noir kei ninomiya 2021-22AW Collection
Image by: FASHIONSNAP
装いから始まり、空間や佇まいなど、ファッションデザイナーの仕事は衣服のデザインだけではないが、「ノワール ケイ ニノミヤ(noir kei ninomiya)」の二宮啓の才も衣服に留まらない。光をデザインするかのように、乱反射を計算して仕立てたであろう衣服のディティールと光が共鳴して空間を支配し、神々しさすら感じさせる。
舞台は、南青山のコム デ ギャルソン本社。席と席の間に百合の花が置かれ、ほのかに甘い香りが漂う中、新作となる2021-22年秋冬コレクション27ルックが披露された。毎回特定のテーマは設けていないが、二宮は「服に使わないような素材の中でも、何か硬質の強いものを柔らかく表現できないか」とステンレスに着目し、ワイヤーワークや生地などに落とし込み「メタル」なコレクションで構成した。
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序盤はトゲのようなステンレス(人を傷つけないよう先端は丸く加工してある)をチュールやライダースジャケットに縫い付けたアイテムで構成。画像はわかりづらいが、暗転した会場の中で光が当たる箇所だけが白く光り、モデルが一歩踏み出すたびに表情を変えた。
中盤は艶のあるオーガンジーを花のように見立てたデザインとドット柄を組み合わせた。また、これまであまり使ってこなかった深い青を、黒と組み合わせて見せた。二宮は「いつもなら、メタルを使う時に硬質のものと甘いものとで相反する表現をすることが多かったんですが、今回は甘いものを混ぜずに少し冷たいイメージというか、もっと尖ったイメージのものを集めてシンプルに強い表現ができないかなということでトライしました」と切り口を変えて「新しさ」を追い求めたという。
終盤はまさに光を味方につけたウェアコレクション。ステンレスを細く削って束にしたものなど硬質なものに柔軟性を与え、加工の仕方で表情が変わるテキスタイルの面白さを提案している。フォルムは一見してシンメトリーがベースとなっており、編みなどの生地の複雑性によって光が当たると乱反射する作用をもたせている。例えば光を能動的に放つ素材も開発されているが、二宮が着目するのはあくまでも身近なものや素材が多い。原始的でアナログな服作りを限界まで突き詰めることで、光を操るような服と空間を共振させるアプローチを可能にしている。それは、環境や関係性があって成り立つというファッションの本質を捉えた視点があってこそのアプローチと言えるだろう。
「ノワール ケイ ニノミヤ」のショールックは、これまでフラワーアーティストが手掛ける植物のヘッドピースが象徴的だったが、今回は会場に置かれた百合の花が東の仕事。シューズでは、引き続き「チャーチ(Church’s)」とコラボレーションしている。
コロナ禍で、パリではなく東京で発表が続く「ノワール ケイ ニノミヤ」だが、二宮は「強い表現をしていきたいという考えは全くもって変わらない。常日頃からトライしたいと思っていることがあるので、純粋に綺麗なものや新しいものを提案していきたい」と変わらない姿勢をみせた。
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