Image by: FASHIONSNAP
フェスにキャンプ、釣り、登山──アウトドアアクティビティが盛んになる夏を目前にチェックしたい防水スニーカー。今回は、雨の日を中心に、タウンユースに適した最強の防水スニーカーを、アウトドアファッションのプロ・スタイリストの平健一さんが厳選。平さんが愛用するスニーカー3足の魅力を深掘りします。防水スニーカーを買うときにチェックしたいポイントや、「ゴアテックス(GORE-TEX)」が不動の人気を誇る理由も徹底解説。
目次
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防水スニーカーに必要な要素は?
「防水」という観点からスニーカーを選ぶときにチェックしたいのが撥水性・防水性・透湿性の3点。
- 撥水性・・・水を弾く性質
- 防水性・・・水の侵入を防ぐ性質
- 透湿性・・・蒸気状態の水分を生地の外側へ逃す性質
実は最も重要とも言えるのが、透湿性。防水生地や撥水生地は、雨などの外からの水だけでなく、汗などの生地の内側の水分も逃さないため、蒸れが生じやすくなってしまいます。防水性と透湿性を組み合わせることで、水の侵入を防ぎながら水蒸気を外へ排出し、生地内の蒸れを防ぐことができるので、活発な動きが予想されるアウトドアでは、透湿性が重要なポイントとなります。
また、ソールの滑りにくさ(防滑性)も大切な要素の一つです。特にトレイルランニングなど、不安定な道でのアクティビティでは、防滑性は必要不可欠。スポーツブランドやアウトドアブランドが販売しているスニーカーだからといって必ずしも防滑性に優れているとは限らないので、ランニングシューズのような足の形に合わせたソールを選ぶなど、実際に履き心地を確かめてから購入するのがおすすめです。
平さん
ソールにはブランドの自社素材が使用されていることも多いですが、特にヴィブラム(Vibram)社のソールは、革靴の裏張りにも使われているため、防滑性に優れていておすすめです。今回、紹介するスニーカーにもヴィブラムのソールが使用されています。
長靴ではなく防水スニーカーを選ぶメリット
雨の日に履くシューズといえば、長靴が一番に思い浮かぶという人も多いのではないでしょうか?「撥水性だけを考えれば、長靴が最適なシューズであることは間違いありません」と平さん。しかし、アウトドアアクティビティをすることを考えたら、いかに濡れないか、という点だけではなく、蒸れにくさや歩きやすさも重要なポイントになります。特にラバー素材で作られている長靴には、アウトドアシーンで重要視される透湿性が不十分であることがほとんど。快適なアクティビティを楽しむためには、高機能なスニーカーの着用がおすすめです。
平さん
機能性だけでなく、デザイン性も楽しめるのがスニーカーの利点。「ナイキ(NIKE)」の「エア フォース 1(Air Force 1)」や「コンバース(Converse)」の「オールスター(ALL STAR)」など、人気ブランドの定番スニーカーにもゴアテックス素材のモデルが出ているので、「アウトドアシーンでもおしゃれをしたい」という人には、スニーカーがおすすめです。
防水素材は「ゴアテックス」一強?
「ゴアテックス(GORE-TEX)」は、アメリカのゴア(GORE)社が展開する素材。防水素材として名高く、「アウトドアアイテムといえばゴアテックス」というイメージを持っている人も多いと思いますが、やはり防水スニーカーを買うとなったら、ゴアテックスを使用したものを選ぶべきなのでしょうか?
「防水素材として名高いだけあって、ゴアテックスの性能は間違いありません。しかし、ゴアテックスの他にも優れた防水素材はあります。例えば、イギリスのBHA社が開発した『イーベント(eVent)』は、ゴアテックスと同じくらい性能が良く、『コロンビア(Columbia)』の『オムニテック(OMNI-TECH)』など、アウトドアブランドが独自に開発した自社素材にも優れたものは多いです。今回紹介するスニーカーは、いずれもゴアテックスを使用していますが、防水素材なら必ずゴアテックスでなければいけない、というわけではありません」(平さん)。それではなぜ、ゴアテックスはここまで不動の人気を誇っているのでしょうか?
ゴアテックスのロゴ
平さん
ゴアテックスの最大の魅力は、「防水といえばゴアテックス」という、他の追随を許さないブランド力。多くのブランドがゴアテックスを使いたがるのには理由があって、それは、ゴア社がゴアテックスを使用できるブランドを限定しているから。「ゴアテックスの名前を使うのにふさわしいブランドなのか」というゴア社独自の基準をクリアして承諾を得たブランドだけが、ゴアテックスを使うことができます。だからこそ、デザインにゴアテックスのロゴを入れて、ゴア社に認められたことをアピールするブランドが多いんです。
最高の防水スニーカー①ニューバランス「M2002R ゴアテックス」
平さんがおすすめする最強の防水スニーカー1足目は、「ニューバランス(New Balance)」の「M2002R ゴアテックス」。「Made in USA」のフラッグシップモデルとして2010年に登場した「MR2002」から着想を得たデザインに、衝撃吸収性や反発弾性に優れた独自開発のソール「N-ERGY」と「ABZORB」を搭載したライフスタイルモデルです。ソールは厚みがあって歩きやすく、日常使いから都市型フェス、キャンプまで万能に使えるので、平さん曰く「特定の目的のためというよりは、一足持っておくと良いモデル」。
おすすめポイント
平さん
2002Rの最大の魅力は、デザイン性。カラーバリエーションが豊富で、アッパーをあえて破けたデザインにしたモデルや、ポーチを付属したモデルなどもあり、遊び心のあるデザインが特徴です。見た目だけでなく、歩きやすくて日常使いしやすいので、僕はゴアテックスと通常モデルを合わせて10足以上持っています。また、価格が税込2万4200円(ゴアテックスモデル)と、ニューバランスの中でも比較的安価なのも推しポイントです。
こちらは、今年1月に中国の旧正月を記念して発売された2002R。「スニーカーはコレクションせずに、買ったらすぐにガシガシ履いてしまうので、履き始めてから半年ほどで、ここまで使用感が出ています。それだけ気に入ったという証拠です(笑)」
M2002R ゴアテックス
こちらは今年6月に登場したカラー「タバコ」。ヒール部分には、ゴアテックスのブランドロゴが。「ヒール部分にゴアテックスのロゴが入っているシューズはこれまで見たことがないですが、遊び心のあるデザインで気に入っています」
どんなシチュエーションで使える?
平さん
基本的には、タウンユース一択ですね。ゴアテックスを使用した定番モデルということで、普段使いにもってこいのデザインです。「アウトドア向けの防水スニーカーが欲しいけどギア感が出てしまうのは嫌」という人におすすめで、どんなファッションにも合わせやすいのが最大の魅力だと思います。
最強の防水スニーカー②メレル「モアブ スピード ジップ ゴアテックス 1TRL」
次に紹介してもらうのが、アウトドアブランド「メレル(MERRELL)」のハイキングシューズ「モアブ スピード ジップ ゴアテックス(MOAB SPEED ZIP GORE-TEX)」。2020年にスタートしたメレルのグローバルプレミアムコレクション「1TRL」のスペシャルエディションとしてリリースされたモデルです。
平さんは、2021年に発売された、アートプロジェクト「エーフォーラブス(A.FOUR LABS)」とのコラボモデルを愛用しているそう。「アニメ『ドラゴンボール』に出てきそうな、近未来的なデザインが気に入っています。旧モデルと最新モデルを比較すると、モアブのアッパーデザインはそのままに、シルエットが大きく変わっていることがわかります。毎年、デザインを変えながらリリースしているので、気に入ったモデルがあればその時に買うのがおすすめです。」(平さん)
今、アウトドア好きをはじめ、注目を集めているメレル。渋谷PARCOには、こちらのモアブを含む1TRLのアイテムだけを集積したショップもあります。
平さん
15年ほど前から、フジロックなどのフェスではメレルを履いている人をよく見かけました。アウトドア好きには支持され続けているブランドですが、2019年のリブランディングを機に、ファッション好きの方まで人気が広がりました。アメリカ発のブランドですが、1TRLはヨーロッパのチームがデザインを監修しているラインで、機能性とデザイン性を兼ね備えた魅力があります。
おすすめポイント
平さん
アッパーのフロントがジッパーになっているので、休憩するときに、ジッパーをおろして通気性を上げる事ができる点が画期的ですね。アウトドアシーンでは、素材が持つ透湿性だけでは蒸れを完全に防止するのが難しいので、デザインの工夫によって快適な履き心地を叶えています。
どんなシチュエーションで使える?
平さん
ハイキングシューズとトレイルランニングシューズの要素を取り入れたモデルなので、多様なシーンで着用することができます。本格的な登山などにはおすすめできませんが、軽めのアウトドアアクティビティであれば対応可能。特に、今回紹介している最新モデルは、よりシンプルでスタイリッシュなデザインになっているので、タウンユースとしても使いやすいのが魅力です。
最強の防水スニーカー③アシックス「GEL-SONOMA 15-50 GTX」
最後に紹介するのは、「アシックス(ASICS)」のトレイルランニングシューズ「ゲルソノマ フィフティーンフィフティー(GEL-SONOMA 15-50 GTX)」。トレイルランニングシューズのソールとクロスカントリーシューズのアッパーを融合したモデルとして、街中からトレッキングまでさまざまな場面で活躍するライフスタイルシューズです。
ゲルソノマ フィフティーンフィフティーには、平さんが開発に携わったモデルも。「アトモス(atmos)」とアウトドアブランド「グリップスワニー(GRIPSWANY)」とのトリプルコラボによるモデルで、全体にグリップスワニーのアイコニックな「スワニーイエロー」を配色し、アッパーにはゴアテックスを使用しています。
グリップスワニーは、1848年のアメリカで、ゴールドラッシュの採掘者に向けたグローブブランドとしてスタート。ブランドの歴史は深く、アウトドア界のパイオニア的存在なんだとか。
おすすめポイント
平さん
ベースとなっている「ゲルソノマ フィフティーンフィフティー」は、トレイルランニングシューズとクロストレーニングシューズのスタイルを合体させたモデルで、優れた耐久性がポイント。最近は、アシックスや「サロモンスポーツスタイル(Salomon Sportstyle)」の人気モデルが火付け役となり、トレランシューズがトレンドになっていることから、タウンユースでも使いやすくなっていますね。
どんなシチュエーションで使える?
平さん
トレイルランニング向けのモデルであることから、タウンユースからアウトドアシーン、ランニングなど、さまざまな用途に合わせて着用することができます。自分が開発に携わったということもあり、検証のつもりで色々な用途で履いていますが、街中でのランニングにも使いやすく、足元の悪い道でも安定感のある履き心地を実感しています。
最後に
平さん
今回、紹介したスニーカーは、タウンユースで使えるモデルが中心となっています。登山などの本格的なアクティビティをする場合には、通常のスニーカーでは、水たまりに入った時に水やゴミが侵入しやすく、長時間履いているうちに履き心地が悪くなってしまうので、ハイカットのものを選ぶなど、工夫が必要です。また、より快適なアクティビティを楽しむためにおすすめなのが、目的ごとに靴を選ぶのではなく、細かいタイミングに合わせて複数の靴を用意すること。長時間の歩行や走行に疲れたらリカバリーサンダルに履き替えるなど、各シチュエーションに合わせて靴を選ぶのがおすすめです。
【連載】「マニアですがなにか」記事一覧
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