お客様へ直接販売する、直営店ビジネスを加速
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―2021年12月期第3四半期では、売上が前年同期比で19.5%増となっていますが、主要地域別では日本だけマイナスとなっています。
緊急事態宣言に伴う店舗クローズやインバウンド売上減の影響によるものですが、悲観的には見ていません。中国は好調ですし、東南アジアでは売り上げが世界一になった店舗もあったりと、自国で購入して頂けるようになってきているので、むしろ良い傾向だと捉えています。入店客数が減っている店舗もありますが、そこはECが補っていますね。
―EC化率はどのくらいですか?
開示はできないのですが、アシックスグループの中では高めです。2021年末にサイトを作り直すなどデジタル分野には力を入れていて、2022年も様々なことに投資していこうと考えています。
―売上の主要地域別ではヨーロッパが前年同期比3.2%増と、他に比べて増加幅が少なかった印象です。
卸売から直営店販売に切り替えている最中ですから、まだ多店舗展開ができているわけではないんです。まずは直営店販売にシフトしてブランドイメージを高めてから、売り上げを伸ばす施策に着手していく予定です。これも準備の一つですね。
―アパレルとシューズの売上構成比は?
約7割がシューズです。アパレルも伸びてきていますが、アパレルが伸びた分、シューズも売り上げが伸びる傾向があるので比率はあまり変わらないと思っています。
2022年春夏コレクション
Image by: オニツカタイガー
―経営指標で重視しているのは営業利益ですか?
会社全体では営業利益ですが、入店者数も同様に重要視していますね。店舗では「日本で一番のサービス」をキーワードに、ラグジュアリーブランドのような接客を意識しています。
―若い人たちの中には接客されることを嫌がる人も多いのでは?
当たり前ですがお客様によって様々です。そこは店舗スタッフの見る目が大事になりますね。例えばジュエリーショップで指輪ははめると購買率が上がるのと一緒で、着用して頂けるようグッドタイミングで商品をお出しするなど、臨機応変な接客を追求しています。
先を見てカルチャーを作るブランドへ
―庄田さんがオニツカタイガーの事業に関わって10年が経ちました。
オニツカタイガーというブランドを確立できたと思っています。それまではアシックスグループの中の一つというような感じでしたが、今ではオニツカタイガーは感度が高いファッションブランドと認識され、 アシックスブランドとは差別化されたブランディングができています。ブランディングの観点で言えば、お客様にモノづくりの価値を実感して頂くために徹底してセールも行っていません。物を売って価値を上げるという考え方から、ブランドをお客様に楽しんで頂くという方向にシフトしたことを、少しずつではありますが直営店などを通じて表現できるようになったと思っています。
―ブランドの象徴である4本のオニツカタイガーストライプがないデザインも増えていますね。
私が10年前にオニツカタイガーに加入した時はオニツカタイガーストライプが入ったデザインを支持するお客様がほとんどでしたが、今はストライプが入っていない商品しか知らないお客様もたくさんいます。今売り切れ状態になるほど人気を集めている「DELECITY」はストライプが入っていないデザインですし。ストライプがなくても売れるブランドになったと実感しています。
―課題に感じていることはありますか?
課題であり、既にチャレンジしているという部分では先ほど話したECのプラットフォームをグローバル化していくことです。各国で独自のプラットフォームを構築しながらも全てのデータを一括管理していくような仕組みを目指しています。お客様の動向把握はもちろん、ECだけではない新しいサービスの提供も今後はしていきたいですね。
―2022年の経営方針としては「ウィズコロナ」「アフターコロナ」どちらの想定ですか?
“ウィズウイルス”かな、と思います。また感染者が増えて見通しがつかない状況ですが、そんな中でも常に光り続け、楽しみを提供できるブランドでありたいです。
先日、鬼塚喜八郎さんが「志は長寿なり」と書いた色紙を見ても思いましたが、会社もブランドも人も、ちゃんとした志があれば必ず続いていく。我々は先代の志を引き継いで、今後もお客様の心と生活を豊かにすることに注力していきたいと思います。
―まだコロナの影響は続きそうですが、ファッション業界は今後どうなっていくと思いますか?
カルチャーがないブランドは生き残っていけなくなるんじゃないかと思います。そのため、先を見据えた行動をしていく必要があるでしょう。目指すべきブランド像を明確にして、今できる仕込みを進めていくことが大切で、我々も実践しているところですね。
―オニツカタイガーの目指すブランド像とは具体的に?
凡庸な表現になりますが、「心と生活を豊かにする」ブランドです。ものだけではなく、イベントなど色々なことを通して感情的に訴え、歩きやすさなど我々が持つテクノロジーで生活を豊かにする。情緒的価値と機能的価値をうまく合わせて、ファッションで表現していくことがオニツカタイガーだと考えています。
あとあまり知られていないかもしれませんが、商品の機能面は毎年のようにアップデートしているんですよ。例えばスニーカーのソールを滑りにくくするために改善したり、アジャイルで開発しながら変えていくというスキームを採用しています。また、どんな個性的なデザインでもコンフォートでないものは作りません。そうしたこだわりの積み重ねが、「心と生活を豊かにする」ブランドを体現する上で必要だと考えています。
―トレンドは意識していない?
あまり意識していませんね。結果的にスニーカーヘッズのお客様にご購入いただくこともありますが、トレンドの動向を見て、物を作るということはほとんどありません。「ディスカバーディファレント(discover different)」というのが我々のひとつのメッセージでして、つまりそれはどう他のものと違うかを提案できるかということです。違う物じゃないとお客様に喜んでもらえませんから。
―スニーカーヘッズを中心にリセール市場が加熱していますが、そういった状況についてはどう考えていますか?
車もそうですが、リセール市場が活発化するということはカテゴリーの価値が上がっているということ。しかしスニーカーにおいては、少し加熱しすぎかなと個人的には思います。
―最後に、激動の時代を乗り越える上で庄田さんが求める人材とは?
お客様が今欲しい物ではなくて、今後どんなものを欲しいか、どんなものに興味を持つだろうかということを想像できる未来的戦略思考がある人を求めています。「成り代わりの術」と言っているんですが、自分が40代の女性だったらどう思うかなど常に色んな人の立場で時代や商品について考られるかが鍵になってくるはずです。
また、社内会議では反対される提案にこそ価値があり、未来を作るとも考えています。「できない」ということが私の好物(笑)。「できません」ということは他の会社もできないことなので、できるように変えていく。これは鬼塚喜八郎さんの精神でもありますので。
(聞き手:林慎哉、伊藤真帆)
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