インサイド

名作映画の舞台となった街　シャネルはショーに先駆け、イネス＆ヴィノード（Inez & Vinoodh）が手掛けたティザーフィルムを公開。モデルのヴィヴィアン・ローナー（Vivienne Rohner）を主演に、フランス恋愛映画の金字塔として知られる「男と女」へオマージュを捧げた。また、ショーのオープニングではモノクロの短編映画を上映。ペネロペ・クルス（Penélope Cruz）とブラッド・ピット（Brad Pitt）が恋人役でカメオ出演するという大きなサプライズがあった。ペネロペはブランドの公式Youtubeで「私の一番お気に入りの映画『男と女』にオマージュを捧げることができて本当にラッキーだと感じた」と語っている。　「デヴィッド・ボウイのシルエットや、ガブリエル・シャネルの大切な友人だったアヌーク・エーメのような映画スターが、砂の上を歩く姿には人を惹きつけるものある。今回のコレクションは、そうした親しみのある人たちへのオマージュだ」とヴィルジニーは語る。「男と女」でアヌークが着ていたコートを彷彿とさせるシープスキンのサイハイブーツのほか、35mmフィルムと映画のチケットのプリントパターンなども取り入れ、シネマティックな世界観を盛り上げた。海辺の空を表現するパステルカラー　今回のコレクションは素材や色、ボリュームを重ね合わせた温かみのあるラインナップ。そしてドーヴィルという、ガブリエルの運命を決めた伝説の場所へのトリビュートにもなっている。ガブリエルは1912年にこの地に帽子店をオープンさせており、ファーストルックから登場したブローチで飾られた大きなつば広帽がそのヒストリーを想起させた。　会場には巨大なスクリーンが設置され、1920年代と70年代が交差する謎めいた雰囲気をまといながらモデルたちがウォーキング。ピンク、モーブ、オレンジ、ペールブルーなどの鮮やかな色合いやパステルカラーは、絶え間なく変化するドーヴィルの空の色に由来しているという。アンドロジナスなスタイリング　ガブリエルの私服から女性らしさを引用しつつも、そこに海沿いの穏やかな冬をイメージする男性らしさをミックスしているのが印象的。ブロードショルダーのピーコートや、ドレッシングガウン風のベルト付きロングコートといったアイテムでアンドロジナスな装いを作り上げている。また、フィッシャーマンセーターやセーラーカラーといった海辺での休暇にぴったりのデザインも登場。ドーヴィルのムードと映画の要素をミックスさせたラグジュアリーなワードローブが観客たちを魅了した。BLACKPINKのジェニーも来場　ペネロペ・クルスは「男と女」の監督であるクロード・ルルーシュ（Claude Lelouch）と共に来場。ブランドのアンバサダーであるBLACKPINKのジェニー（Jennie）は「全てのルックが、ドーヴィルの空の背景映像と共に流れていくのがとても美しかった」とショーの感想を語った。そのほか、ナオミ・キャンベル（Naomi Campbell）やヴァネッサ・パラディ（Vanessa Paradis）、日本からは「ベイビー・ブローカー」で知られる是枝裕和監督や女優の茅島みずきが駆けつけ、シャネルの新作披露を堪能した。

CHANEL

Fashion

海辺の街・ドーヴィルでの休暇を描く「シャネル」の美しき逃避行　2024年秋冬

シャネルが衣装を手掛けた名作映画　アーティスティックディレクターのヴィルジニー・ヴィアール（Virginie Viard）のインスピレーション源となったのは、1961年に公開された映画「去年マリエンバートで」。主演女優のデルフィーヌ・セイリグ（Delphine Seyrig）が劇中で着用したブラックドレスは、ガブリエル・シャネル（Gabrielle Chanel）によるもの。「ドレス・ア・ラ・マリエンバート（マリエンバートのドレス）」と呼ばれ、一世を風靡したという。　今回のショー会場は、パリ7区のグラン・パレ・エフェメール。楕円形にぐるりと一周するランウェイの内側のスペースに客席が設けられ、外側を囲う壁が巨大なスクリーンとなった。　ショーのオープニングでは、クリステン・スチュワート（Kristen Stewart）主演の短編映画を投影。シャネルが本店を構えるパリのカンボン通りなどで撮影されたモノクロ映画で、「去年マリエンバートで」をはじめとするヌーヴェルヴァーグ（1950年代末に始まったフランスにおける映画運動）の世界観を彷彿とさせる。　「私の周りにいる人の中で、クリステン・スチュワートこそがもっともガブリエル・シャネルに、少なくとも私のイメージに近い存在。今回のコレクションは、彼女そのものでもあります」とヴィルジニーは語る。モノトーンで魅せるシャネルの美学　映画の名シーンがスクリーンに映し出される中で登場したファーストルックは、モノクロ映画のスチルをコラージュしたプリントトップス。まるでスクリーンから飛び出てきたかのように、モデルたちは白と黒を基調としたルックで次々と現れた。全身を飾るスパンコールや水玉模様がモダンな雰囲気を醸し出す。ドレスも手袋も靴も、リボンで飾る　キーモチーフの一つとなったのはリボン。大ぶりなリボンがドレスの胸元やレザーのロンググローブなどにあしらわれ、フェミニンな味付けをプラス。また、フィッシュネットのソックスと組み合わせたリボン付きパンプスも目を引いた。 パステルやフェザーで華やかに　また、パステルカラーのツイードやフェザーをあしらったドレスなど、春夏シーズンらしいスタイルも登場。モデルの動きに合わせ、フェザーがふわりと揺れ、華やかさをアピールした。混ざり合ったスタイリング　装いにアクセントを加えていたのは、キュートなマイクロバッグの存在。そしてベルトやネックレスの重ね付けなど、デコラティブかつエレガントなアクセサリー使いも今シーズンの特徴だ。　「マリエンバート、ヌーヴェルヴァーグ、ガブリエル・シャネルが考える魅力、カール、夜、フェザー、スパンコール、ヒール。私は物事が混ざり合っているのが好きなのです」とヴィルジニーはその意図を説明する。　会場には、今回の主役であるクリステン・スチュワートのほか、ブランドのアンバサダーである女優の小松菜奈、ブラックピンク（BLACKPINK）のジェニー（JENNIE）、モナコ公国のシャルロット・カシラギ（Charlotte Casiraghi）など、豪華なゲストが来場。モダニティと軽やかさが融合したシャネルの新作を堪能した。

特集一覧タグ「短編映画」の記事一覧

特集一覧タグ「短編映画」の
記事一覧