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とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式で紹介。第36回は「リーバイス(Levi’s®)」 アクションスラックス編。
2008年よりヴィンテージショップを運営。その後2021年には、ヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、来場者を1万人以上を動員する、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。
また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」、エルメスジュエリーを専門に取り扱う予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLERY」を運営。
2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、全国のヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
「デニムのリーバイス」が打ち出した高機能スラックス
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リーバイスはデニムジーンズの代名詞と言えるブランドですが、今回ピックアップしたのはデニムでなくアクションスラックス(ACTION SLACKS)というパンツです。「リーバイスがスラックス?」と意外に思う人もいるかもしれませんが、このアイテムが登場したのは1971年。50年以上の歴史を持つアイテムなんです。























ドミニカ製の2000年代のアイテム
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実はリーバイス、それよりも前の1963年からスタプレ(STA-PREST)というスラックスタイプのパンツを展開していました。スタプレは、クリース(中央の折り目)が洗濯しても取れないという、当時革新的だった技術を取り入れたアイテムでした。つまり、それまでのスラックスには必要不可欠だったアイロンがけが不要になったということ。当時のスタプレの広告では「Never Needs Ironing!(アイロンがけ不要!)」と、その利便性が強くアピールされました。
1960年代のアメリカでは、第二次世界大戦後の経済成長によって中産階級が拡大し、消費ブームが大きな盛り上がりを見せていました。人々はより快適で便利な生活様式を求めるようになり、手入れが簡単でいつでもきちんとした印象を保てる衣服の需要が高まっていました。その頃、化学繊維の技術開発が進んだこともあり、リーバイス以外にも「リー(Lee)」や「ラングラー(Wrangler)」などのジーンズブランドや、シャツメーカーの「ヴァンヒューゼン(Van Heusen)」など、あらゆるブランドがイージーケアのアイテムを打ち出していたのです。
スタプレの後継モデルと言えるアクションスラックスも、アイロンがけが不要なことが最大の特徴です。ポリエステル素材が用いられているので、ストレッチ性があって軽くて動きやすく、洗濯も気軽にできるという、高い機能性が魅力。穿いていてとてもラクチンなので、僕もついつい着用することが多くなってしまいます。真冬だと少し寒いこともありますが、それ以外の季節では非常に快適に着用できます。
スタプレはポケットや縫製などがジーンズに近いカジュアルな仕様ですが、アクションスラックスは一般的なスラックスとほぼ同じ仕様でキレイ目な印象に仕上がっています。つまり、スタプレをより上品にアレンジしたのが、アクションスラックスと言えるでしょう。こちらのグレーは1990年代終盤〜2000年代初頭のアクションスラックスですが、普通のスラックスにしか見えないですよね。




















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カジュアルにもキレイ目にも◎、ヴィンテージ入門にオススメ
1960〜70年代を代表するヒッピーカルチャーの影響を受けてか、スタプレはややフレアがかったシルエットのものが多い印象ですが、アクションスラックスはややゆとりのあるストレートシルエットが主流。古い年代のアイテムでもモダンに着用できるのがポイントです。




















こちらの1970年代の個体は絶妙なベージュカラーが魅力
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一方、ヴィンテージならではの良さが感じられるのも、アクションスラックスの魅力。こちらの1970年代の個体が良い例ですが、1970〜80年代の古いアクションスラックスには、それ以降にはあまりないアンニュイな色合いのものが少なくありません。定番カラーであるグレーも、古いアイテムはやや青みがかかっていたりするので、年代によって違いが楽しめるんです。





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これだけ魅力が詰まったアイテムですが、お手頃価格で手に入るのもアクションスラックスの特徴。1万円以下でも充分入手可能です。カジュアルにもキレイ目にも合わせられる万能アイテムなので、ヴィンテージの入門アイテムとしてもオススメですよ。

編集:山田耕史 語り:十倍直昭
最終更新日:
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vol.2 キース・ヘリング Tシャツ編
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vol.5 ポロ ラルフ ローレン オープンカラーシャツ編
vol.6 セックス・ピストルズ ポスター編
vol.7 シュプリーム ゴンズジャケット編
vol.8 ソニック・ユースTシャツ編
vol.9 エルメス アクロバット編
vol.10 ナイキ クライマフィット ジャケット 2ndタイプ編
vol.11 カルバン・クライン「オブセッション」Tシャツ編
vol.12 マルタン・マルジェラ ペンキデニムジャケット編
vol.13 J.クルー ツートーンアノラックパーカ編
vol.14 エルエルビーン ボート・アンド・トート編
vol.15 エルメス クレッシェンド編
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vol.17 エルメス アレア編
vol.18 スカジャン編
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vol.20 エルメス グレンデシャン編
vol.21 アディダス レザートラックスーツ編
vol.22 コム デ ギャルソン オム シャツ編
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vol.26 ペンドルトン ボードシャツ編
vol.27 BDUブラック357編
vol.28 アニマル柄シャツ編
vol.29 フェードスウェット編
vol.30 モヘアカーディガン編
vol.31 ウエスタンジャケット編
vol.32 リーバイス「後染め」ブラックデニム編
vol.33 エルメス オスモズ編
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