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とどまることを知らない未曾有の古着ブーム。歴史的背景を持つヴィンテージの価値も高騰を続け、一着に数千万円なんて価格が付くこともしばしば。「こうなってしまってはもう、ヴィンテージは一部のマニアやお金持ちしか楽しめないのか・・・」と諦める声も聞こえてきそうです。
でも、そんなことはありません。実は、現時点で価格が高騰しきっておらず、ヴィンテージとしての楽しみも味わえる隠れた名品もまだまだ存在します。この企画では、そんなアイテムを十倍直昭自身が「令和のマストバイヴィンテージ」として毎週金曜日に連載形式でご紹介。第1回は「ステューシー(STÜSSY)」と「カーハート(Carhartt)」のコラボレーションアウター編。いきなり意外なアイテムだと思った皆さん、ちゃんと解説しますね。
2008年よりヴィンテージショップを運営。その後2021年には、ヴィンテージ総合プラットフォーム VCM(@vcm_vintagecollectionmall)を立ち上げ、来場者を1万人以上を動員する、日本最大級のヴィンテージの祭典「VCM VINTAGE MARKET」を主催している。
また渋谷パルコにて、マーケット型ショップの「VCM MARKET BOOTH」、エルメスジュエリーを専門に取り扱う予約制ショップ「VCM COLLECTION STORE」、イベントスペース「VCM GALLERY」を運営。
2023年10月には初の書籍「Vintage Collectables by VCM」を刊行するなど、ヴィンテージを軸とした様々な分野で活動し、全国のヴィンテージショップとファンを繋げる場の提供や情報発信を行っている。

1993年カーハート×ステューシー「デトロイトジャケット」(写真右)と「チョアコート」(写真左)
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シュプリーム設立より古い!ブランドコラボの先駆け
今回紹介するのは、アメリカの人気ストリートブランド「ステューシー(STÜSSY)」が、アメリカの老舗ワークウェアブランド「カーハート(Carhartt)」と1993年にコラボレーションしたアイテム。
後にコラボレーションで大きな話題を振りまくことになる「シュプリーム(Supreme)」が設立されるのが1994年。このステューシー×カーハートはそれよりも前なので、「コラボの先駆け」という意味でも貴重なアイテムです。

ディティール違いの個体もあり、「デトロイトジャケット」はジッパーヘッドの穴が丸い真鍮製のものと、5角形のものの2種類が確認されている(画像のアイテムは後者)
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カーハートが展開していた「デトロイトジャケット」と「チョアコート」というモデルをベースに、このコラボアイテムが発売されたニューヨーク、ロサンゼルス、東京の3都市が刺繍で施されています。この3都市が並んだデザインが個人的にとても好きなんです。東京が入っているのも嬉しいですね。
今回持ってきたのは私物ですが、2モデルを比べてみると色合いがかなり違います。「デトロイトジャケット」はデッドストックのような濃い色。「チョアコート」はかなり着込まれている状態で、コーデュロイ素材の襟がブラックからグレーに、ボディがネイビーからブルーに退色しており、古着ならではの良い雰囲気になっています。

数量限定で発売され、当時日本で発売されたのは数十着だけだったという噂もあるそう
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藤原ヒロシが着用、コラボカルチャー黎明期の記念碑的存在
このステューシー×カーハートは当時、藤原ヒロシさんが着用して有名になりました。「グッドイナフ(GOOD ENOUGH)」がスタートしたのが1990年、NIGO®さんと高橋盾さんによる伝説的なショップ「ノーウェア(NOWHERE)」が開店したのが1992年と、この頃は裏原宿から発信されるコアなストリートカルチャーが、徐々に世界と繋がりつつありました。そんな時代に、世界的なカルチャーの発信地であるニューヨークやロサンゼルスと、東京が肩を並べて記されているというこのアイテムは、ストリートファッションにおけるコラボカルチャーの記念碑的存在と言えます。

1993年のステューシー×カーハートコラボは、「デトロイトジャケット」「チョアコート」以外に、「ダックベスト」というアイテムも存在している
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「カーハート」は今、世界的に最も旬なブランドと言えるかもしれません。特に「デトロイトジャケット」は、丈が短く、身幅がたっぷりとしたイマドキなシルエットが人気で、レギュラー古着の価格も高くなっています。最近は暖冬が当たり前になっているので、タウンユースだと「デトロイトジャケット」みたいなブランケット付きでも十分、というのも支持される理由でしょう。ただ結構重いですけどね(笑)。
「ステューシー」も人気が再燃しており、古着市場でも「オールドステューシー」の価格が高くなっています。
現在このアイテムの相場は50万〜70万円ほど(十倍調べ)ですが、今アツいふたつのブランドのコラボ、そして東京がストリートファッションの発信地として認められた証として考えればまだ決して高くはないと思います。今後は、このアイテムの歴史的価値が再認識されれば、さらに貴重なアイテムになると考えています。

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編集:山田耕史 語り:十倍直昭
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