(左から)DIOR、CHANEL、LOEWE、HERMÈS、LOUIS VUITTON
コロナ禍のファッションウィークとなった2020年9月末〜10月頭のパリコレクション。各ブランドが様々な形式で2021年春夏コレクションを発表した。パリを代表するトップメゾンは、それぞれ趣向を凝らしてリアルとデジタルを融合。ロックダウンなど例年とは異なる状況下での制作を経て、どのようなコレクションを見せたのか。今季のパリコレに参加した、ディオール、ロエベ、エルメス、シャネル、ルイ・ヴィトンの新作発表に注目する。
DAY2: ディオール
ADVERTISING
7月のクチュールとメンズは映像のみ、クルーズコレクションは無観客ショーの映像配信で発表した「ディオール(DIOR)」。続くウィメンズの2021年春夏コレクションは、パリコレ2日目の9月29日に限られた観客の前でランウェイショーを開催し、ライブ配信を行った。ショーの前には、コレクションのキーインスピレーションとなったルチア・マルクッチのアーカイヴを辿るショートフィルムを公開している。
アーティスティック ディレクター マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)のコレクション制作に対する考えは、創設者のクリスチャン・ディオールが自叙伝に記したように、社会の変化を反映し最近の出来事への反応が必要であるということ。生活様式の急激な変化と共に、身体的、精神的にも変化し、従来のファッションの概念は疑問視されている。そういった現状を捉え、メゾンのヘリテージに敬意を表しながら、シルエットやスタイルに変化をもたらしたという。
マリア・グラツィアは視覚的な詩の美しさを取り入れるために、ヴァージニア・ウルフやスーザン・ソンタグなど女性作家たちの装いから着想。代表的な「バー」ジャケットは、ディオールが1957年秋冬で日本のためにデザインしたシルエットを再解釈し、羽織のようにゆったりとしたデザインに。心地よく身体を包み込むようなソフトなファブリックが目立ち、インドネシアのバリ島に起源を持つイカット織りや、ビーズのエンブロイダリーなど手仕事の温かみをまとった。
Image by DIOR
ショー会場を飾るステンドグラスのようなライトボックスは、ルチア・マルクッチによるコラージュ作品。ルチア・ロンチェッティによる合唱曲「Sangu di rosa」を歌う12人の歌手が荘厳なムードを演出した。
DAY5: ロエベ
前回の「Show in a box」に続き、「ロエベ(LOEWE)」のジョナサン・アンダーソンがM/M(Paris)と共に提案する新たなコレクション発表の形は「Show on the wall」。大きな箱に収められた等身大ポスターや壁紙などのキットでペーパーショーを体験し、クリエイションを自由に、より身近に感じるという試みだ。アンダーソンの考えは、「今以上に、新しいアイディアやチャレンジを試みる時間があるでしょうか?可能性は無限大です」と記されたメッセージカードにも現れている。
LOEWEから届いた「Show on the wall」 Image by FASHIONSNAP.COM
また、コレクション発表に合わせて等身大のヴィジュアルを主要店舗のウィンドウに掲出し、街中でも新作ルックを披露した。
2021年春夏コレクションのキーワードはファッションの極限化。演劇性と彫刻性を拡大することで表現したという。膨らんだボリューム、突き出たフラップ、オーバーサイズのヒップ、ダンシング・ノットといった、ダイナミックなシルエットが特徴。ファッションで遊ぶ喜びを打ち出している。
Image by LOEWE
パリコレの公式スケジュールでは、アンダーソンがコレクションについて解説する映像を公開した。
DAY6: エルメス
パリコレ6日目のコレクション発表に先駆けて、「エルメス(HERMÈS)」からスクラップブックが届けられた。アーティスティック・ディレクターを務めるナデージュ・ヴァンヘ=シビュルスキー(Nadège Vanhée-Cybulski)のインスピレーションをまとめた一冊。半年かけて、親しい12人のアーティストらと共に制作したという。自粛生活を余儀なくされる中、ナデージュが思い描いたのは、自由と明るい未来に対する人々の願いや、女性として生きることをヴィジュアルで表現すること。パリで開催したショーでは、12人のアーティストのひとりであるクラウディア・ヴィーザーの作品が会場を演出。ショーの模様はライブで配信した。
Image by HERMÈS
コレクションで注目したいのは、セカンドスキンのようにシルエットをなぞる滑らかなレザーや、ナチュラルで軽やかなテキスタイル。強さと儚さ、センシュアリティを新解釈した。外の世界との新たな繋がりとして、シンプルでありながら機能性を備え、身体を優しく守り自由をもたらす衣服を提案している。
DAY9: シャネル
パリコレの最終日、ハリウッドサインをイメージさせる巨大なロゴ看板を背景にランウェイショーを開催した「シャネル(CHANEL)」。グラン・パレには限られた観客を招待し、ライブ配信を行った。
アーティスティックディレクターのヴィルジニー・ヴィアール(Virginie Viard)は、2021年春夏コレクションでシャネルのミューズにオマージュを捧げたという。レッドカーペットでフォトコールに臨む女優たちの姿を思い浮かべ、喜びに溢れてカラフル、活気に満ちたコレクションを探究した。
Image by CHANEL
ファーストルックはドロップショルダーのツイードスーツ。小花プリントのドレスはフェミニンなフリルやボウが飾る。カプリパンツやバミューダパンツのセットアップ、ワンショルダーのミニドレスといった軽快なデイリーウェアが多く、中盤はレッドやペールピンク、ネオンライトのようなロゴプリントなど明るい色彩のミックスを提案。後半はブラック&ホワイトに一転し、ロングジレのパンツスーツやレースのセットアップ、豊かなボリュームのプリントシフォンやフェザーといった、マットな素肌をエレガントに魅せるスタイルが並んだ。
DAY9: ルイ・ヴィトン
「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」のコレクション会場となったのは、LVMHが所有する、百貨店、レストラン、ホテル等を含む大型商業施設「ラ・サマリテーヌ」。一般オープンに先駆けて、ランウェイショーとライブ配信を行った。
メゾン独自のリアルとデジタルの融合として、会場の壁紙や床をグリーンバックに変え、ストリーミング映像にクロマキー合成で1987年公開の映画「ベルリン・天使の詩(Der Himmel über Berlin)」の映像を重ねた。モデルがフィルムに入り込んだような特殊な映像は、画面を通して観覧する配信ならではの演出だ。また、来場できないプレスなど一部の観客向けにヴァーチャルシートを用意し、360度カメラを操作して観覧できるエクスクルーシブなストリーミング配信も行った。
Women’s Spring-Summer 2021 Fashion Show © Louis Vuitton – All rights reserved
アーティスティック・ディレクターの二コラ・ジェスキエール(Nicholas Ghesquiere)による2021年春夏コレクションは、ジェンダーの区別を消し去るなど、未だスタイルが確立していない領域に足を踏み入れることを試みたという。ファーストルックは、まさに性別を感じさせないワークパンツのカジュアルなスタイルで、トップスにグラフィティ調で書かれた「Vote」のメッセージプリントが視線を集めた。続くスタイルもジェンダーフリーがベースとなり、後半は構築的なフォルムに多彩なプリントをパッチワークの手法でコラージュした。
【ファッションウィーク情報】ニュースやコレクションレポートを更新中
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【注目コレクション】の過去記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境