郎「ビーミング by ビームス」メンズディレクター
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影山達郎
1984年、埼玉県生まれ。ビームス 渋谷(当時)、ビームス 原宿などでショップスタッフとして勤務した後、アウトレット部を経てビームスレーベルの オリジナルのMDとディレクターを兼務。2022年からビーミング by ビームス メンズレーベルのディレクターを務める。
シンプルだからこそ語れる名品を作りたい
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──「シンプル イェット」のコンセプトについて教えてください。
「シンプルなのに」のその先に語れる“何か”がたくさんあるライン、をコンセプトにベーシックアイテムを提案しています。たとえば生地が面白いだとか、日本製などシンプルだけど背景にあるこだわりを語れる、そんなラインです。「シンプル イェット」には自分たちで育てた素材をブレンドした生地の商品もあります。お客さまに安心をお届けするだけでなく、服を作る者の責任として、ものづくりの川上から川下まで知っておくべきと考えています。
──幅広い年齢層の顧客に向けてトレンドアイテムを展開する「ビーミング」で、あえてベーシックに目をつけた理由は?
トレンドの移り変わりによって、ベーシックのあり方も変化していると感じていて。その中で、服本来のベーシックに立ち返りたいとスタートしました。シンプルなデザインだからこそ、生地や日本製へのこだわりが明確なメッセージになります。

影山達郎「ビーミング by ビームス」メンズディレクター
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──具体的にはどんなアイテムがありますか?
そもそもビームスのメンズカジュアルはアメカジがベースにあるので、このラインでもアメカジアイテムを軸に、ものづくりをしています。今シーズンのアイテムでいうと、Tシャツやチノパンツ、デニムはアメリカンカジュアルブランドが代表するアイテムをイメージソースに製作しています。

“シンプル イェット” 2025年春夏コレクション
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うまく育つかわからないところから挑戦した綿花作り
──産地に入ったものづくりとして、和歌山で自ら育てた綿花で出来たコットンを使ったアイテムが好事例ですね。どのような背景で生まれたのでしょうか?
たまたま、チームの企画デザインのスタッフが和歌山の生地メーカー様と知り合いだったんです。3年ほど前に、そのメーカーの方と「綿花を1から育てる取り組みを一緒にやってみよう」という話になりました。
和歌山は繊維業の産地ではありますが、日本はそもそも綿花が育ちにくい環境だと言われていて、このプロジェクトもどうなるかわからないところから実験的に始まりました。「うまく綿花が育ったら、アイテムに取り入れたいね」くらいの気持ちで。今考えると、許してくれた会社に感謝したいですね(笑)。








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場所はもともと綿花畑が広がっていたわけではなく、メーカーさんの工場横の空き地をお借りしたんです。ビームスチーム4人に加えてメーカースタッフさんにもご協力いただき、土を耕すところからスタートしました。
──お試しで始まった初年度は、無事に収穫できたのですか?
これが大成功だったんですよ。11月に収穫時期を迎えて畑に行ってみると、たくさんのコットンボール(綿の実がはじけた白い繊維の塊)ができていました。ものすごい量が取れて、驚きました。
綿花ってこんなに高く伸びるのか、とか、1つの枝でこんなにたくさんのコットンボールができるのか、といったように気づくことがたくさんあった。コットンボールはすごく柔らかく、ふわっとしていて、気持ちいいんですよ。それでいて、引っ張ると伸びる。しなやかだし伸縮性もあるし、綿は改めて良い素材だなと魅力を再確認できました。











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収穫量が多かったおかげで、23年秋冬にはこのコットンを5%混紡したTシャツを作ることができました。しかし、翌年以降は台風や雨の被害が大きく、収穫量は減り、商品のブレンド率も3%になりました。気候によって、育つ綿の質感が変わることも知りました。自然を相手にしている大変さを、身をもって経験できたことも大きな学びでしたね。
シンプルなのに“味”がある服
──自社栽培のコットンは、2025年春夏コレクションでも使用していますか?
Tシャツに3%ブレンドしています。着ると、違いを感じていただけると思います。柔らかくて着心地が良く、洗うたびに風合いがよくなってさらに馴染んでいくんです。愛着が湧くってこういうことだなと思いながら着ています。
──これだけ人の手がかかっていて、Tシャツは1万円以下に抑えるなど価格面でも企業努力を感じます。
せっかく作ったのに、手が届かないプライスで体感してもらえないことが一番もったいないじゃないですか。やはりせっかく作るなら、生活に寄り添った価格設定にしたい。通常のオリジナルラインよりは1.5倍近く高いんですけど、お客さまには品質の高さとストーリーに納得してもらえている手応えを感じています。

自社栽培の綿を混ぜたオリジナルコットンTシャツ(9900円)
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──オリジナルコットンTシャツは、オートミールの色合いも自然由来の心地良さを感じますね。
この風合いは、着込むことでさらに味になっていきます。「シンプル イェット」はヴィンテージアイテムとの相性が良く、古着と組み合わせる着こなしが個人的には好きですね。
またデザインだけじゃなく、サイズにもこだわりがあります。このTシャツをはじめ、メンズのアイテムはSからXLまでの4サイズで展開しています。ベーシックなアイテムこそ、フィットにこだわりたい方は多いと思います。ジャストフィットだけじゃなく着崩す時もサイズレンジがあるほうが、選択肢が増えて楽しいですよね。商品のサイズを増やすとそれだけコストに跳ね返る側面はありますが、ここも妥協したくないところだったんです。

赤ロゴがアイコニックなブランドタグ
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──アイテムの構成はどのように決めていますか?
商品数は毎シーズン5型くらいをイメージしています。少ないと思われるかもしれませんが、コーディネートが完結するバリエーションで、手持ちの服とも組み合わせやすいちょうど良い数だと考えています。アイテムを厳選することでコンセプトをぶらさずに、好きな人にちゃんと刺さるものづくりができているかなと。これまで商品構成はシーズンごとに大きく変えることはなかったですが、今季は大きくリニューアルしました。
25年春夏はシンプルなのに“触ってみたくなる”服

トロピカル1ボタンジャケット(3万3000円)
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──2025年春夏コレクションについて教えてください。
新作はジャケットとデニムです。ジャケットはシンプルで合わせやすく、軽やかな1ボタンタイプ。山梨で縫製しています。生地にこだわり、タマムシのような光沢が面白い表情に仕上がりました。

セルビッチデニム(2万9700円)
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デニムは今回、初めて超長綿をミックスして作ったんですよ。ハリのある見た目に対して、足を入れてみると超長綿ならではの柔らかさに驚くと思います。ワンウォッシュをかけたライトな11オンスのセルビッジデニムを、岡山で縫製してもらいました。夏でも快適に履ける1本に仕上がっていて、気に入っています。

リサイクルコットン2プリーツチノ(2万2000円)
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チノパンツは今季、2タックのワイドストレートにアップデートしました。こちらはミリタリーチノのような生地感で、ハリのある表情がポイントです。ハンモウコットンをブレンドしたツイル生地を使用しています。

ピマコットンTシャツ(8800円)
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オリジナルコットンTシャツに加えて、今季は新たにピマコットンTシャツもリリースしました。度詰めのTシャツというと、文字通り目を詰めて編まれた生地のため、ごわごわした着心地を想像するかと思います。「シンプル イェット」では超長綿を使うことで、しっかりした生地ながらしなやかな肌触りを感じられ、着心地も良く仕上がっています。
──これらの新作に対して、顧客からはどんな反応がありますか?
ジャケットとデニムを中心に反響がありますね。ジャケットは3万3000円、デニムは2万9700円と価格面でも挑戦のシーズンになりましたが、生地の面白さがお客さまに好評です。シンプルだからこそ、触ってみたくなるようなものを作りたかったので嬉しいですね。

影山達郎「ビーミング by ビームス」メンズディレクター
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──影山ディレクターがもし、ライン名の「シンプル イェット」の直訳「シンプルなのに〇〇」と続きの一言を加えるとしたら、「〇〇」の部分にはどんなキーワードが入りますか?
そうですね・・・まず思い浮かぶのはやっぱり「シンプルなのに上質」。ライン全体のテーマであり、ずっと挑戦を続けたいことでもあります。「シンプル イェット」は多くの人の手によって作られていて、語れるストーリーが多いアイテムが揃っている。そういう意味では「シンプルなのに深い」と言えると考えています。
Chikako Ichinoi
1986年神奈川生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、三越伊勢丹に入社。伊勢丹新宿本店メンズ館の紳士雑貨でアシスタントバイヤーを務めた後、2011年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、主にメンズファッションを担当。ピッティ、ミラノ、パリメンズコレクション取材を始め、セレクトショップや百貨店、ファッションビルのビジネス動向を取材。現在はフリーランスとして、ファッションやライフスタイル系の記事執筆を手がける。男児と女児の母。
最終更新日:
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