マニアが「ニューバランス(New Balance)」の魅力を深掘りする「マニアが深堀り! ニューバランス編」。ニューバランスが好きすぎるが故にYouTubeで「NB専門チャンネル」を開設し、1年365日ニューバランスを着用しているナナビット(nanabit)が全4回に渡ってニューバランスの基本情報からうんちくまで様々紹介します。第1回となる今回は、ニューバランスを知っていく上でまず覚えておくべき知識、品番の読み方と生産国について深掘りしていきます。
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永年日本で愛されている「ニューバランス」。1906年に英国移民のウィリアム・J・ライリー(William J. Reilly)が労働者の足の痛みを解消する為のインソール・矯正靴メーカーとしてアメリカのボストンで創業しました。1938年に地元ランニングチームの為に初のランニングシューズを開発。様々な足型に合わせられるようオーダーメイドで制作するなどそのクオリティの高さから、耐久性、軽さ、フィット感を併せ持った現代スニーカーの礎となりました。その後、1972年に大変革を迎えるのですが、その内容については第2回で紹介します。
難解な品番とアルファベットの意味
ニューバランスのスニーカーといえば、ナンバリングシステムと呼ばれる数字とアルファベットを組み合わせたモデル名が特徴です。1976年にデザイナーのテリー・ハックラー(Terry Heckler)によって「N」のサイドロゴが初めて搭載され、ナンバリングシステムも採用されるようになりました。アルファベットと数字を見ればそのシューズが何用に作られたのか、一目で分かるという画期的なシステムなのですが、意味を知らない人も多いのではないでしょうか?そこで、まずは品番の頭に付いているアルファベットから覚えておくべき代表例を紹介します。
品番の先頭にあるアルファベットはカテゴリーを示しています。代表的なのは下記の3種。
M:メンズ
W:ウィメンズorウォーキング
U:ユニセックス
その他の代表的なアルファベットがこちら。
R:ランニングorレブライトソール搭載(アジア製)
S:スポーツ
L:ライフスタイル
T:トレイル
CM:Mの廉価版(アジア製)
これらのアルファベットの組み合わせでカテゴリーが一目で分かるようになっているのです。例えばMR993というモデルはメンズランニングカテゴリーで、WS327はウィメンズスポーツカテゴリーということです。ニューバランスを知るための第一歩になりますので、まずはアルファベットを覚えることからスタートしてみてください。
そして、更に難解なのが数字から後ろの部分です。これは個体(カラーリング)を識別するアルファベットとなっております。数字まででそのシューズの属性と型を、その後ろの英表記でモデルのカラーを表します。
例として...
MR993GL(993のグレー):スタンダードなグレーはGYやGR、GL表記が多いです。
M1400SB(1400のスチールブルー):他のメーカーではあまり聞かない色の表現も特徴的。
990シリーズにはカラーリングアルファベットの後ろにも数字があり、それはバージョンを表しています。コラボモデルの場合は、カラーの部分がブランド表記になります。
※990のバージョン:1982年に発売された990ですが、数年毎にデザインを変更しています。2022年1月現在ではバージョン5(v5)まで展開しています。
M990BS2(990v2のブラック)
M990BS3(990v3のブラック)
M990VS4(990v4の赤タグ付き記念モデル)
M990EGN5(990v5のエンジニアードガーメンツコラボのネイビー)
このように、品番を見るとそのモデル、カラーリング、コラボ相手、バージョンが分かるというのがナンバリングシステムの特徴です。初めのうちは暗号の様に感じてしまうかもしれませんが、ニューバランス上級者になるとこの品番から容易にシューズを識別します。それでもごく稀に、理解に苦しむナンバリングが出現します。その時は「ニューバランスから謎解きの挑戦状が送られてきた!」と、私はむしろ楽しむようにしています。
同じでも違う?千差万別「製造国の違い」
ニューバランスを理解する上で次に覚えておきたいのが製造国について。ニューバランスのスニーカーを見ていて、「同じ品番なのに価格が全然違う」という謎に直面したことはありませんか?それには製造国が大きく関わっています。大きく分けて「アジア製」「USA製」「UK製」があるので、それぞれの特徴について説明していきたいと思います。
-アジア製-
最も販路が広いアジア製。価格帯的にも手に取りやすいモデルが多く、バリエーションやカテゴリーも豊富です。多くは中国やベトナム製ですが、プレミアムな日本製も含まれます。安価なことから、廉価版のように見られることが多いですが、侮ってはいけません。
代表モデル:CM996、ML574、ML2002Rなど
-USA製-
1980年代初頭、労働者コストを理由に多くのメーカーがアジアへと製造拠点を移しました。それでもなおニューバランスは、アメリカ国内でスポーツシューズを作り続けています。USA製はランニングカテゴリーの上級モデルを厳選された素材や、手作業の多い工程を熟練工によるクラフトマンシップで生み出しています。匠の技が宿った高品質シューズで、初めて足入れした時の感動は今でも覚えています。
代表モデル:M990シリーズ、M1300、M1400など
-UK製-
グローバル化によりヨーロッパに拠点を求めたニューバランスは、1982年にイングランドに工場を設立。これによって英国の伝統的な革靴作りのノウハウをスポーツシューズに落とし込むという方程式が完成しました。USA製同様、手作業の工程が多いですが、大きな違いは元々革靴に精通していた職人が手掛けているという点。革の伸びや特性を最大限に活かす裁断、縫製、吊り込みなどの工程を経たシューズは履きこむ毎に足に馴染むよう設計されており、USA製よりややキツめに作られていることが多いので人によってはサイズ感に戸惑う場面が出てくるかもしれません。
代表モデル:M576、M991、M1500など
USA製、UK製に高価な物が多いのは、より上質な素材、そして何と言っても熟練のクラフトマンシップという理由からです。ただ、価格が高ければ良いものなのか、安ければ悪いものなのかは人ぞれぞれ。足型や価値観によって異なるはずなので、自分に合うモデルを探す楽しみが生まれます。
履き心地の肝はミッドソール
「ニューバランスは履き心地が良い!」とよく聞くと思いますが、履き心地に直結しているのがこのミッドソールです。足と地面の間にあるクッション部分なのですが、今もなお進化を続けています。間違いなく今後もテクノロジーは進化し続けますが、履き心地は個人差があるので最新モデルが一番では無いというのがまた面白い所。例えば2019年に発売されたM990v5というモデルよりも、1994年に誕生したM1400が一番だという人もいます。その差は25年。つまり25年前に作られたミッドソールが、今の最新モデルに負けない履き心地を生んでいるという事になります。当時の開発技術に、ただただ脱帽するしかありません。
それでは代表的なミッドソールを見ていきましょう。
ENCAP(エンキャップ):クッション性のあるEVA素材(よく見るサンダルに多く使われる)を耐久性の高いPU素材(ポリウレタン)て包んだ構造。安定感に定評があり、多くのモデルに採用されているニューバランスといえばのミッドソールです。
C-CAP(シーキャップ):ENCAPと共に1985年から使用されているテクノロジー。EVA素材を圧縮形成し、クッション性や屈曲率を向上させたミッドソールです。PU素材と違い、加水分解しにくい特性を持っています。何と言っても日本の月星化成(現ムーンスター)主導で開発されたというのは日本人としても誇らしい所です。
ABZORB(アブゾーブ):列車の衝撃を吸収する素材から着想を得て開発され、ほぼ100%の衝撃吸収性と反発弾性を兼ね備えたテクノロジー。初搭載は1993年発売のM998です。ちなみに私はABZORB信者で、履いてみて履き心地が良いなと思うモデルの多くがABZORBを搭載しています。ABZORBであれば間違いないと個人的には思っています。
FUELCELL(フューエルセル):PU素材に窒素を加え反発弾性と軽量性を兼ね備えた素材。2022年1月現在でニューバランス最高の反発弾性という、異次元さを感じられるテクノロジーです。
いかがでしたでしょうか。理解するまでは呪文のように聞こえるかもしれません。この他にも数々の名ミッドソールがありますが、まずはこの4つを覚えておきましょう。気に入った履き心地のシューズにどのミッドソールが採用されているのかを確認するようになることで、ミッドソールでシューズを選ぶという楽しみも生まれると思います。
最大の壁、自分に合うのは一体......
ニューバランスでは直営店をはじめ、一部ファクトリーストア(シューフィッターのいるお店)で、足型を3Dスキャンで解析するサービスを行っています。もちろん無料で、計測はわずか5分で終了。自分の足のサイズ、横幅、甲の高さ、アーチの高さ、踵の幅の全てのデータを確認することができます。そして何より自分に合うシューズの提案までしてもらえるので、一度試してみることをおすすめします。
これまで毎日履いてきた靴。恐らく今後も一生履く靴。自分に合っている方が良いに決まっています。ニューバランスはそれを叶える可能性が高いメーカーだと思っています。
今回はこの辺で。また第2回でお会いしましょう。ありがとうございました。
>>第2回は500番台、1000番台、2000番台と、新デザインのシフトカテゴリーの主要品番について解説。
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