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トレンドの最前線を行く者、映画の最新作も気になるはず──。今月公開が予定されている最新映画の中から、FASHIONSNAPが独自の視点でピックアップする映画連載企画「Fスナ映画部屋」。
今回は、一足先に公開された北米でオープニング興行収入1億2850万ドル超えの大ヒットを記録中の「THE BATMAN-ザ・バットマン-」をセレクト。2022年に公開された作品ではぶっちぎりの1位の興行収入を叩き出した超話題作を編集部員によるゆる〜い座談会付きで本作を紹介します。
目次
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THE BATMAN-ザ・バットマン-
気になるあらすじは?
青年ブルース・ウェイン(ロバート・パティンソン)は、両親殺害の復讐を誓い、夜は黒いマスクで素顔を隠し犯罪者を力でねじ伏せる存在「バットマン」になろうとしていた。ある日、権力者が標的になった連続殺人事件が発生。その犯人を名乗るのは、犯行現場になぞなぞを残す知能犯リドラー。事件を解決していく過程で暴かれるのは、政府の陰謀とブルースにまつわる過去の罪だった。
■THE BATMAN-ザ・バットマン-
公開日:2022年3月11日(金)
監督:マット・リーヴス
出演:キャスト:ロバート・パティンソン、コリン・ファレル、ポール・ダノ、ゾーイ・クラヴィッツ、ジョン・タトゥーロ、アンディ・サーキス、ジェフリー・ライトほか
公式インスタグラム
一足先に「THE BATMAN-ザ・バットマン-」を観た、同い年編集部員2人による ゆる〜い座談会
普段はアートやカルチャー関連のほか、東京のデザイナーズブランドなどを担当。マーベル・コミックよりもDCコミックス派。
フルカティ:今作のバットマンは「スーパーヒーロー」ではないよね。利己的で自暴自棄のようにも見えるし、私達と同じように痛がり、傷つき、怒り、悲しむ。
マサミーヌ:これまでにもたくさんの俳優がバットマン/ブルース・ウェインを演じてきたけど、今までで1番人間らしいバットマンだったかもね。
フルカティ:先行きの見えない現代を生きる私たちが必要としている本当のヒーロー像だな、とも感じた。
マサミーヌ:そうだね。今こそ見たい「極上のエンタメ映画」。
フルカティ:さっき「スーパーヒーローではない」と言ったけど、正しくは「"まだ"スーパーヒーローではない」。なぜなら今作のブルース・ウェインは、バットマンとして悪を退治するようになってから数年しか経っていないから。
マサミーヌ:ゴッサム・シティでの認知度もまだまだ低いよね。噂の人レベル。
フルカティ:クリストファー・ノーラン監督が制作したバットマン3部作「ダークナイト」シリーズでクリスチャン・ベールが演じたバットマンになる前の話、と思って観るとみやすいかもね。
マサミーヌ:そうだね。故にバットマンも、ブルース自体もかなり未熟な印象を受けた。
フルカティ:今回監督を務めたマット・リーヴスが「起原の物語から始めることは避けていて、あくまで若き日のバットマンを描き、彼が自身を改善するために努力する物語」と端的に今作の特徴を説明してくれている。
マサミーヌ:バットマンとしての未熟さで言うと、バットスーツが手作り感満載で興味深かった。
フルカティ:ヒーローブーツではなく特性カバーを付けた軍用ブーツを履いていたからね(笑)。
マサミーヌ:バットスーツもよく見ると、繋ぎ目や傷が無数についていることがわかるし、お馴染みの乗り物「バットモービル」もかなり初歩的なもの。
フルカティ:リーヴス監督の長年のパートナーであり、多くのシリーズの製作を手掛けてきたディラン・クラーク曰く「バットスーツとモービルは明らかにバットマン自身がデザインしたとわかるようにしたかった」とのこと。
マサミーヌ:まさに感じた!レザー調に仕上げたゴム製のマスクや、警察支給品のような弾薬ポーチなど、ブルース・ウェインという人は身の回りにある古いものを修理して使う意識がある人なんだな、と。
フルカティ:たしかにDIY感溢れるスーツやモービルは「今作でのブルースは強迫観念の強い人物で、バットマンのコンセプトは長年温められてきたものなのではないだろうか」とすらも思わせたよね。
マサミーヌ:今回主演を務めたロバート・パティンソンは、ブルースのことを「まさの狂気の沙汰と言うべきか、崖っぷちの男が瀬戸際にある街を救おうとしている」と分析。続けて演じるにあたって「バットスーツを着る時、彼が人間から遠ざかっているように見せたいと思った。ブルースはまだバットマンがいったい何者なのか、答えを見つけ出そうとしている。だからこそ彼は様々なことに反応しがちなバットマンになっているし、それが新しい」と。
フルカティ:「彼が人間から遠ざかっている」というのはロバート・パティンソンの動きでよく伝わったよね。今作のバットマンはどちらかと言うと「恐怖」を正義の手段として使っている印象を受けた。
マサミーヌ:ブルースは、幼少期に両親を何者かに殺害されており、それがきっかけでバットマンとしてゴッサム・シティの治安を守るために悪を倒すことを決めたんだろうけど、原動力は「守りたい」よりも「復讐」なのがアンチ・スーパーヒーローとしての「バットマン」のミソかもね。
フルカティ:彼は敵や悪に対して常に「こいつがもしかしたら両親を殺した張本人かも知れない」と思っているのかな、と。怒りに任せて自暴自棄で戦っているというか。
マサミーヌ:たしかに、戦闘においてあまり生き残ろうとしいう意思を感じなかった。
フルカティ:劇中でもニルヴァーナ(Nirvana)の「サムシング・イン・ザ・ウェイ」が劇中歌で用いられているけど、ロバート・パティンソンがカート・コバーンのような出で立ちで世捨て人みたいにみえるのも、今までのバットマンとは一線を画す。
マサミーヌ:実際にリーヴス監督は、ロバート・パティンソンの人物像参考としてカート・コバーンをイメージしていたらしい。
フルカティ:今まで演じられてきたブルース・ウェインとは異なり、今作のブルースは全然プレイボーイじゃない。ひとりぼっちで孤独なのにバットマンでいることが正しいことかも自信がない。でもそうせざるを得ないし、他の選択肢がないとわかっているからロバート・パティンソン演じるブルースからは絶望感が漂っている。
マサミーヌ:おもわず「そんな鬱々としなくていいじゃない、ウェイン君……」と思っちゃったよ(笑)。
フルカティ:今作のヴィランは、犯行現場に謎解きを残す知能犯リドラー。
マサミーヌ:コミックスでは"?"が描かれた緑色の服でお馴染みだったけど、今作では普通の格好をしているから「こういう不穏な空気を発する人は本当にいる」と思うくらい、変にリアル。それがまた怖かった。
フルカティ:現場に残されている暗号なども含めて、サンフランシスコで実際に起きた起きた連続殺人「ゾディアック事件」を彷彿とさせるから余計に現実的だったよね。
マサミーヌ:リドラーとバットマン、実はとても似ているなとも思った。
フルカティ:そうだね、類似点や異なる点を考えながら見ると更に楽しめるかも。
マサミーヌ:今回リドラーを演じたのはポール・ダノ(Paul Dano)。
フルカティ:私、こういう相手を不安にさせる顔の俳優大好き。
マサミーヌ:本作は度々「『ジョーカー』の衝撃を超える、最高危険度の謎解きサスペンス・アクション」というコピーライティングが使用されていて、世界で最も有名なヴィラン、ジョーカーの存在を匂わせているよね。
フルカティ:ジョーカーは「口が裂けている」という事前情報だけあれば本作は取り敢えず楽しめるはず!
マサミーヌ:今までの作品もそうだったけど、原作コミックスを読んでなくても楽しめるようになっているし、読んでいたら読んでいたで更に楽しめる。
フルカティ:そうだね。一応、今作は1年目の活躍を描いた「バットマン:イヤーワン」を原作としているようで、シリーズの中の様々なシーンを混ぜわせて作られているらしい。
マサミーヌ:例えば今作ゾーイ・グラヴィッツが演じるヒロイン、セリーナ・カイルはまだキャットウーマンの格好をしているわけでも、キャットウーマンと名乗っているわけでもない。でも、セリーナがキャットウーマンになるまでの道筋は示されている。
フルカティ:バイクスーツに目元まで覆うニットの目出し帽をかぶっているだけで、まだキャットスーツは着用していないしね。
マサミーヌ:原作を知らずキャットウーマンの存在すら知らない人が観たらきっと「めちゃくちゃ強いやたらと爪が長い人」と思うんだろうね。
フルカティ:バットマンと唯一協力関係を結んでいるゴッサム市警のジェームズ・ゴードン(ジェフリー・ライト)も今作では、"まだ"警部補(コミックスではいずれ本部長になる人物)。
マサミーヌ:コリン・ファレルが演じた犯罪者オズ、通称「ペンギン」は、その後バットマンにとって最も永続的な敵になるキャラクターだけど、今作ではまだ大物ギャングにはなっていない。どちらかというと軽んじられて笑いものにされている。
フルカティ:今作に出てくるキャラクターは「今後、彼らが何者になるのか」という種がまかれているように感じたね。
マサミーヌ:それにしても、ペンギンを演じたコリン・ファレルの特殊メイクすごかったね。エンドロールを観るまでコリン・ファレルって全然気が付かなかったよ。
フルカティ:特殊メイクで思い出したんだけど、ブルース・ウェインの最も親しい協力者でバットマンの正体を知る唯一の人物 アルフレッドを演じたアンディ・サーキスは「ロード・オブ・ザ・リ ング」ではゴラムを演じ、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」では最高指導者スノーク役を演じるなどモーションアクターとしても知られているよ。
マサミーヌ:ファッションファンなら知っておいて損はない事前知識としては、ゴッサム市警の指揮センターと死体安置所は、セントマ※がロケ場所として使用されているとのこと!
※セントマ:ロンドンの芸術大学セントラル・セント・マーチンズの略。ジョン・ガリアーノやフセイン・チャラヤンなど、著名なデザイナーを数多く輩出している。
フルカティ:舞台美術の話でいうと、あるシーンで「絶対にエドワード・ホッパーの絵画『ナイトホークス(夜ふかしする人々)』を参考にしている!」と思ったシーンがあったな。ちなみに、ナイトホークスは「孤独と疎外感の象徴的な絵画として位置づけられている」ということも知っているとまた見方が変わっておもしろいかも。
マサミーヌ:我々は、ロバート・パティンソンが主演を務めた映画「トワイライト」シリーズドンピシャ世代ですよね。
フルカティ:ロバート・パティンソンは、トワイライトシリーズで「アイドル俳優」というイメージがついたのも事実だよね。
マサミーヌ:そうだね。シリーズが終わってから約10年間はアイドル俳優のイメージを払拭するかのようにインディーズ映画を中心に出演を重ね、今や怪演を見せる名俳優に。
フルカティ:私はやっぱりネットフリックスオリジナル映画「キング」のロバート・パティンソンが衝撃的だった。彼のことが気になった人は全員見て欲しい(笑)。
マサミーヌ:最近で言うと、トム・ホランドが主演を務めた「悪魔はいつもそこに」での怪演もおすすめ。
フルカティ:「悪魔はいつもそこに」は、ハリーポッターシリーズでダドリー・ウィーズリーを演じ、最近ではドラマ「クイーンズ・ギャンビット」でチェスの名プレイヤー ハリー・ベルティック役を演じたハリー・メリング(Harry Melling)もめちゃくちゃいい役だった!!
マサミーヌ:アイドル俳優の話に少し戻りたいんだけど、日本における現在の岡田将生はかなりロバート・パティンソンと近い立場だよな、とかも思う。
フルカティ:興味深い!どういうところがそう思うの?
マサミーヌ:岡田将生といえば「花ざかりの君たちへ〜イケメン♂パラダイス〜」でブレイク。そこから数年間はラブストーリーの出演が相次いだ気がしていたんだけど映画「告白」で今までのイメージを覆すような嫌な役をやったんだよね。
フルカティ:熱血教師の役だっけ?その役で日本アカデミー賞の助演男優賞にノミネートされていた。
マサミーヌ:そうそう。同じ年に「悪人」でもクズなプレイボーイを演じたりと「イケメン俳優」「アイドル俳優」のイメージを払拭しようとあがいているように見えた年があって。
フルカティ:近年では「ドライブ・マイ・カー」でも怪演を見せていたし、一理あるかもね……。
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