SETCHU 2025年秋冬コレクション
Image by: Pitti Immagine Uomo
テキスタイル、クラフトマンシップ、テーラリング、機能性、コミュニケーション...。あらゆる面で高いクオリティの完全無比なクリエイションを続ける、桑田悟史が手掛ける「セッチュウ(SETCHU)」が、「最初で最後」と謳うファッションショーをイタリアのフィレンツェ国立中央図書館で開催した。「サヴィル・ロウ(Savile Row)」などで培ってきた同氏の服作りに対する知見が凝縮された2025年秋冬コレクションは、「I WANT LESS, AND LESS THAN THAT(私はより少なく、そしてそれよりさらに少なくしたい)」というテーマ通り、単なるシンプルではない、生地の糸一つとっても感じられる、こだわりに裏打ちされた本当の意味でのミニマルな作品群で構成された。
確固たる服作りの知見は、どうやって形成されたのか。1983年、京都府生まれの桑田悟史は、ビームス(BEAMS)の販売員を経て、サヴィル・ロウの老舗テーラーに勤務しながらセントラル・セント・マーチンズで服作りを学ぶ。「ガレス ピュー(Gareth Pugh)」「ジバンシィ(GIVENCHY)」、Ye(カニエ・ウェスト)のオフィスなどの現場で、約20年の経験を積み、2020年に「セッチュウ」を立ち上げた。2023年には、若手デザイナーの登竜門といわれる「LVMHプライズ」を受賞。その後、200年以上の歴史を持つサヴィル・ロウの老舗テーラー、デイヴィス&サン(Davies & Sons)とタッグを組みカプセルコレクションを発表した。なお、デイヴィス&サンが外部デザイナーと共同でコレクションを製作するのは初めてのことだった。
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華々しい経歴の中で、実直に服作りに向き合ってきたからこそ蓄積されたテクニックや知識は、折り紙という日本伝統の遊びとリンクすることで結実する。東洋と西洋、それぞれの文化とクラフトの対話を通じて拡大されたアイデア、つまりは平面を三次元化する和のアプローチと、西洋的な立体裁断で作る衣服デザインのアプローチの"折衷"は、少なさが多さとなる概念に辿り着く。何通りもの着こなしが楽しめるといった多機能性が、セッチュウのブランドアイデンティティとなっている。
2025年秋冬コレクションは正方形をデザインの出発点にしたという。縦、次に横に半分に折ると、四つの正方形が生まれ、三つの山折りと一つの谷折りによって分割されるが、桑田は、これを衣服の構造に反映。例えば、サファリジャケットやコートは丈を調整することが可能になり、シャツやブレザーは正方形のパネルに延長され、テイルコートの裾は内部に折り込むことができる。折り紙のように、畳んで収納できるデザインは、旅を愛する桑田ならではのアイデアだろう。
Image by: ©Launchmetrics Spotlight
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カラーパレットは、白黒テレビや新聞を想起させる黒、白、灰色でまとめられ、生地は密度があり手触りの良いもので、グレーと黒のタータンがシーズナルシグネチャーとして際立つ。「源氏物語」のホモエロティックな要素を取り入れ、釣り好きの桑田がタコの死骸がペニスの形に似ているというところから着想したレースは、華やかなドレスに落とし込んだ。
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また、ロンドン「サヴィル・ロウ」で最も古いテーラーショップであるデイヴィス&サンと再度協業し、開発された3アイテムも披露。モーニングスーツ、青いダブルブレストブレザー、テイルジャケットはすべて折り紙構造で作られている。
「2000年代にストレッチ素材が出てきましたが、何代にも渡って引き継ぐことができるサヴィル・ロウのスーツにはそういった素材は使用しません。なぜならストレッチ素材は耐久性がなく、長く着られないから。テクニカルな話になりますが、例えば、サヴィル・ロウで仕立てるジャストサイズのパンツの股上には拳サイズのゆとりを作りますが、これは股の内側がすり減らないようにするためです。何の目的で洋服を着るか、何を目的に服を所有するかという話になりますが、僕は、ダイヤモンドの指輪のように何代にも渡って引き継ぐことができる特別なものを作っていきたいという思いがあります。だからこそ、今僕がやっているアプローチとして、今はコストがかかるためあまり流通していない原糸が太いものを使うようにしています。商業用に売れる服よりもユニークなものを作っていきたいという思いがあるので、サヴィル・ロウの技術を用いることで長持ちする服を今後もデザインしていきたいんです」
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ショーの後、会場の2階ではセッチュウのアイデアソースなどを展示したインスタレーションを展開。デザインがどうやって生まれたのかが明瞭になる、言わば桑田の頭の中を覗くエクスクルーシブな空間となっていた。アトリエにコレクションしているという春画や、釣りのロッド、ルアー、ガンダムなど桑田の私物にはじまり、靴の木型、ボタンを外すことで3つパーツに分けられるニット、タコが登場する春画からインスパイアされたテキスタイルなどを披露。とりわけ目を引いたのは、自身の趣向を曝け出すだけでなく、コンテクストとして日本文化と西欧文化を結びつける展示方法だ。性行為を描写する西欧の書物と春画を並べ、中央にタコの触手のようなデザインのアクセサリーを展示するといった、両方の極端を捨て、ほどよいところをとるという"折衷"を体現するキュレーションになっていた。
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Video by FASHIONSNAP
桑田はショーについて、「本当に感謝という思いだけです。先代の日本人の方々の活躍のおかげで、僕は今まで生活することができています。本当に先代の方々に感謝ですし、ショーに来場いただいたジャーナリストの方に楽しんでもらえたら、これ以上に喜ばしいことはないです」と話した。
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