
イッセイ ミヤケ 2025年秋冬コレクションのルック
Image by: © ISSEY MIYAKE INC.
3月7日、「イッセイミヤケ(ISSEY MIYAKE)」は2025年秋冬コレクションをパリで発表した。素材とフォルムの革新を続ける同ブランドは、今回、服への視座を変化。オーストリア人アーティスト、エルヴィン・ヴルム(Erwin Wurm)の「見慣れたものを意外で独創的な方法で見せることで、新たな視点を生み出す」という哲学を軸に、ユーモアと実験精神に満ちたコレクションが展開された。
これまで安定してこなかったスタイリストだが、今回からは日本の山口翔太郎を起用。さらに、インスピレーションの源であるエルヴィン・ヴルム本人を招き、会場では彼の代表作『One Minute Sculptures』の派生版が披露された。開場前からパフォーマーたちは気だるそうに身体を動かしており、ショーの開始時には、あるパフォーマーは伸縮性のあるパンツの中にすっぽりと入り込んだ。まるで透明人間がパンツを履いているかのようなユーモラスな光景が広がった。
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Image by: © ISSEY MIYAKE INC.
このパフォーマンスは、コレクションの意図を視覚的に強調する絶妙な演出であった。音楽にも同じコンセプトが反映されており、クラシックの名曲、クロード・ドビュッシー(Claude Debussy)の『月の光』が電子音と融合し、聞き慣れた旋律が新しい響きを持っていた。
ファーストルックは、赤いドレスを転写したTシャツ、ロングスカート、パンツ。転写技術の精度が高いため、トロンプルイユの効果もリアルだ。テーラードジャケットは前後逆に着せられたり、パンツにインされたりと、着方のルールを取り払うかのようにスタイリング。素材にも驚きがあり、ざらついた質感を持つ和紙の生地がまるで石のように見え、パファーの上にはボリュームを抑えつけるようにトップスがレイヤードされていた。

Image by: ©Launchmetrics Spotlight

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錯視効果をもたらすプリーツ、靴の上から履かれるタイツ、衣服として首から下げられる紙袋、肩掛けバッグに変わるデニムジャケットなど、遊び心あふれるアイテムが次々と登場。

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一方で、緊張感のあるルックも印象的だった。無縫製だからこそ生まれる流動的な美しさを持つニットや、可塑性のある合成繊維とウール&アルパカ混紡糸をプレス加工し、パリッとした硬質な表情に仕上げたニットなど、技術力の高さも際立つ。














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足元には、カンペールとのコラボシューズもあった。一枚の布というコンセプトから生まれた、ミニマルで洗練されたデザインが目を引いた。

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これまでシリアスなトーンを貫いてきたディレクター・近藤悟史だが、今回はプレイフルで自由なアプローチに大胆に舵を切った。その決断は成功を収め、ブランドの新たな可能性を示したようだ。抽象と具象の狭間で揺らぐ不確かな美を探求しながらも、確かな方向性を掴んだ、実りの多いシーズンだった。
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