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【ネタバレ注意!】もっと、「フレンチ・ディスパッチ」の話
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ここからは、同い年編集部員である「フルカティ」と「マサミーヌ」による、ネタバレありきのゆるい座談会をお届け。「フレンチ・ディスパッチ」観劇後の余韻に浸りながらゆる〜くどうぞ。(本当にゆるいです!)
普段はアートやカルチャー関連のほか、東京のデザイナーズブランドなどを担当。ウェス・アンダーソン作品ベストは「犬ヶ島」。「グランド・ブタペスト・ホテル」は大学時代に周りで流行り、3度トライするも2度寝る失態を犯す。
マサミーヌ:オムニバス作品ではあるけど、本作に1つ通底的なテーマがあるとするならば「仕事讃歌」、という話をしていたけど具体的にはどういうところで感じたの?
フルカティ:例えば、今までのウェス・アンダーソン作品だったらビル・マーレイ演じるアーサー・ハウイッツァー・Jr編集長の生い立ちや編集長になるまでなど、彼の人生をもっと描いていたと思うんだけど、劇中ではどういう人生だったかはあまり明かされていない。そこが素敵だな、と個人的には思った。
マサミーヌ:たしかに、オムニバス作品を寄稿している記者たちの人生を掘り下げるのではなく、彼らの仕事にずっとフォーカスを当てていたかも。
フルカティ:作品全体を振り返ってみると、「義務と権利」「責任と無責任」みたいな二項が共通テーマにある気がして。それが更に「仕事讃歌だなあ」と思わせた。
マサミーヌ:劇中に編集長が「(雑誌は廃刊しそうだけど)何があっても寄稿している記者の給料は下げるな」と言うシーンがあったね。
フルカティ:その台詞に代表されるような「●●しなければならないけど、●●したくない」「●●したいけど、●●することができない」という構造が、どの話にもあった気がする。1つ目のオムニバス作品「確固たる名作」で言うと、天文学的な値段がつく服役中の画家の新作を売りたいけど、刑務所のコンクリート壁に描いてしまったので売ることも、そこから移動させることもできない。2つ目のオムニバス作品「宣言書の改定」では、フランシス・マクドーマンドが演じるルシンダ・クレメンツは人として学生運動を応援したい気持ちはあるが、ジャーナリストととしての平等性を保つために学生に肩入れをしないようにする。3つ目の「警察所長の食事室」では、毒かもしれないけど味見しなければならない料理人が出てくる。
マサミーヌ:なるほど。仕事をしていると、自分が本当にやりたいことと、やらなくてはならないことの間で揺れることってあるよね。
フルカティ:自分の信条と社会人としての責任、みたいなことだよね。そういうことを踏まえると、ウェス・アンダーソンって文学者っぽいな、とも思う。
マサミーヌ:大学では哲学を学んでいたらしいから、大きな概念に真摯に向き合うみたいな傾向はあるかもね。
マサミーヌ:「古き良き出版社の話」という立て付けにはなっているけど、現実世界では廃刊ギリギリの出版社の編集長が「記者の給料は何があっても下げるな」と言うのはなかなか難しいよね(笑)。そういう意味ではユートピアだな、とも思った。
フルカティ:おかしな話だけど、ウェス・アンダーソンは架空の世界を懐かしがっているから(笑)。彼の個人的な郷愁ではないのが映画全体の雰囲気作りに一役買っていたかもね。そんなマサミーヌはオムニバス作品の中でどの話が一番好きだった?
マサミーヌ:「確固たる名作」かな。コンクリートの壁面に大型のフレスコ画が映った時に「『確固たる』ってそういうことか〜!」と思わず笑っちゃった。
フルカティ:絶対にその場から移動させることができないという意味で「"確固たる"名作」(笑)。ちなみに、作中に出てくる壁画は、ティルダ・スウィントンのパートナーでもある芸術家 サンドロ・コップ(Sandro Kopp)が描いたものらしいよ。
マサミーヌ:個人的にはウェス・アンダーソン作品は説教臭くなりそうな題材を、ユーモアを混ぜて描いてくれるから好き。
フルカティ:彼はよく「ウィットに富んだ」と形容されるけど、自分自身では「ウィットに富んだ(笑)」と思っているんだろうな、というのを感じるよね。
マサミーヌ:少し話は脱線するかもしれないんだけど……。現代におけるウェス・アンダーソン監督の立場は、ある時代におけるジム・ジャームッシュを思い出すんだよね。
フルカティ:なるほど。ジム・ジャームッシュ監督もオムニバス作品が多いし、決まった役者ばかり起用するしね。……私も高校生の頃に、周りからおしゃれで最先端な人に思われたくて「コーヒー&シガレット」を観たよ。未だに「一番好きな映画監督は?」と聞かれたら恥を忍んで ジム・ジャームッシュと答える(笑)。
マサミーヌ:「正直何が面白いかはわからないんだけど、これを観ている私はイケているかも」と思える映画って時代ごとにあるような気がする。ウェス・アンダーソン作品は現代においてその役割を一手に引き受けてるな、と(笑)。
フルカティ:例えば「グランド・ブタペスト・ホテル」は、日本では所謂「おしゃれ映画」としてのイメージが強い。
マサミーヌ:そうだね。本作もどちらかといえば「グランド・ブタペスト・ホテル」のような評価をされるかもしれないね。
■『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊』ブルーレイ+DVDセットは4月27日発売!
ファンの熱量も高いウェス・アンダーソン監督の最新作。舞台は20世紀フランスの架空の街にある米国新聞社の支局で活躍する、一癖も二癖もある才能豊かな編集者たち。ストーリーは三部構成で、画面のいたるところにウェス・アンダーソンらしいユニークな演出が散りばめられています。今回発売されるブルーレイ+DVDセットは初回限定仕様!劇中に登場するストーリーをイメージした4種のオリジナル・miniステッカーが封入されています。
※サイズ:142mm×100mm※在庫がなくなり次第ステッカーのない通常版に切り替わります
「フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊」デジタル配信中(購入/レンタル)ブルーレイ+DVDセット発売中。発売:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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