(左から)LOEWE、VALENTINO、PRADA、LOUIS VUITTON、HERMÈS
「多様化する現代のマスキュリニティとは何か」
2024年春夏ミラノ&パリメンズファッションウィークは、引き続きメンズとウィメンズウェアの境界線が曖昧な「ジェンダー フルイド」の流れが拡がりをみせている中で、改めて現代のマスキュリニティについて考え、再解釈するクリエイションが目立った。
脚見せの波がメンズにも
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世界的な気候変動による温暖化の影響か、それともコロナ禍をきっかけにリモートワークをはじめとする柔軟な働き方が急速に浸透している影響か。リラックスしたエフォートレスなスタイル、特にショートパンツやハーフパンツなど丈の短いボトムがキーアイテムとなるシーズンとなった。
Image by: PRADA
Image by: Paul Smith
Image by: Officine Générale
クワイエット ラグジュアリーの台頭
ブランドの派手なロゴ入りアイテムは徐々に影を潜め、代わりに「クワイエット ラグジュアリー」なる自らの富を誇示しながらも、控えめで洗練されたスタイルが台頭。メンズコレクションのランウェイも、ストリートスタイルから富裕層の上品なスタイルの流れにシフトしてきている。
Image by: HERMÈS
Image by: GIORGIO ARMANI
Image by: ZEGNA
テーラードスタイルの拡がり
新たな男性性を模索していく中で、テーラードスタイルのバリエーションで自由に今の気分を表現するデザイナー達。ソフトな素材使いや、カラーパレット、ハイウエストのバギーボトムで個性的なエレガントスタイルを提案しているブランドが多く見られた。カジュアル過ぎないのが2024年春夏シーズンの特徴。
Image by: DIOR
Image by: DRIES VAN NOTEN
Image by: Dolce&Gabbana
・ショートボトムのスーツ
カチッと仕立てられたテーラードジャケットに、膝上丈のゆったり目のショートパンツを合わせたスーツやセットアップが続出。よりクールで若々しいムードを演出している。
Image by: AMIRI
Image by: Louis Gabriel Nouchi
Image by: VALENTINO
・タックインスタイル
ジャケットをシャツのようにタックイン。テーラードスタイルのルールを崩しながらも、カジュアル過ぎない着こなしが多く提案された。
Image by: PRADA
Image by: DRIES VAN NOTEN
Image by: LOEWE
・ノーカラージャケット
フェミニンな印象のシャネル風ノーカラージャケットがメンズウェアに。今シーズンの特徴的なアイテムのひとつとして、様々なバリエーションで登場した。
Image by: FENDI
Image by: DIOR
Image by: LOUIS VUITTON
ジェンダーの境界のない豊かな素材使いとカラー
素材やモチーフもジェンダーの垣根を超え、ウィメンズでよく使われているファンシーツイードやスパークリング素材、花モチーフのプリントや装飾、クチュールで使われるアーティザナルな手法に注目。手の込んだ職人技が多く用いられている。
・バラエティに富んだファンシーツイード
Image by: AMIRI
Image by: DIOR
Image by: doublet
・遊び心のあるヘリンボーン
Image by: LOEWE
Image by: KENZO
Image by: GIORGIO ARMANI
カラーはニュートラルカラー、特にグレーと白のバリエーションが目立つ。ピンクをはじめとするパステルカラー、またはスモーキーパステルのパレットが豊富。同時にブライトカラーも多く見られ、全体的にソフトで明るい印象のシーズンとなっている。
・パターン化された控えめシグネチャー柄
各メゾンの代表的なシグネチャー柄の進化型パターンが登場。共通しているのは柄が大胆に抽象化され、一目見ただけでは気付かないこと。控えめの美学だ。
Image by: DIOR
Image by: LOUIS VUITTON
Image by: FENDI
・キラキラ輝くシャイニー素材
Image by: LOEWE
Image by: DRIES VAN NOTEN
Image by: doublet
・大胆なフラワープリント
花のモチーフも今シーズンのトレンド。大小さまざまな花柄のプリントが、多くのブランドで用いられていた。
Image by: VALENTINO
Image by: sacai
Image by: MSGM
・花モチーフのエンべリッシュメント(装飾)
胸元のコサージュや刺繍された花、立体的に装飾された花など、さまざまなテクニックで表現された花モチーフの数々。
Image by: PRADA
Image by: ETRO
Image by: Dolce&Gabbana
・シースルーアイテム
ダイバーシティが浸透し、透ける素材のアイテムはメンズウェアにおいても定番化しつつある。
Image by: SAINT LAURENT
Image by: HERMÈS
Image by: Rick Owens
・充実のストライプ柄
様々な種類のストライプがセットアップやジャケットなどに使用され、充実したシーズンとなった。
Image by: BED j.w. FORD
Image by: HERMÈS
Image by: MSGM
ミリタリーを上品に遊ぶ
メンズの定番であるミリタリーテイストが、よりエレガントに。上品かつ本来の機能性も兼ね備えたスタイルに仕上げられている。
Image by: LOUIS VUITTON
Image by: DRIES VAN NOTEN
Image by: 1017 ALYX 9SM
・MA-1の変化形
Image by: doublet
Image by: Dolce&Gabbana
Image by: Etudes
・コンバット&フィッシングベスト
Image by: PRADA
Image by: Etudes
Image by: 1017 ALYX 9SM
文化服装学院アパレルデザイン科卒業後、服飾専門学校で5年間の教員生活を経て2000年に渡仏。ニコラ・ジェスキエールのバレンシアガ(BALENCIAGA)→ アルベール・エルバスのランバン(LANVIN)→ ピーター・コッピングのニナ・リッチ(NINA RICCI)と、ジョブ型雇用で外資系老舗ブランドのデザイナーを歴任。2015年からはニューヨークに移住し、英国人スチュアート・ヴィヴァース率いる米ブランド、コーチ(COACH)では、ウィメンズウェアのシニア・デザインディレクターとして活躍。2019年に拠点を再びパリに戻し、2021年からパーソンズ・パリ(NYにあるパーソンズ美術大学のパリ校)の修士課程(MFA)でアソシエイト ディレクターを務めるほか、学士課程(BFA)では世界各国から集まった学生達にファッションデザインのノウハウを教えながら、インフルエンサーとしてnoteで執筆活動をするなど、自らもじわじわと進化中。
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