新しい生活様式はもはや日常へと移行し、それに伴い企業の舵取りも大きく変化している。FASHIONSNAPは経営展望を聞く「トップに聞く 2022」を今年も敢行。第5回はオニツカタイガーカンパニー長の庄田良二氏。コロナによって変わった環境でスタートを切るための「準備の年」となったという2021年を経て、寅年の2022年はどのような道を進むのか。これからの展望や活動内容とは?
■庄田良二
オニツカタイガーカンパニー長
兵庫県生まれ。外資系ラグジュアリーブランドを経て、2011年にアシックスに入社し、オニツカタイガー事業の責任者に就任。
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デメリットをメリットにする、準備の年だった2021年
―2021年はどんな年でしたか?
「準備の年」でしたね。コロナの影響でビジネスの環境ががらりと変わりましたが、状況が良くなるのを我慢して待つのではなく、2022年に新たなスタートを切るための仕込みをしていました。
―主に取り組んだ内容は?
世界の主要都市に旗艦店を出店しました。ミラノ、ロンドン、アメリカはニューヨークとロサンゼルス、そして北京です。これまではショップインショップ形式が多かったのですが、認知度向上などを目的に2021年は旗艦店出店に注力しました。出店場所に関しては、主要都市の中の一番良い場所に出すというのが我々の戦略です。
―コロナ禍での積極出店はリスクもあると思いますが。
コロナが流行り始める前から計画していたことでしたが、このタイミングだからこそ「デメリットをメリットにする」という気持ちで進めてきました。ロンドンでは世界屈指のショッピングストリートであるリージェントとオックスフォードの交差点付近に世界最大の旗艦店を出店しましたし、ミラノはファッション地域のコルソコモに、ロサンゼルスはビバリーヒルズにあるロデオドライブにオープンしたりと、いずれもラグジュアリーブランドが並ぶエリアで物件にも恵まれましたね。
―コロナで物流にダメージを受けている企業も多いですが、影響はありましたか?
アジアの一部の国で納品に遅れがありましたが、定番の売れ筋商品は欠品が出ないよう潤沢に在庫を確保していますので、大きな影響はなかったです。
―2019年に立ち上げたドレスシューズライン「ジ・オニツカ(THE ONITSUKA)」の進捗は?
お客様からの反応もすごく良く好調です。ドレスシューズとスニーカーが融合したハイブリッドなデザインが特徴ですので、いわゆる「スニーカーに飽きた」「モードっぽい靴を履きたい」というお客様のニーズに応えられているのではないかなと。PR活動がもっとできるようになれば、業績は今以上に伸びるのではないかと考えています。
―他のラインと比較してジ・オニツカは購入層に違いはありますか?
あまりないですね。我々には4つのラインがあるんですが、それぞれがすべての年代とジェンダーをカバーできていて、多種多様性のあるラインナップになっています。ジ・オニツカに関しては30〜40代がボリュームゾーンになると想定していたんですが、20代のお客様も多いんですよ。
■オニツカタイガーが展開する4つのライン
・ヘリテージコレクション
定番ライン。クラシックなシルエットをアップデートした商品をラインナップ。
・コンテンポラリーコレクション
アーカイヴにコンテンポラリーなデザインを組み合わせたアイテムをラインナップ。
・ニッポンメイド
日本のものづくりの素晴らしさを世界に発信していくシリーズ。縫製やレザーの染め作業、仕上げなど、全ての行程を日本国内で行っている。
・ジ・オニツカ
スーツからカジュアルまで様々なスタイルにマッチする、ドレスシューズとスニーカーが融合したハイブリッドなデザインが特徴。
―2月には東京からミラノに発表の場を移し、初参加となったミラノファッションウィークでは2021年秋冬コレクションをデジタル形式で新作を披露しました。
コロナで海外から日本に渡航できなくなった今、ヨーロッパに発表の場を移すことでよりグローバルに発信できると考えました。デジタルでの発信についても浸透してきた時期でしたし、プレミアムファッションブランドとしての認知度はかなり上がったという手応えはフィジカル形式でなくても十分感じることができました。
―環境に配慮したスニーカーを発売するなど、サステナブルな取り組みもありました。
アッパーにリサイクルレザーを採用した「RECYCLED LEATHER SERIES」や、タイ発祥のサステナブルプロジェクト「ドイトン(Doi Tung)」とのコラボレーションスニーカーを展開しました。このプロジェクトでは、メーファールアン財団がタイ北部のチェンライ県の貧困に根差した悪循環からの脱却を目指し、新たな雇用を創出することを目的としていて、 再植林やコーヒー栽培、陶芸や織物などの仕事の場を作っています。コラボスニーカーではそこで作られた素材を使ったのですが、タイの皆さんにもこの取り組みに共感していただき、瞬時に売れましたね。
―サステナブルなものづくりは今や必須となっています。
我々が目指すのは、サステナブルであることは前提条件。その上で、お客様に喜んでもらえるデザインや機能を追求していきたいと考えています。
サステナビリティ活動は環境問題だけではありません。例えば、eスポーツの世界大会 「インテル・ワールド・オープン」ではオフィシャルユニフォームを制作するパートナーとして参画していますが、eスポーツは年齢や性別、国籍や障害の有無を超えて参加できることが魅力ですから、大会を支援することで誰もが活躍できる場としてのeスポーツを広めていけると思っています。
また、数量限定で発売した「シンデレラ」とのコラボスニーカーではガラスの靴をイメージして作ったのですが、21cmから29.5cmまで展開することで“ガラスの靴”を男性でも履けるようにしました。「シンデレラは高いヒールを履いていないといけないわけではない」という固定概念を覆すような活動になったと思いますし、ガラスの靴をスニーカーで体現することで男性に媚びない強い女性像も表現できたのではないかなと。こういった企業活動を通じてあらゆるアプローチでサステナビリティをこれからも発信していきたいですね。
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