ルイ・ヴィトン 2022年秋冬コレクション
Image by: LOUIS VUITTON
ヴァージル・アブロー(Virgil Abloh)による「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」の物語の第8章、2022年秋冬メンズコレクションがパリで発表された。ヴァージルが生前に手掛けた最後のコレクションとなり、タイトルは「Louis Dreamhouse™」。子どもの純粋な目で世界を見るというヴァージルの哲学が反映され、幻想的なランウェイとなった。
■ヴァージルが想像するワンダーランドへ
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ヴァージルによるルイ・ヴィトンでの物語は、2018年6月のデビューショーを皮切りに約3年半、8シーズンにわたって続いた。その第1章から根底にあるのが、子どもの純粋な視点と感性を包括した思想「Boyhood Ideology®(少年時代のイデオロギー)」。既成概念をリセットし、子どもから大人への成長を描いてきた。
第8章となる今回の舞台は、パリ3区のカロー・デュ・トンプル。これまでの物語を集約したコレクションとして「Louis Dreamhouse™」のワンダーランドが作られた。
会場内は薄いブルーに彩られ、赤い屋根や玄関、ベッドルームといったバラバラになった家のオブジェ、そしてオーケストラが座る長いダイニングテーブルを設置。ショーの序盤は、階段とトランポリンを使ったヨアン・ブルジョアによるパフォーマンスが、時間を繰り返し巻き戻すようなシュールレアリスムの世界を演出した。
■天使の羽根を背中に
ファーストルックは、ヴァージルが毎シーズン独自のフォルムで提案してきたテーラードスーツ。張り出した肩と絞られたウエストのコントラストは、オリンピアンの超人的なシルエットを意識したという。ブラックやパープル、ホワイトといったワントーンルックをはじめ、ベルベッドやサテン、タペストリー調の花柄といった様々なテキスタイルで提案。メッシュ状の白いレースをレイヤードしたフェミニンなスタイルも登場した。
デニムはヴィンテージ加工やモノグラム・モチーフに加えて、日本の伝統的な「ボロ」の技術で8週間かけて作られたというジャケットとパンツも登場。
日本のボロの技術で制作されたルック
魔法使いのモチーフは、ヴァージルによるルイ・ヴィトンの第1章(2019年春夏)の着想源となったオズの魔法使いを想起させる。さらに動物や蜂、死神など、子どもの視点で描かれたグラフィックが遊び心を加えた。
また、ヴァージルによる最初のキャンペーン(2019年春夏)に用いたギュスターヴ・クールベによる1855年の作品「The Painter's Studio(画家のアトリエ)」と、初期のシュールレアリストであるジョルジョ・デ・キリコによる1914年の作品「Souvenir d’Italie」が、ジャカードなどの織り柄に用いられた。これらは、古いアイデアと新たなものは等しい価値を持つという、ヴァージルの「Maintainamorphosis®(メインテナモルフォーゼス)」の思考を反映させている。
The Painter's Studio(画家のアトリエ)
Souvenir d’Italie
終盤は清らかな白一色のスタイルに一転。キャップとベール、スタジャンとチュールスカート、レギンスとクリノリンといった、ニュートラルなスタイルにスポーツやクチュールの要素を取り入れるバランスは、ヴァージルならでは。繊細なレースの羽根をつけた3ルックは天使のような装いで、ロマンティシズムのムードを引き立てた。また「空を飛ぶ」というモチーフは、ヴァージルのコレクションにたびたび用いられてきた子どもの憧れを象徴している。
■歪んだり透けたり...超現実的なバッグ
バッグにもシュールレアリスムが反映され、ぼやけたモノグラム・モチーフや湾曲した形が特徴。またダミエ・パターンにPVC素材を組み合わせて、透過するバッグも登場した。
格闘技のプロテクションウェアに着想したというパッド入りのレザーバッグ、レザー製の花が飾られたブーケバッグ、タイダイプリントのクロコダイルバッグなど、メゾンのアイコンを継承しつつユニークな視点を取り入れている。
ペンキのバケツを模したバッグは、様々なカラーで展開。マルチカラーのクライミングホールド(壁に取り付ける突起物)が装飾されたクライミングバッグは、"天国へ登る"イメージでデザインされたという。
足元は、ヒール付きブーツやポーラーブーツ、そして新しいバスケットボールスニーカー「LV Trainer 2」が6色展開で発表された。
■光に包まれた夢物語のエンディング
フィナーレに登場したモデルたちは、ゆっくりと歩きながら空を仰ぎ、まるで何かを探しているかのよう。続いてヴァージルの夢物語を実現してきたデザインチームのスタッフらが登場し、互いに抱き合う姿も。スタンディングオベーションとなったエンディングでは、夕陽のような暖かな光がパフォーマーから観客まで全てを包み込んだ。
想像力の火花が永遠の炎へと変わる様を想い浮かべて──。光に導かれた先にある、可能性に照らされた新世界では、シュールレアル(超現実)が現実となり、ファンタジーが現実となって現れます。 夢を生きる様を想像して──。(コレクションノートより)
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