ショーン・ウェザースプーン
Image by: FASHIONSNAP
コラボレーションしたスニーカーが軒並み人気を集めるデザイナーのショーン・ウェザースプーン(Sean Wotherspoon)。2017年に実施された未来のエアマックス(AIR MAX)を作る「ナイキ(NIKE)」のプロジェクト「VOTE FORWARD」では、世界各国で活躍する12人のクリエイターから投票の結果、見事1位に選ばれ、翌年に彼がデザインした「エアマックス 1/97」が商品化された。同モデルの発売以来、「アディダス オリジナルス(adidas Originals)」とコラボした「スーパーアース(SUPER EARTH)」や「スーパーターフ(SUPERTURF)」など数々のヒットスニーカーを製作。デザイナーのほか、ヴィンテージストアのオーナーやヴィーガンなど様々な顔を持つことでも知られている。コロナ禍で日本への渡航から遠ざかる日々が続いた中、数年ぶりに来日したショーンに自身が貫くスタイルについて聞いた。
ショーン・ウェザースプーン
1990年生まれ。2017年に未来のエアマックスを作るプロジェクト「VOTE FORWARD」で1位に輝き、エアマックス 1/97を発売。ヴィーガンとしても知られており、アディダス オリジナルスとのコラボでは動物性成分を一切使用しないヴィーガンスニーカーを発表した。またヴィンテージストア「ROUND TWO」の共同設立者で、現在ロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴ、マイアミ、リッチモンドに店舗を構えている。
日本は居心地が良い、移住を予定
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ー何年ぶりの来日ですか?
2019年の7月以来なので、3年ぶりです。2017年に「ゲス(GUESS)」とのコラボで初めて日本に来てから、今回が6回目の来日になるのですが、久しぶりに日本の友達に会いに来ました。あとは今年中もしくは来年の初めに、家族で日本への移住を考えているので、日本の会社ともより関係を深めたいと思っています。「アトモス(atmos)」や「ア ベイシング エイプ®(A BATHING APE®)」「ポケモン(Pokémon)」とのコラボプロジェクトも控えているんです。
ーどうして日本に移住しようと?
ビジネスの関係ということももちろんあるのですが、家族全員で移住する理由は違う言語を学んだり、違う文化を見たり、子どもに色々な経験をしてもらいたいという思いがあるからです。何よりも日本の皆さんがいつも温かく迎えいれてくれるので、本当に居心地が良いんです。きっと私のデザインが日本人のセンスと重なる部分があるからではないでしょうか。移住したら、もっと日本の皆さんと触れ合って色々なことに挑戦していきたいと考えています。
ー日本のファッションシーンに対して、どのような印象を抱いていますか?
エリアによってファッションが変わるところが面白い。渋谷、原宿、下北沢、吉祥寺、高円寺、恵比寿などを訪れましたが、地域によってそれぞれスタイルが違いますからね。各地を回ることで1970年代から2000年代までのファッションを目にすることができます。私自身は1990年代と2000年代、それから今のファッションシーンを自分のスタイルに取り入れることを意識していて、例えば新品のスニーカーに、ヴィンテージのショーツや1990年代のTシャツを合わせることが多くて。東京で色々な場所に行きましたが、私のファッションは渋谷のスタイルに近いのでは、と感じています。
ー今日は「ゴローズ(goro’s)」を着けていますね。
ゴローズは、友達のジュールス・ゲイトン(Jules Gayton)が着けていて知りました。彼は「シュプリーム(Supreme)」や「ステューシー(STÜSSY)」とコラボしているのですが、彼が着けているゴローズを見て一目惚れして。ゴールドチェーンのアクセサリーより、もっとエレガントな雰囲気のアクセサリーの方が好きなので、ゴローズはとても気に入っています。アメリカだと知っている人が割と少なくて、知る人ぞ知るブランドなんですよ。
「みんなが欲しい商品を生み出す方法に答えはない」
ーいつ頃からファッションに興味を?
14歳の時にスケートショップで働き始めて、17歳の時に友達のスケートショップの店長になったんですが、その頃からファッションに興味を持ち始めました。店長になってからスケートボードだけではなく、Tシャツなどアパレルのオーダーや仕入れも担当するようになった影響が大きいです。
実は、そのあとに「バーニーズ ニューヨーク(BARNEYS NEW YORK)」や百貨店の「サックス・フィフス・アヴェニュー(Saks Fifth Avenue)」でも働きました。デニムの専門家ではなかったのですが、面接で「デニムのスペシャリスト」と話したら受かったんですよ(笑)。当時は「エド・ハーディー(Ed Hardy)」の帽子や「トゥルー・レリジョン(TRUE RELIGION)」のボトムスに、「アディダス オリジナルス(adidas Originals)」の「サンバ(SAMBA)」や「スタンスミス(STAN SMITH)」を合わせていましたね。
ーその中でもスニーカーを好きになったきっかけは?
スケートボードの影響が大きいです。スケートをしていると色々なスニーカーを目にしますし、自分自身が色んなモデルを履く機会も多いので。
ーお気に入りのスケートシューズはありますか?
アディダス オリジナルスの「サンバ」と「ガゼル(gazelle)」です。今でもこの2足でスケートをすることが多いですね。あとは、「パレス スケートボード(PALACE SKATEBOARDS)」と「アディダス スケートボーディング(adidas skateboarding)」がコラボしたルーカス・プイグ(Lucas Puig)のシグネチャーシューズもとても気に入っています。
ースニーカーをデザインする際、着想源はどこから?
自分の周りの環境からインスピレーションを得ています。人のファッションを含めて、ビルの外観などからもインスパイアされます。トレンドは意識せずに、自分がその時に気に入っているものや、気に入ったアイディアをベースにデザインしていますね。
ーショーンさんと言えば、カラフルなスニーカーが印象的です。
カラフルなデザインには「みんながハッピーに」という思いを込めています。ただ今後、ガムソールにオフホワイトの単色で仕上げたスニーカーを発表します。1990年代に登場したアディダスの「Orketro」というモデルです。お楽しみに。
ースーパーアースではアッパーに糸を垂らし、スーパーターフではギミックとしてポーチを配したりとユニークなデザインのものが多いですよね。
糸のデザインは、「ワイズ(Y's)」が手掛けた「スーパースター(SUPERSTAR)」から着想を得ました。アッパーに糸をデザインしていて、それが凄く格好良いんです。ワイズに対するリスペクトの気持ちを示したくて、スーパーアースでアッパーに糸を垂らすデザインを取り入れました。
スーパーターフのポーチでは中に、首に下げられる紐がついています。スニーカーから取り外して、コインポーチやキーホルダーといった日常使いできるアクセサリーが作れたら面白いと思い、デザインしました。
ースーパーアースは糸を切って履くなど様々な履き方が提唱されていますが、ショーンさんが考えるベストな履き方はありますか?
みんなそれぞれの好みで履いてほしいと思っています。例えば特別な日にだけ履きたいというなら、糸を垂らしておいたほうが見栄え的に一番おすすめですが、毎日履いたり、日常使いしたければ、履きやすさを考えて切ったほうがいいかもしれないですね。いずれにしても、スニーカーで、宝探しのようなワクワクする体験をして欲しいと考えてデザインするように心がけています。
スパーターフのフィギュア
ー遊び心がやはり大事?
そうですね。どのようにしたらスニーカーを買ってくれた人たちが楽しめるか、ということをずっと考えています。8月末には、スパーターフからミニカーブランドの「ホットウィール(Hot Wheels)」とのコラボモデルが発売されますが、ベースは白色だけれども日光に当たるとホットウィールの柄が出てくる仕掛けを取り入れました。日陰に入るとまたベースの白に戻る仕様で、とても面白いですよ。
ー手掛けたスニーカーはたちまち人気になりますが、ヒットスニーカーを生み出す大切なマインドは何ですか?
デザインをする時に「これ絶対売れて欲しいなあ」「これが売れたら嬉しいなあ」といった気持ちを忘れることです。コンスタントに新しいデザインを生み出していった結果、そのうちの1つがヒットするという感覚でモノづくりを行っています。そのように考えるようになったのは、ラッパーのファット・ジョー(Fat Joe)とスニーカーについて話したことがきっかけでした。彼は2000年代前半に「Lean Back」という曲でヒットしたのですが、私がデザインしていた「ナイキ(NIKE)」のエアマックスについて「こんなデザインにして、売れたらいいな」とファット・ジョーに話したら、彼は「ショーン、そうじゃないよ。ビッグヒットを生み出すためには、コンスタントに新しいものを作り続けないといけないんだ」と言ったんです。その言葉に感銘を受け、それからは新しいものをどんどん作り続けるスタイルになりました。ヒットするかどうかは結局、買う人が決めるわけで、ビッグヒットは予期せずに起こるもの。そのため、みんなが欲しい商品を生み出す方法に答えはないと考えています。
ー新しいものを生み出し続けるというのは苦労もあると思いますが。
毎日デザインを考えていますが、楽しくて苦しいと思ったことは一度もないですね。言うなればデザインすることに取り憑かれている感覚に近いというか。朝起きた瞬間から「よし、仕事をしよう!」という感じです。
憧れの存在「NIGO®」
ー影響を受けたクリエイターはいますか?
NIGO®さんにすごく憧れていて、彼がデザインしたものをよく参考にしています。1度だけ、マイアミでお会いしたことがあります。
ーNIGO®さんは幅広くデザインを手掛けていますが、ショーンさんも色々なアイテムをデザインしていきたいですか?
過去には「ベスパ(VESPA)」のバイク、最近だと「ポルシェ(Porsche)」の車をデザインしました。まだ発表されていないのですが、ポルシェとはアウトドアコレクションも製作していて。私のサステナビリティの考えを取り入れることで、ポルシェと面白いことができると確信しています。他にもスニーカーデザイン以外の新たな挑戦として、まだどこにも発表していないのですが、「ショーンズワールド」という自分の新しいショップの出店を計画しています。店頭では、私が作ってきたものや興味のあるものを揃える予定です。
ー新しいショップはどこに出店予定なんですか?
構想段階で、まだ何も決まっていないのですが、個人的には中国だと上海、日本だと渋谷に出店できたらいいなと思っています。渋谷だとパルコ(PARCO)が本当に好きなんです。今回の来日で、「ツージー(2G)」とのコラボ商品のポップアップをパルコで行いました。3日間開催したのですが、色々な方に来店いただいて、みなさんと触れ合うことができました。あとは、ミヤシタパーク(MIYASHITA PARK)も大好きです。建物から電車が見えたり、屋上もあって、下に降りればショッピングもできますし、なんといってもスケートパークがある。まさに夢のような場所ですよね。
ー今後挑戦していきたいことはありますか?
サステナブル素材をもっと導入していきたいです。動物性のレザーを使うのではなく、マッシュルームレザーだったりいわゆるプラントベースのレザーのことをもっと勉強して、開発していきたいという気持ちがあります。アディダスと協力して、環境に配慮した新しいものを作っていきたいです。
撮影場所:A.T.A.D(東京都渋谷区神宮前3-22-8)
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