【微ネタバレ注意!】もっと「ハッチング―孵化―」の話
ADVERTISING
ここからは、同い年編集部員である「フルカティ」と「マサミーヌ」による、ネタバレありきのゆるい座談会をお届け。「ハッチング―孵化―」観劇後の余韻に浸りながらゆる〜くどうぞ。(本当にゆるいです!)
かなり早い段階で卵が孵化したことにびっくりしたんだよね。
たしかに、予備知識なしで観ると卵が孵化するまでを描く作品だと思うよね(笑)。
ティンヤの家族も偽りの"殻"を被り、素敵に見えるように取り繕っているから、卵というモチーフのチョイスは秀逸だと思った。
本作に置いて卵というモチーフは様々なメタファーになり得るよね。
卵から孵化したモンスターは、殻を破ることで抑圧やプレッシャーから解放されたティンヤの願望のようにも見える。
異物誕生モノのホラー映画って今までもたくさん制作されてきたと思うんだけど、大体哺乳類から生まれるんだよね。
今作もフィクションらしく「卵を生む哺乳類」にすることもできたと思うんだけど
あくまで「卵を見つけてきた」というストーリーも新鮮だった。
卵から孵化したモンスター アッリは、ほとんどCGを使っていないらしいよ。
ホラー映画のモンスターというよりかは「ハリーポッター」シリーズに出てきそうな生物だったよね。
どこか愛らしく、親密さと愛情を切望している顔をしている。
アッリの造形は「スター・ウォーズ」の新三部作や「ジュラシック・ワールド」などを手掛けたグスタフ・ホーゲンが特殊造形デザイナーとして参加。
加えて「プライベート・ライアン」や「ダークナイト」でアカデミー賞にもノミネートされたナー・オサリバンが特殊メイクを施して完成したそう。
初長編映画監督デビュー作品にしては、豪華なキャスティングだね。
ハンナ・ベルイホルム監督がググって
「この人に頼みたい!」と思って連絡したら実現したとのこと。
今どきっぽい(笑)!
ティンヤの母親は紛うこと無く毒親だけど、父親もかなり強烈なキャラクターだったよね。
母親の「素敵な家庭づくり」に対する過剰な演出に対して、見てみないふりをしている。
父親もおそらく自分の容姿には自信がなくて
「妻に従えば、愛されていると実感できる」と思っているんじゃないかな。
父親と息子がどんどんそっくりになっていったのに気がついた?
たしかに、徐々に瓜二つになっていくよね。
父親と息子は「母親の暴走から逃げること、従順に従うことで母親から愛されようとしている」という点でも似ている。
ティンヤは頑張ることで母親から愛されようとしているので、真逆の立場。
あるいは、母親が息子を父親の複製になるように育てているのかもしれない。
「母親に従順な男」という育て方……。
闇が深い……。
【超ネタバレ注意!】もっともっと「ハッチング―孵化―」の話
アッリとティンヤには精神的な繋がりがあるようだったよね。
だからこそ、アッリが傷つけばティンヤも傷つくし、ティンヤが傷つけばアッリも傷つく。
ティンヤの「母親に愛されたい」という衝動がアッリの原動力だよね。
だからこそアッリは「母親の愛情を奪う相手」を脅かす対象に襲いかかる。
なるほど。
暴走するアッリを止める手段として、ティンヤは大会でわざと落下したけど
あれはアッリを止めるためでもあり、理想を押し付け続ける母親への反抗心なのかなとも思った。
「かわいそうだ」という優しさだけで卵を孵化させてしまったティンヤだけど、最終的には母親にもアッリにも反抗した、と。
そうそう。
「はっきりとNOを言うことだって重要だ」という監督からのメッセージなのかな。
ラストシーンはハッピーエンドだと思った?バッドエンドだと思った?
バッドエンドだと思ったかな……(笑)。
あの母親にとって、従順かつ身体能力も高い"孵化版ティンヤ"は扱いやすく
「理想の毎日」を送らせてくれそうだと思ったんじゃないかな。
ティンヤとアッリの関係は、母親とティンヤの関係にとても似ているよね。
ティンヤはアッリに対して「周りの人を傷つけて私を悲しい気持ちにさせるから消えて欲しい」と願っているけど
同時に「私が育てた」とも思っている。
自分(ティンヤ)の思い通りにならない娘(アッリ)は、母親の眼差しから見える自分のように感じてしまったんじゃないかな。
これもすごい仮説なんだけど……。
母親は怪我でフィギュアスケート選手の道が閉ざされたという話だったじゃん。
太ももに大きい傷があったね。
そうそう。
その傷、アッリがティンヤとそっくりになった時にできた顔の傷にも似ていて……。
ということは、もしかしたら母親も「孵化した母親」なのかな、と。
うわ!その解釈はだいぶ怖い(笑)!
母親がどういう人に育てられたのかという描写や説明はないけど、完璧な理想を追い求めるような人だからきっと厳しい人に育てられたと思うし……。
とにかくこの映画にはいろいろな側面が多いから、観劇後の感想戦が捗ること間違いなしだね。
■映画「ハッチング―孵化―」
公開日:2022年4月15日(金)
監督:ハンナ・ベルイホルム
出演:シーリ・ソラリンナ、ソフィア・ヘイッキラ、ヤニ・ヴォラネン、レイノ・ノルディン
公式サイト
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【#Fスナ映画部屋】の過去記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
銀行やメディアとのもたれ合いが元凶? 鹿児島「山形屋」再生計画が苦境