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now&then -ヘアスタイリストの現在地-#11 いさな(ADITION) 初月売上100万円超え、「スーパースター」を目指す新星の実直な素顔

Image by: いさな

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now&then -ヘアスタイリストの現在地-#11 いさな(ADITION) 初月売上100万円超え、「スーパースター」を目指す新星の実直な素顔

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 人気美容師の半生にフォーカスするインタビュー連載の第11回。今回の美容師は、たった1年でカラリストデビューを果たし、初月指名売上は100万円を突破したADITIONのいさなさん。話を聞いてわかったのは、型破りで実直、天才肌ではなく職人気質な一面でした。フォロワー10万人から支持される美容業界の新星の素顔に、自らが撮ったインスタントカメラの写真とともに迫ります。

#11 いさな
インスタグラム
大阪府出身。神戸ベルェベル美容専門学校卒業後、ADITIONに入社。わずか1年でカラリストデビューし、初月の指名売上は100万円を突破。Instagramフォロワー数は約10.4万人、TikTokフォロワー数約21万人。

【店舗プロフィール】
ADITION アディション
「新しさを加える」をコンセプトに、原宿の中心地に店を構えるトレンドサロン。ハイトーンやグラデーションカラー、バレイヤージュなどのデザインカラーを得意とし、多くの顧客から支持を集めている。

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ー美容師になったきっかけを教えてください。

 行き当たりばったりの結果、というのが正直なところです。内定をいただいたのは卒業式の1ヶ月前。もしもらっていなかったら、たぶんインフルエンサーの道に進んでいたと思います。じつは元々美容師になる予定は全くなくて、美容学校に入ったのは勉強ができなかったからという理由なんです。

キャップをかぶった男性

いさなさん

学校にはほとんど通わず、SNSに注力

ー学生時代はどんな学生でしたか?

 学年1位を取ろうが最下位だろうが、美容師の国家試験に受かってしまえば全員同じスタートラインに立つことになる―。それに気づいたとき、真面目に学校に通うよりも、美容師になってからのことを考えたほうがいいなと思い、ほとんど授業を受けていませんでした。

 ちょうどその頃に出合ったのがSNS。これさえ頑張っておけば、美容師になってから活躍できるかもしれない、と学校にはろくに行かずSNSばかりやっていましたね。元々承認欲求が強かった僕にとって、SNSは自分を知ってもらうための最適のツールでした。

ーでも国家試験をパスしているから今美容師としてここにいるんですよね

 はい。国家試験の3ヶ月前くらいから猛練習を始めたんですよね。授業もほとんど受けていなかったので、そのとき初めてウィッグを触ったほど。「受かるわけがない」と散々言われていたのですが、無事に合格することができました。

美容師よりもインフルエンサーになりたい

ー大阪の専門学校出身とのことですが、就職活動はどのようにされたのでしょう?

 実は就職活動はしてないんです。フォロワーが増えるにつれ、「ブランドのモデルをやりませんか?」という声がかかるようになってきて。いわゆるインフルエンサーとしての活動を学生時代から始めていました。当時は特にインフルエンサーが稼げていた時期でもあり、「SNSだけでこんなに稼げるんだ!」と衝撃的で。

 美容師よりもインフルエンサーになりたい。そうやって夢がだんだん変わっていったので、国家試験に合格した後も特に就職活動をせず、インフルエンサーとして生きていこうと思い始めていたのですが……。

ーでも違ったんですね?

 卒業の3ヶ月前、東京の友達に現在の美容室・ADITIONを紹介してもらったんです。もし美容師やるんだったらやっぱり東京で、という思いがあったので、とりあえず受けてみようと上京しました。オーナーにお会いして包み隠さず話したら、そのまま内定をいただき、今に至ります。本当に行き当たりばったりなんですよ(笑)。

ADITIONの店内。常時10名程度のスタッフが在籍。
ヘアサロンのいつもの施術台から365日見る風景。気持ちのいいキャットストリートが見下ろせる。

ADITIONの店内。常時10人ほどのスタッフが在籍

ーたしかに行き当たりばったり。ですが、異例の1年でカラリストデビューし、話題になりましたね。どういった経緯で最速デビューされたのでしょうか?

 ADITIONは「新しさを加える」というコンセプトの美容室です。そもそも、前例がない状況でもチャレンジさせてもらえる風土がありました。

 あとは、ファンがいる状態で入社していたというのもあり、アシスタント時代から「いつ髪を染めてくれるんですか?」とたくさんDMをいただいていたり、先輩美容師を指名して来るファンの方までいた状況で。そういった状況を踏まえてオーナーに早期デビューを判断していただいた形です。

先輩がやってきたことを全て実践

ーとはいえ、技術力が伴わないと1年でデビューは難しいと思います。具体的にどのようなことをされたのでしょうか?

 今活躍されている業界の先輩の方々がアシスタントだった時代は、きっと終電まで練習して、営業前は誰よりも早く来て、なんなら始発で来て必死に練習して…という下積み期間を過ごしてきたと思うのですが、それを全部やりました。

 いわゆるZ世代と呼ばれる僕たち若手にとっては時代錯誤な行動かもしれませんが、先輩たちがそうやって美容師として成功してきたのであれば、自分も同じことをすればいい。そう思ってとにかく行動に移しましたね。特別な“ドーピング”は何もしていないんです。ただ、ひたすら練習して、努力をしてきただけなんです。

女性3人がピースをして並んでいる

いつも支えてくれるアシスタントたち。「越されたくない気持ちもあるし、越してほしい気持ちもある。ライバルであり仲間であり、家族でもあります」

ーデビュー月ではいきなり指名売上100万円を達成したと聞きました。

 はい、ありがたいことに。でも、悔しい思いもしました。

技術で喜んでもらいたい

ー悔しい思い?意外ですが、どんな思いを?

 フォロワーさんやファンの方が初月からたくさん来てくれたのは嬉しかったのですが、何をしても喜んでくれるわけですよ。いわゆる“推し”って何をしてもかっこいいじゃないですか。元々僕を推してくれている人たちたちは、僕の技術が上手くても下手でも、僕の評価には響かない。それが美容師として悔しかったんです。「あれ、俺って美容師だよな?」って。

 あくまでも美容師という立場で技術を提供しているので、“技術”で喜んでいただきたい。大切な髪を任せてもらっている分、こちらも本気なので…、ということに気づけたのはデビュー初月が終わってからでしたね。

ーデビューから2年目を迎える今、状況はいかがですか?

 “いさな”という美容師の元へ技術で信頼して来ていただいていると、より実感できるようになりました。逆にお客さまが離れたら「そりゃそうだよな」と力不足なのもわかる。それは自分を見直すきっかけにもなるし、また技術を磨いていこうと思える原動力です。

ーその原動力の根底には技術以外の何かがあるのでしょうか?

 とにかくダサいのが嫌なんですよ。フォロワーが多い状態でデビューして知名度がある分、技術見てみたら「ダサい」ってなんか嫌じゃないですか。負けず嫌いというのもあるかもしれませんが、いつも隙のない自分でいたいんです。

赤髪の女性のヘアスタイリングを携帯で撮っている様子

とある日のお客さまの仕上がり写真。根本がホワイトで毛先が赤色のスタイル

牙をむくなら同じ土俵で

ー負けず嫌いでそこまで動けるのもすごいですね。

 それこそ、「SNSのフォロワーが多かったからデビュー初月に100万いったんでしょ」と言われてきたのもめちゃくちゃ悔しかったです。

 SNSという武器は持っている。だけど、美容師というみんなと同じ土俵でのし上がりたい。先輩たちに牙をむくなら先輩たちが戦ってきた土俵に行くべきだなと思いました。だから今も技術を磨き続けることをやめません。

青のグラーデーションカラーな髪の毛の女性
カラー施術をしている様子

根本を暗くするシャドウルーツカラーのアレンジ版、“カラールーツ”。根本に色味を入れたグラデーションは若い女性からも人気。今回はブルーと白のコントラストで印象的に

ー早くデビューをしたいという若手はたくさんいると思います。早期デビューのメリットを教えてください。

 極論、やりたいことが明確にある人にとって、早期デビューはメリットしかないと思います。でもデビューしたら売上や信頼の責任は全部自分にのしかかってくる。これ、めっちゃ怖いですよ。どれだけお客さまを呼ぶのが大変で、どれだけリピートしていただけるのが大変か。技術でいえば髪の毛1ミリの違いでお客さまが満足しないかもしれないという苦しい世界に身を置くことになる。そういう覚悟は必要です。

ー精神的にも肉体的にも大変そうですね。辞めたいと思わないのですか?

 例えばアシスタント期間を3年と仮定して、50歳まで美容師を続けるとした場合、長い美容人生のうちたった3年です。“たった”3年と思えるか、思えないかの違いだと思います。

 3年すらも惜しいと思う方は早くデビューしたほうが得。ヴィジョンも明確で「やってやりたい!」という気持ちを持っている人が、先輩や組織のカリキュラムに制御されているのであれば、僕は1年でデビューするために行動したほうがいいと思います。

テレビやファッション業界でも活躍したい

ー現在23歳のいさなさん。なりたい美容師像や憧れの美容師像というのはあるのでしょうか?

 美容業界にとどまりたくないと思っています。テレビにも出たいですし、ファッション業界にも進出したい。今の美容師さんの中にはいない、そういうマルチに活躍する美容師になりたいので、特になりたい像はありません。

 美容師は“武器”のひとつです。その武器を使いながら“いさな”という名を広めていきたい。僕がどこまでいけるのか、みなさん見とってください。

ネイルをした手

アクセサリーやネイル、メイクが好き。「今後メンズメイクがもっと流行る世の中になるといいなと思っています」

ーはい、見てますね(笑)。では最後に将来の夢を教えてください。

 スーパースターですね! 美容師という枠にとらわれず、たくさんのことにチャレンジしていきたい。そのために業界のタイトルも狙っていきたいし、近い将来でいえば、2年後を目処に独立したいと考えています。

 あとは、早咲きした分、自分よりも人の幸せを願う気持ちが最近強くなってきていて。攻めの気持ちは常に忘れずに、僕のまわりにいる人を幸せにしていきたいです。

ブリーチ髪の男性のモデル画像

休日はファッションブランドの撮影に参加することも。モデルとしての活動も美容師と並行して行っている

“今を見るな、先を見ろ”

ー最後に若手美容師のみなさんにメッセージをお願いします。

 “今を見るな、先を見ろ”。環境や自分の考えていることのすべてを疑って進んでほしいです。考えて行動した上で失敗したと思ったらまた成功させるためにやる。その繰り返しじゃないですかね。

 あと、これからデビューする子は絶対に施術の単価を下げないようにしてください。一度下げたものを上げるのって難しいんですけど、上げたものを下げることって簡単なので。自分を安売りせず、戦ってください。応援しています。

(写真:いさな、企画・編集:福崎明子)

編集者、ライター

宮本香菜

出版社2社を経て独立。書籍の企画・編集、ブックライティング、記事等のインタビューなど活動中。ペンギンが好き。「now&then」の聞き手、文を担当する。

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