S.S.DALEY 2024年秋冬コレクション
Image by: Vanni Bassetti
スーツの起源は16世紀のイギリスで、作業着として着ていたウール素材でロング丈のフロックコートが時代の流れとともに丈が短くなったことでスーツの原型となり、現代のブリティッシュスタイルが確立するわけだが、そうした英国の伝統を見直し、解体し、現代的な文脈に沿わせることを目指しているのがロンドンを拠点とする若手ブランド「エス・エス・デイリー(S.S.DALEY)」だ。2022年に「LVMH Young Fashion Designers Prize」でグランプリを受賞して注目を集める同ブランドのデザイナー、スティーブン・ストーキー・デイリー(Steven Stokey Daley)は、制度化された英国の格式と脱衣の状態をミックスし、新鮮な自由を受け入れるという感性を2024年秋冬コレクションで探求した。
Image by: Giovanni Giannoni
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スティーブン・ストーキー・デイリーは、イギリスのリヴァプール出身。ウェストミンスター大学でファッションデザインを学び、卒業コレクションが世界的スタイリストのハリー・ランバート(Harry Lambert)の目に留まったことがきっかけに注目度が高まった。2020年に大学を卒業後、自身のブランドであるエス・エス・デイリーを設立。労働者階級で育った経験を反映し、人種やセクシュアリティ、階級などの視点を取り入れながら、英国の伝統的な衣服を現代的に再解釈したコレクションを展開している。2024年秋冬コレクションショーは第105回ピッティ・イマージネ・ウオモ(Pitti Imagine Uomo)期間中の1月11日に、伊フィレンツェのヴェッキオ宮殿で開催された。エス・エス・デイリーがロンドン以外でショーを行うのは今回が初めてとなる。
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スティーブン・ストーキー・デイリー Video by FASHIONSNAP
2024年秋冬コレクションは、デイリーにとって馴染み深いイギリスの寄宿学校がインスピレーション源。寮というオンとオフの両面が共存する共同空間の場にある、形式(アカデミック)と親密さ(脱衣)という異なる観念が重なり合っている感性を軸にしており、アカデミズムらしい黒と白のフォーマルスーツには放蕩さを表すためにシャンパンのアクセントが散りばめられ、Pコートにはベッドマットレスのようなステッチを施し、オックスフォードの燕尾服をズボンなしで着こなすなどで表現している。アーカイヴを元に、生地やディテールをアップデートして仕立てるという手法はファッションの世界では当たり前として機能しているが、エス・エス・デイリーがこのアプローチを採用するのは、「親密さ=現代性」と捉えているためだろう。
Image by: Giovanni Giannoni
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また、EM・フォースター(E. M. Forster)が1911年に発表した「The Story of a Panic」から、イギリス人旅行者仲間とのイタリア旅行のストーリーも引用。魚の絵が描かれたナイトシャツと襟がスエードの黄色いフィッシングコートの組み合わせなど、より軽く、より爽やかなファッションを提案した。インターシャによる柄の入ったニットはデイリー自身のキュートなアイデンティティが反映されており、ブランドとして初めてシューズを製作。エス・エス・デイリーのシグネチャーと言えるうさぎのモチーフは今シーズンも健在だ。
Image by: Giovanni Giannoni
Image by: Giovanni Giannoni
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ショー直後には、ハリー・スタイルズ(Harry Styles)からの投資を受けたとし、ブランドの少数株を売却したと説明。パジャマからユニフォーム、ワックス・ジャケットまで、英国のワードローブでおなじみのシンボルが、デイリー独自の解釈で再構築された同コレクションを皮切りに、英国発のメゾンに向けた新章はスタートする。
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