マックスマーラのクリエイティブ・ディレクター、イアン・グリフィス
Image by: FASHIONSNAP
「マックスマーラ(Max Mara)」のクリエイティブ・ディレクター、イアン・グリフィス(Ian Griffiths)が来日した。ポケットチーフを集めているというイアンは、この日もキャメルのジャケットから水玉模様のチーフをのぞかせたダンディな装い。表参道のフラッグシップストアで、自身のクリエイションやフィロソフィーについて語ってくれた。
【イアン・グリフィス】
イギリス生まれ。マンチェスターでアートやデザインを学び、ロンドンのロイヤル カレッジ オブ アート(RCA)の修士課程に進学。1987年にマックスマーラ主催の学生向けコンテストで優勝し、同社に入社。クリエイティブ・ディレクターに就任以来、世界各地から集結したデザインチームを統括し、「テディベアコート」など多くのアイコンを世に送り出している。
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―マックスマーラは、働く女性が共感できる“ユーティリティグラマー”を常に体現しています。デザインを手掛ける上で大切にしていることは?
イアン:私がチームと一緒にコレクションをデザインする際のプライオリティは、女性が気持ちよく過ごせる服を作ること。マックスマーラは先進的な女性をエンパワメントするというミッションを抱いており、クラシックでありながらコンサバではありません。彼女たちに必要なのは、朝それを着るといい気分になり、一日中何も気にせずまとえるような服です。「太って見える、老けて見える」なんて人目を気にしなくてはならなかったり、動きに制限のあったりする服は、あなたを元気づけてはくれないでしょう? マックスマーラは、それを着用すれば皆が“ベストな自分”になれるような服を目指しています。
―ショーではリアルな女性像にこだわっていますね。
イアン:マックスマーラのショーは世界中の女性たちにとっての鏡です。「これはあなたです、あなたはこうなれます」と、オーディエンスの一人ひとりの“ベストな姿”を見せているのです。私がいつも思うのは、現実とのつながりが失われるとそれはファンタジーになり、制限なしにドラマティックで大規模なショーに発展しかねないということ。しかしリアリティという領域の中では、観客がランウェイと自分自身と重ね合わせることができます。世界中の女性が共感できるようにモデルのキャスティングも多様で、それぞれが自分とのつながりを感じられるようにしています。
―35年以上マックスマーラと歩む中で、女性がファッションに求めるものも変化したと感じますか?
イアン:もちろん大きな変化がありました。1980年代に仕事をし始めた頃は“パワードレッシング”の第一世代。マックスマーラはそのドレスコードを生み出しました。女性たちが職場に着ていくパワフルな服はユニフォームのようでもありましたが、年月が経つにつれ、彼女たちはもっと多様な自己表現を服に求めるようになっていきました。私の仕事はクリエイティブであり続けることであり、より多くアイデアを提案することです。女性たちが社会からシリアスに扱ってもらえると同時に、自らをパワフルに感じられるような服を考え続けています。
―“働く女性”に関して言えば、日本はジェンダーギャップ指数のランキングが146か国中125位で、女性にとってはまだ不平等な環境が続いています。
イアン:ウーマン エンパワメントはまだまだ重要なメッセージで、マックスマーラは常にフェミニズムを大切にしています。ウィメン・イン・フィルムのスポンサーや「マックスマーラ・アートプライズ・フォー・ウィメン」を通して、才能ある女性たちを支援しています。まだ男女平等を達成できていないので、マックスマーラにメンズラインはありません。日本の女性たちの環境も改善していってほしいと願っています。
―女性たちが社会で活躍するためにどのようなことが必要でしょうか。
イアン:例えば、朝起きて身支度をしながら、“世界に自分をどう見せるか”というイメージを少しずつ固めていくところから全ては始まります。自分をパワフルに感じられる服をまとえば、小さな変化が起こります。それを積み重ねていけば少しずつ、一日一日、環境は良くなっていくでしょう。何かを達成すれば、周りのサークルがどんどん広がって、やがて大きな前進をかなえることができると思います。マックスマーラは日本でも世界中でも、女性たちがなりたい自分になれるようにサポートしていきますよ。
―マックスマーラの歴代デザイナーはあまり公の場に登場しないスタンスでしたが、あなたは違いますね。
イアン:ええ、ブランドの顔としてお話したいと思っています。ブランドのフィロソフィーを伝えていきたいので。世界中で苦しんでいる女性たちのことを考えるのはマックスマーラのDNAの一部であり、私自身の考えでもあります。
―最後に、今回の日本滞在で楽しみにされていることはありますか?
イアン:今日は展覧会に行く予定で、できることならショッピングも楽しみたいです。私はテキスタイルが大好き。モダンなテキスタイルやアンティークもコレクションとして購入したいと思っています。デザイナーとして目にするもの全てが私の作るものに反映されるので、若手のデザイナーたちにはいつも「目にするものに注意しなさい。いいものだけを見るんです。悪いものを見たら君のデザインに反映されてしまうからね」と伝えています。今回の来日で目にしたものも、これからのコレクションに活かされるかもしれないですね。
(聞き手:辻 富由子)
マックスマーラ:公式サイト
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