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とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第31回はウエスタンジャケット編。
2008年にセレクトヴィンテージショップ「グリモワール(Grimoire)」をオープンしたのち、2021年にはヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。また、渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」やアポイントメント制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLEY」を運営。2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、"価値あるヴィンテージを後世に残していく"ことをコンセプトに、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、ヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。
1950年代のアメリカで花開いたウエスタンカルチャー
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最近フィフティーズファッションの人気が再燃しそうな予感がしています。昨年秋に開催したVCM VINTAGE MARKET Vol.5でも、フィフティーズの古着で格好良くキメた若い方をたくさん見かけました。当連載で以前紹介したオンブレチェックシャツの人気がさらに高まっているのも、フィフティーズ人気が影響しているのかなと思っています。今回紹介するウエスタンジャケットも、そんなフィフティーズファッションを代表するアイテムのひとつです。
1950年代のアメリカでは、第二次世界大戦後に訪れた好景気により、人々の暮らしが飛躍的に発展しました。自動車やテレビなどが一般家庭まで広く普及したことも影響し、新しいカルチャーがたくさん生まれました。例えば、アニマル柄シャツの記事で触れたロカビリーも、1950年代のアメリカで生まれたカルチャーのひとつ。そして、フィフティーズアメリカンカルチャーを語るうえで欠かせないのが西部劇です。1952年公開の「真昼の決闘」や1956年公開の「捜索者」といった映画や、「ローン・レンジャー」「ガンスモーク」などのテレビドラマが次々と公開、放送されて人気を博し、ゲイリー・クーパー(Gary Cooper)やジョン・ウェイン(John Wayne)ら数多くのスターが生まれました。こういったカルチャーは、ファッションに大きな影響を与えます。ウエスタンファッションに身を包んだスターたちは憧れの的となり、1950年代以降のアメリカでカウボーイブーツやテンガロンハット、フリンジ付きのジャケットなどが、ファッションアイテムとして広く普及したんです。
こちらのウエスタンジャケットは、1897年創業の「エイチバーシー(H Bar C)」というウエスタンブランドが製作した、1960年代のアイテム。エイチバーシーは、数多くの西部劇映画に衣装を提供し、エルビス・プレスリー(Elvis Presley)やジョン・トラボルタ(John Travolta)などのスターの衣装も手掛けた本格ブランドです。ウエスタンアイテムはデザインの主張が強いので、ファッションに落とし込むのは難しいと思われるかもしれませんが、このジャケットのようにブラックカラーでオープンカラー、短丈で身幅が大きいシルエットなら、現代のファッションにもすんなりと馴染むと思います。
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こちらはブランドは不明ですが、おそらく50年代のアイテム。装飾がシンプルなので、どんな方でも合わせやすいと思います。
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ウエスタンファッションの手本はエディ・スリマンとジョニー・デップ
ウエスタンアイテムをファッションに取り入れるときに、お手本となる人物が2人います。1人目は、エディ・スリマン(HEDI SLIMANE)です。2000年代に「ディオール オム(Dior HOMME)」でメンズファッションシーンを席巻し、その後「サンローラン(SAINT LAURENT)」、「セリーヌ(CELINE)」で活躍したエディは、一般的にロックのイメージが強いかもしれませんが、実はこれまで手掛けてきたブランドで多数のウエスタンアイテムを打ち出しているんです。彼が得意とするソリッドなモードスタイルに、ウエスタンの特徴的なディテールをミックスするバランス感覚は流石の一言ですね。
もう1人のお手本が、俳優のジョニー・デップ(Johnny Depp)です。彼は大のウエスタンファッション好きで知られており、「ジョニー・デップ ウエスタン」と検索するとすぐに、上掲のようなブラックのウエスタンジャケットを格好良く着こなしたジョニー・デップの写真が見つかると思います。
ウエスタンアイテムには根強いファンが多くいるので、1950〜60年代のヴィンテージの価格は高値安定という印象。今回紹介した2つのアイテムの相場はどちらも20万円前後です。とはいえ、ウエスタンはアメリカを代表するカルチャーなので、年代やブランドを問わず数多くのアイテムが存在しています。お手頃価格のものもたくさん出回っているので、是非一度チャレンジしてみてください。
編集:山田耕史 語り:十倍直昭
vol.1 Carhartt × STÜSSY編
vol.2 キース・ヘリング Tシャツ編
vol.3 HERMÈS ヘラクレス編
vol.4 リーバイス ギャラクティックウォッシュデニムジャケット編
vol.5 ポロ ラルフ ローレン オープンカラーシャツ編
vol.6 セックス・ピストルズ ポスター編
vol.7 シュプリーム ゴンズジャケット編
vol.8 ソニック・ユースTシャツ編
vol.9 HERMÈS アクロバット編
vol.10 ナイキ クライマフィット ジャケット 2ndタイプ編
vol.11 カルバン・クライン「オブセッション」Tシャツ編
vol.12 マルタン・マルジェラ ペンキデニムジャケット編
vol.13 J.クルー ツートーンアノラックパーカ編
vol.14 エルエルビーン ボート・アンド・トート編
vol.15 HERMÈS クレッシェンド編
vol.16 オンブレチェックシャツ編
vol.17 HERMÈS アレア編
vol.18 スカジャン編
vol.19 カルチャーポスター編
vol.20 エルメス グレンデシャン編
vol.21 アディダス レザートラックスーツ編
vol.22 コム デ ギャルソン オム シャツ編
vol.23 ハーゲンダッツ編
vol.24 HÈRMES トルサード編
vol.25 フレンチフレーム編
vol.26 ペンドルトン ボードシャツ編
vol.27 BDUブラック357編
vol.28 アニマル柄シャツ編
vol.29 フェードスウェット編
vol.30 モヘアカーディガン編
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