近年、ファッションシーンで注目を集める「サロモン(SALOMON)」のスニーカー。その人気の背景には、あるデザイナーの存在があることを知っていますか?独自のデザイン性でファッション好きの心を掴むシューズの魅力を、生粋のサロモンマニアである「バル(bal)」デザイナーの蒲谷健太郎さんが解説!私物のレアコレクションとともに深掘りします。
目次
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サロモンの歴史をおさらい
サロモンは、1947年、フランソワ・サロモン(Francois Salomons)と息子のジョルジュ(Georges)によって、ノコギリとスキーエッジの研摩工場として、フランス南東部の湖畔町アネシーで創業。1957年に、当時は珍しかったというケーブルタイプのビンディング(スキーボードとブーツを固定する器具)である「le lift」を開発。その後、世界初の自動リリース機能を持つビンディングを開発し、1972年にはビンディングの年間生産数が100万セットを超え、世界一のビンディングメーカーとなります。1979年には初のアルパインスキーブーツを発売。その後もウィンターシーズンに独自のノルディックシステムを搭載したブーツとビンディングをはじめ、サマースポーツのカテゴリーとしてハイキングシューズやトレイルランニングシューズなどを展開。現在に至るまで、「PLAY」をコンセプトに、すべての人が広大な自然を楽しむためのアウトドアアイテムを展開しています。
サロモンがファッションシーンで注目を集めたきっかけ
ウィンタースポーツを中心としたアウトドアギアやアパレルを中心に展開していたサロモンですが、近年はタウンユース需要が急増し、一気に定番のスニーカーブランドとしての認知が広がりました。その理由とは一体何なのでしょうか? 蒲谷さん曰く、一番初めにファッションシーンでの注目が集まったきっかけは「シュプリーム(Supreme)」での展開の開始。1990年代後半にシュプリームの店頭での取り扱いがスタートしたことから、それをきっかけにブランドを知った人も多いんだとか。
蒲谷さん
シュプリームでの展開後、2000年代に入ってからは「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」の川久保怜さんが履いていたことで注目を集めました。その後、2017年にパリのセレクトショップ「ザ・ブロークン・アーム(The Broken Arm)」と別注企画をスタートしたことで、より感度の高い層からの人気に火がついた印象ですね。僕も、ブロークン・アームとの別注は毎回注目しています。
日本国内では、この1〜2年で一気にストリートシーンに根付きましたね。
蒲谷さん
スニーカーブームが落ち着いて、王道ブランドだけではなく他にも目を向けようという流れになってきたのだと思います。同じような流れで「オン(On)」や「ホカ(HOKA)」もストリートシーンでの需要が高まっています。いずれも、デザインに新鮮味があることから、ファッション感度の高い層に刺さっていますね。
ちなみに、蒲谷さんが初めて買ったサロモンのモデルは?
蒲谷さん
「スピードクロス 3(SPEEDCROSS 3)」です。インラインモデルのブラックを5〜6年前に買ったのが、初めてのサロモンでした。
コラボ先を厳選?注目を集める協業への姿勢
さまざまなブランドとのコラボレーションで人気に火がついたとも言えるサロモンですが、実はコラボレーション相手の選び方は慎重なんだとか。国内ブランドでは、「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」をはじめ、「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」や「アンドワンダー(and wander)」と継続的にタッグを組んでいます。
蒲谷さん
コラボレーションでは、ブランドイメージの向上を図れる相手をうまく選んでいる印象です。僕はブロークン ・アームの別注をきっかけにサロモンに注目するようになったので、コラボ先を厳選してデザイン性の高いモデルを輩出するサロモンの姿勢には共感できます。
■蒲谷さん私物のサロモン×ブロークン・アームのコレクション
直営店でも手に入らない?ハイエンドライン「アドバンス」の正体
サロモンは、「パフォーマンス」「スポーツスタイル」「アドバンス」の3つのラインに分けてシューズを展開しています。「パフォーマンス」は、サロモンの軸として、機能性の高いアウトドアシーン向けのモデルを中心に揃えていて、「スポーツスタイル」は、ライフスタイルシーンに向けたモデルを揃えていますが、3つ目の「アドバンス」とは一体どんなラインなのでしょうか?
蒲谷さん
「アドバンス」は、サロモンのフランス本社の管理下にあるプロジェクトです。スポーツスタイルのモデルにさらにデザイン性を加えたアイテムや、既存シリーズのハイブリットモデルなどを揃え、フランス本社が独自の基準をもとにセレクトした限定店舗で展開しています。実は、アドバンスのアイテムは直営店である渋谷のサロモンストアでも販売されていないんですよ(笑)。
国内直営店ですら手に入れることのできない「アドバンス」ですが、日本国内では「ドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)」や「グレイト(GR8)」「エリミネーター(ELIMINATOR)」「インターナショナルギャラリー ビームス(International Gallery BEAMS)」などで購入することができます。「スニーカーショップというよりも、気鋭ブランドを取り扱うセレクトショップで展開されているのが特徴ですね」(蒲谷さん)。
マニアが語るデザインの魅力
ファッションシーンでその地位を確立しつつあるサロモンですが、その魅力の一つが、大胆な配色とパターンによるデザイン。
蒲谷さん
サロモンは、ヒール寄りのサイド部分に大きくブランドロゴがあしらわれているものの、ナイキのスウッシュやアディダスの三本線のようなわかりやすいアイコンとなるマークがないので、パッと見てどこのブランドのシューズなのかわからないようなアノニマスな雰囲気が魅力です。
蒲谷さん
また、配色が独特な点も大きな特徴であり魅力です。アイコニックなグラデーションはもちろん、他のスポーツメーカで見かけるようなカレッジカラーのような色彩ではなく、中間色と中間色をぶつけていたり、色の掛け合わせ方がフランス発のブランドならではだと感じます。
押さえておきたい6品番
ここからは、さまざまなシューズを展開するサロモンの中で、知っておきたい6品番にフォーカス。定番モデルからネクストヒットの機運が高まりつつある注目モデルまで、蒲谷さんの私物とともに紹介します。
XT-6
Image by: FASHIONSNAP
まず紹介するのが、サロモンのアイコンモデル「XT-6」。蒲谷さん曰く「ナイキで例えるなら『エア マックス 95(Air Max 95)』のような代表的なモデル」で、人気の火付け役とされている川久保玲さんが愛用していたモデルでもあります。コラボレーションや別注などのベースモデルにも採用される機会が多く、ゴアテックスのモデルも人気を集めています。
Image by: FASHIONSNAP
こちらは、2023年にXT-6の発売10周年を記念し、世界500足限定で製作されたモデル(蒲谷さん私物)。XT-6のプロトタイプが真っ赤だったことから、このカラーが採用されたんだそうです。サイド部分にはナンバリングも入っているレアモデルです。
XT-4
Image by: FASHIONSNAP
続いて紹介するのが、先ほど紹介した「XT-6」の前身モデルとして知られている「XT-4」。XT-6同様、トレイルランニングシューズをベースとした、サロモンを代表するトレイルランニングシューズです。サイドにはカーボン柄が施されていて、シューレースやヒール、トゥ部分にブランドやモデル名のロゴが大胆にあしらわれているのが特徴です。
XT-6との違いは?
一見、あまり見た目に違いのないXT-6とXT-4ですが、一番の違いはサイズ感とシルエット。XT-6は履き口や横幅が細身な設計なのに対し、XT-4は、より日本人の足に合う幅広の設計になっています。シルエットも、XT-4の方がボリュームがあり、丸みのあるポテっとした印象です。
蒲谷さん
僕自身、XT-6はいつものスニーカーサイズよりもハーフサイズ上げて履いていますが、XT-4はいつものサイズのまま履くことができます。どのモデルにも言えることですが、サロモンはパリ発のブランドなので、サイズ感は注意して買うべきです。日本人の足は幅広と言われているので、必ずしもいつものサイズで日本人の足に合うかと言ったらそうではありません。トレランシューズは細身なのに対し、ハイキングブーツをベースにしたモデルは作りが大きかったりするので、すでに別のモデルを持っている場合でも、できるだけ試着をした上でサイズ選びをすることをお勧めします。
XT-SLATE
Image by: FASHIONSNAP
続いて紹介するのが、アドバンスシリーズの「XT-SLATE」。XT-SLATEは、XT-4のソールパターンをベースにしたモデルで、蒲谷さん曰く「XT-4やXT-6の系譜で生まれたスタイリッシュなシューズ」として開発されました。シューレース部分をシックなデザインにまとめていて、サイド部分のブランドロゴも小さめ。サロモンのスニーカーによく取り入れられるサイドのパターンがないのも特徴です。
ACS PRO
Image by: FASHIONSNAP
続いて紹介するのは、「ACS PRO」。こちらも、アドバンスシリーズの一足です。ACS PROは、サロモンが2000年代半ばに展開していたトレイルランニングシューズのアーカイヴを、現代風にアップデートしたモデル。「ソールをスタイリッシュなシルエットに進化させていて、いわゆる『Y2K』のトレンドにハマるデザインと言えますね」(蒲谷さん)。
蒲谷さん
これは、パリの名店として知られるジャマイカ料理店「ジャージャー(JAH JAH)」の別注モデルです。パリはサロモンのお膝元ということもあり、少ない生産数でもコントロールできることから、サロモン側もコラボレーションや別注に寛大なようで小規模の別注を行っているんですが、ジャージャーの別注もその一つ。これは、ジャージャーのオーナー ダキスが運営しているショップ「ジャージャースタジオ」で購入しました。
XA-PRO 3D
アンドワンダーとのコラボによるゴアテックスモデル
Image by: FASHIONSNAP
XA PRO 3Dは、耐久性と安定性、クッション性などの機能性を備えながら、タウンユースでの需要にも応えるデザイン性を備えたスポーツスタイルのモデル。アッパーのメッシュパターンとシュータンの「S」ロゴが特徴で、本格的なトレイルランニングはもちろん、街履きでの需要も高い人気の一足です。
SPEED CROSS 3
Image by: FASHIONSNAP
最後に紹介するのが、「スピードクロス 3(SPEED CROSS 3)」。前述した通り、蒲谷さんが初めて購入したサロモンのモデルです。XT-6などと並ぶ定番のトレイルランニングシューズで、丸みのあるフォルムに、独自のラグパターン(アウトソールの凹凸)があしらわれています。
Image by: FASHIONSNAP
こちらは、スピードクロスを元に製作されたブーツ「スノークロス(SNOWCROSS)」。
蒲谷さん
先日、パリのファッションウィークで行われたイベントでは、サロモンのスタッフはみんなこのスノークロスを履いていました。スピードクロス同様、今アツいモデルで、これからじわじわと人気が加熱していきそうな気配がします。
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