田尻梢ブランドジェネラルマージャー(左)と田口沙奈枝マーケティングマネージャー
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「メゾン マルジェラ(Maison Margiela)」による、“時代を超えた普遍性”をコンセプトとしたコレクション「レプリカ(REPLICA)」から着想を得て、2012年に誕生した「レプリカ」フレグランス。それぞれの“シーン”を再現した香りで記憶やムードを呼び覚ます、という独自のアプローチや、ジェンダーレスに楽しめる香りは、ブランドのファンはもちろん、フレグランス愛好家や美容好き、さらにはファッション、ビューティ感度の高い人たちも巻き込んで幅広い支持を集めている。誕生から10年、なぜ今、「レプリカ」フレグランスなのか?人気への分岐点を、メゾン マルジェラ「レプリカ」フレグランスの田尻梢ブランドジェネラルマージャーと田口沙奈枝マーケティングマネージャーに聞いた。
人気の理由:7つのキーポイント
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—各店舗で行列ができるほど大人気ですが、手応えを感じたのはいつごろでしょうか?
田口沙奈枝マーケティングマネージャー(以下、田口):2012年から展開していましたが、売上・認知度ともに伸び始めたのは2018、2019年あたりです。6、7年は掛かったと思います。追い風となったのは、SNSの普及や、日本のフレグランス市場が伸び始めたことですね。
キーポイント:販路拡大
ー市場の伸びと並行して、“仕掛け”たことがあったのでしょうか?
田口:2019年までは、メゾン マルジェラのファッションブティックのみで展開し、店の一角にフレグランスを並べ、ファッションのお買い物をするお客さまが使ってくださるケースが中心でした。市場の状況を鑑み、ビューティに関心の高いお客さまにも認知を拡げたい、というところから2020年1月に原宿駅前にオープンした「@cosme TOKKYO」での販売を開始し、5月には「@cosme」のオンラインショップ「@cosme SHOPPING」での取り扱いもスタートしました。@cosme TOKYO、@cosme SHOPPINGともに、すぐに品切れになるほど反響が大きく、一気に認知が拡がったという印象です。
キーポイント:サイズバリエーション
—なるほど、ビューティ視点で販路を拡大したのですね。その中で最も人気の高かった、けん引した商品はあったのでしょうか?
田口:今も変わりませんが、「レプリカ オードトワレ レイジーサンデー モーニング」ですね。
ー“レイジーサンデー モーニング”は本当に人気ですよね。これにもきっかけがあったのでしょうか?
田口:元々認知されている商品でしたが、当時は100mLの大きなサイズしかありませんでした。@cosme TOKYOオープンと同時に、手軽にトライアル感覚で楽しめる10mLサイズを発売したんです。
「気になっていたけれど、手が届かなかった」というお客さまがたくさんいらしたみたいで。特にオンラインでは香りが試せないぶん、ちょっと割高でも手軽な価格と容量で買いたいという方のニーズに応えることができたと思います。今は、100mL、30mL、10mLとありますが、チャネルとターゲットに合わせて展開する香りの種類やサイズを変えています。
ー確かに、100mLは「使い切れないかも」「使ってみたけど、ちょっと違ったかも」という不安があり購入まで少し時間が掛かるかもしれませんね。サイズや種類だけではなく、メゾン マルジェラ「レプリカ」フレグランスブランドとして重要視しているポイントは?
田口:メゾン マルジェラのブティックからはファッション感度の高い方に、@cosme TOKYOや@cosme SHOPPINGからは美容感度の高い方に手に取っていただく機会が増え、認知度も高まってきましたが、「ファッションからのフレグランスブランドである」という点で、コンセプトに紐づくイメージコントロールはブランドを知ってもらうためにも重要だと考えています。
キーポイント:ユニークな香りのコンサルテーションを実施するストア
—そのイメージコントロールやアプローチはどのようにしていますか?
田口:他のフレグランスブランドと違うのは、最初から香りの話をしないところ。「レプリカ」フレグランスの香りをご紹介する時は、必ずポラロイド写真から入ります。“記憶”がテーマになっていて、一つひとつの香りがシーンを再現しているのが一番の特徴です。私たちが伝えたいのは、この香りはトップノートが○○、ミドルノートが○○、香りの成分が○○、ということではなく、香りを纏うとそのシーンにタイムスリップして記憶の世界に誘われる、ということ。それがクチュール系フレグランスブランドとしての一番ユニークな点ではないでしょうか。
キーポイント:男性客の増加
—確かに香りは記憶にひも付くことが多いように思います。ただ一般的には、本当の記憶が蘇るということだと思いますが、記憶を提案しているところが面白いと思います。そういったアプローチは男性からの受けも良いのではないでしょうか?今も男性3人がショップのショーウィンドウ前で、中を伺っている感じでしたね。現在の男女比は?
田尻梢ブランドジェネラルマージャー(以下、田尻):目視ですが、半々程度だと思います。昨年の4月に表参道ヒルズに期間限定のストアをオープンし、さらに今年の2月に表参道のキャットストリートエリアにストアをオープンしてから、より一層、男性のお客さまが増えた傾向にあると思います。
キーポイント:明確なポジション発信
ー男性ファンが増えていることも含め、2020年1月の@cosme TOKYOへの導入以降、ターニングポイントになったことはあったのでしょうか?
田尻:2021年4月から2022年1月中旬まで表参道ヒルズに期間限定ストアをオープンしたのですが、その際に「ビューティからライフスタイルへ」というポジションを作ったことではないでしょうか。
ービューティブランドではないということですよね?
田尻:おしゃれが好きな人たちも、ビューティやフレグランスが好きな人たちも、男女関係なく、自分が好きな空間を作りたいという気持ちは共通だと思います。そこで、ライフスタイルを提案するブランド発信のひとつの指標として取り組んだことで、期間限定でオープンした表参道ヒルズのストアには女性だけでなく、多くの男性客も来店してくださりました。コロナ禍でリアル店舗へ足が遠のく中、多くのお客さまに並んでいただき、とてもご不便をおかけしたと思っております。ただ表参道ヒルズのストアでは、興味のある方が入りやすい店作り、セールスチャネル展開など、多くのことを学びました。
ー表参道ヒルズの期間限定ストアを閉じると、ほぼ同時の今年2月にはキャットストリート沿いメゾン マルジェラ「レプリカ」フレグランスストアをオープンしました。
田尻:目的地として来てくださるおしゃれなお客さまだけでなく、たまたま通りかかった方も立ち止まってくださることが多いベストロケーションだと思います。ブランドの世界観も表現しており、「レプリカ」フレグランスを実感いただきやすいストアだと思います。
田口:表参道ヒルズのストアでもそうでしたが、今年オープンしたキャットストリートのストアでも行列ができ、お待ちいただくことも多く、それでも来店してくださるのは、「店内でブランドの世界観を感じ、ポラロイドから始まる香りのコンサルテーションを受けたいから」、というお声をいただくことがとても多いです。オフラインならではの、さらには「レプリカ」フレグランスの世界観を体現したストアならではの体験を求める方に応えることが、このストアの存在意義だと思います。
キーポイント:計画比の約200%以上
—売り上げの推移はいかがですか?
田尻:具体的な売上金額は公表していませんが、2021年に期間限定でオープンした表参道ヒルズの店舗では計画比約200%以上となり、ブランド全体でも計画を越えるスピードで伸長しました。さらに、キャットストリート沿いに今年オープンしたストアでも引き続きご好評いただいているのですが、生産や物流が追いつかないこともあり、ご迷惑をかけているお客さまも多く大変申し訳なく思っています。
—物流の問題はどこのブランドも大変そうです。それでも多くのお客さまにお届けしたいといった思いからか、店舗も続々とオープンしていますね。
田尻:2月に伊勢丹新宿店メンズ館とエストネーション六本木ヒルズ店、4月に伊勢丹新宿店本館と、都心にスペースをいただく一方で、名古屋や福岡ではポップアップストアをオープンし、香りを直接香って楽しんでいただく機会を設けました。
ー都心と地方ではお客さまの傾向に違いはあるのでしょうか?
田尻:ほとんど変わりませんが、名古屋はオープンと同時に行列ができ、その半分くらいは20代と思われるおしゃれな男性で、それには驚きました。福岡は九州全土から来店してくださり、フェスティバル感覚で楽しんで下さっていたのは嬉しかったですね。
—今後の店舗戦略はどのように考えていらっしゃいますか?
田尻:ホリデーシーズンに向けて、ポップアップストアを検討していますが、直近では6月22日に阪急メンズ東京での取り扱いが始まり、6月21日には「ZOZOCOSME」に出店し、新しいプラットフォームに挑戦しています。「ZOZOTOWN」は20代のユーザーが多く、ブランドにマッチしていると思います。
—若年層だけではありませんが、今の時代、SNSやインフルエンサー施策も行う必要があると思いますが、どういったことを行っていますか?
田口:キャットストリートのストアのオープンの時は多くのインフルエンサーの方に来店いただき、また新作が発売になった時はご案内もしていますが、以前から「レプリカ」フレグランスを愛用してくださっている方が多く、こちらから言わずとも、お友達同士で情報を交換したり発信したりしてくださっています。そこに添えられる言葉が「レプリカ」フレグランスへの愛をリアルに語ってくださっていて、大変ありがたく嬉しく思います。
田口:こちらからの発信としてはこの度、成田凌さんに日本初の「レプリカ」フレグランスのアンバサダーに就任していただきました。彼ももともとブランドのファンで、以前から「レプリカ」フレグランスも愛用してくださっていました。そういった方が多いですね。
キーポイント:マス化はしない
—これだけの人気になるとマスに広がっていくことがあります。ブランドとしてマス化させるという計画はありますか?
田尻:多くの方々に試していただきたい、という気持ちはありますが、マス化する予定はありません。「レプリカ」フレグランスの良さは「みんなと一緒じゃないからいい」ということもあるだろし、「誰かがつけているから自分もつける」のではなく「自分が好きだからつける」ことがすごく大切だと思っています。だからそれはキープしていきたいです。メゾン マルジェラ「レプリカ」フレグランスの世界観を好きな人は「都会的で、シャープで、モダンで、こだわりがある」、それが理想かと思っています。
—コロナ禍を経て、さらに日本でもフレグランス市場が盛り上がっていますね。
田尻:素晴らしくいいことですね。フレグランス市場が好調なのは、私たちの生活自体を豊かにしてくれることに間違いはないと思います。フレグランス市場全体をさらに盛り上げたいですね。
田口:愛用するフレグランスは1本だけ、というわけではないし、シーンやムードに合わせていろんな香りを持っていていいですよね。また、香りを幅広い解釈で楽しんでいただけるよう、2021年10月に発売したキャンドル、12月に発売したボディケア製品なども含め、“ホームセンティング”という分野でさらに多くのお客さまに届けていくのも私たちのミッションのひとつ。ただ、いい香りというだけに止まらない何かを提供できていると思っていますし、これからもそれを目指していきたいと思います。
田尻:そうですね、これからも「ビューティからライフスタイルへ」。この軸はブラさずに発信を強め、もちろん売上も拡大していきたいと思います。
2021年10月にキャンドルを発売
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田尻さん、田口さんの今日の香りは?
(文:ライター・川原好恵、聞き手:福崎明子、平原麻菜実)
ライター・エディター
文化服装学院卒業後、流通業界で販売促進、広報、店舗開発を約10年経験した後、フリーランスとして独立。下着通販カタログの商品企画などを経て、現在はランジェリーやビューティを中心に、雑誌、新聞、ファッションウェブサイトなどで執筆・編集を行う。
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