ミウッチャ・プラダ(Miuccia Prada)とラフ・シモンズ(Raf Simons)が手を組んでから、まもなく5年。2人の共同クリエイティブディレクターが放つ「プラダ(PRADA)」2025年秋冬メンズコレクションは、参加ブランドが少なく落ち着いた印象のミラノメンズファッションウィークに、新奇な刺激を与えるショーとなった。テーマは「UNBROKEN INSTINCTS(=不屈の本能)」。
本能の表現。根本的な創造性のツールである、人間の本性や基本的本能を模索しています。それは、学ぶことなく自然に身に付いたリアクション、そして自動的な応答であり、原始的な衝動でもあるでしょう。- コレクションノートより
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ミウッチャ・プラダとラフ・シモンズによる「本能の表現」とは。今シーズンは最も自由に、制限なく2人の異なるクリエイションが混在するシーズンと言えるかもしれない。「本能的なものの中に、新しい洗練や、飾らないエレガンスを発見することができる」とし、純粋で無秩序、美の概念をも揺るがすアプローチは、ミウッチャが1996年春夏コレクションで発表した「アグリーシック(醜い洗練)」のコンセプトにも通ずる。ここにラフの大胆なアイデアが加わることで、奇異なシルエットと野趣あふれるスタイルが打ち出された。
ミニマルなフォルムとシアリング
注目のファーストルックは、削ぎ落としたミニマルなユニフォーム。半袖ニットのタイトなフォルムは、先シーズンから続く極端に小さいサイズの提案で、肌に吸い付き第二の皮膚のよう。そこに、ボディピアスのようなスタッズとチャームが縫い付けられている。ボトムは細身のテーパードパンツで、つま先が汚れた花柄のブーツの形が浮き出るほど裾が絞られていた。まるで古着屋で見つけた服を無造作に着ているかのように、どこか親密な懐かしさを感じさせる。
今シーズンの特徴のひとつは、多様なシアリング使い。素肌にまとったコートの襟やベストに施された、野生的なカットのリアルなシアリングが目を引く。また、シアリングをジャケットやシャツのインナーに用いたスタイルが新鮮だ。なお、プラダは2019年からファーフリーを打ち出しているが、食肉生産の副産物と考えられるシープスキンやカーフスキンなどのレザー製品は引き続き使用している。
偶発的なコントラスト
シルエットの提案はミウッチャもラフも得意とするところで、意外性のあるフォルムや素材は近年のプラダのクリエイションの特徴でもある。今シーズンは偶発的なコントラストを探求。パジャマ風のストライプパンツに仕立ての良いテーラードコートやビッグシルエットのデストロイニットを合わせたり、ブラックのスモーキングスーツにデニムコートを羽織ったりと、ユニークな組み合わせが散りばめられた。パジャマ風のセットアップをレザーで仕立てるなど、見る者を惑わせるトロンプルイユの仕掛けも。
コントラストは、ショーの空間デザインにも反映されていた。会場は例年と同じくレム・コールハースが設計した複合施設「フォンダツィオーネ・プラダ(プラダ財団)」だが、今回はその内部に建造物を作り上げ、美しい絨毯とインダストリアルな金属製のパイプが異空間を形成。そこに集う人々の影も演出となり、現実を惑わせるようなパラレルワールドを作り上げていた。
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