インサイド

　ポップアップショップのオープンに先立ち、レセプションイベントが催された。エントランスでは、リミ フゥを象徴するピンクの光に照らされた過去のコレクションのアーカイヴピースが来場者を迎え、ブランドの世界へと引き込んでいく。　中に入ると、初公開となる2025年春夏コレクションのサンプルと2024年秋冬の商品が並び、手にとってリミ フゥを体感することができる。奥に進むと、スタッズの首輪をつけた山本耀司の愛犬「凛ちゃん」の像が設置されたフォトブースがあり、地下へと続く階段の壁には、山本里美自身がペイントした「Limi feu」の文字が躍る。　日本から駆けつけたSUGER HIGH、Johnny Hiramoto、Kayo Sakataは、ロックを中心としたDJセットを披露し、ゲストを沸かせた。会場には、スタイリストのジョー・マッケンナや、ジャーナリストのスージー・メンケスなど、多くの関係者やメディアが詰めかけた。　現在、リミ フゥはロンドンで好調だというが、イギリスとリミ フゥの親和性を見出すのは難しくない。「私が好きなミュージシャンはほとんどイギリス出身。この国の文化に、とてもリスペクトがあります」と、山本里美は今回のイベントの地をロンドンに選んだ理由のひとつを説明した。　中でも、パンクはリミ フゥにとって重要なカルチャーだ。近年、タータンチェックなどのブリティッシュチェック柄や安全ピンなどのパンクモチーフが、ブランドのクリエイションに取り入れられている。山本は、自身とパンクとの出会いをこう振り返る。「北九州に住んでいたとき、たまたまライブハウスに行ったらパンクのライブをやっていたんです。バンドのメンバーは髪を逆立て、ボロボロの服を着ていて、それまでパンクを知らなかった私はドカンと衝撃を受けました。まずは音楽より、彼らが着ているものに興味を持って調べてみると、パンクという音楽のジャンルで、服装に強いアイデンティティが宿っていることがわかって、それから私もパンクにのめりこんだんです。今でも大好きですね」。　2023年に、コラージュアーティストの河村康輔とコラボレーションした際も、きっかけはパンクミュージックだったとか。　モチーフやイメージだけではなく、ブランドを貫く姿勢としても、パンクはリミ フゥのフィロソフィに欠かせない。様々なルールや拘束に抗いながら、自分のアイデンティティを追求していくというスタンスだ。「わかりやすいパンクファッションをやりたくない。コピーするのは誰でもできる。私自身がパターンをひき、ドレーピングを試行錯誤しながら、タータンチェックをどう自分らしく解釈できるか、いつも挑戦しています。そういったものづくりの姿勢があるからこそ、私の服は誰かの心に響くのだと思います」。　山本が「着る服を通して、人々が自分自身を表現する手助けをしたい」と語るように、「リミ フゥ」では服に意図的な余白を持たせることで、着る人が自分の意思を服とともに表現することができる。ブランドのスローガンである「words won't do, just put it on LIMI feu（言葉じゃ伝わらない、ただリミ フゥを着てみて）」にも通じる。自分は何者なのかと、服で叫ぶのだ。　1999年に、リミ フゥの前身である「ワイズ ビス リミ（Y's bis LIMI）」を立ち上げてから、今年で25年を迎えた。山本はこれまでの歩みを振り返り、「なんども挫けそうになりましたが、今はどっぷりと、やれるところまでとことんやろうと思っています。諦めることを諦めたんです」と話す。父親譲りの反骨精神の炎は、今も静かに燃えているようだ。　ポップアップショップ「Savile Row 2」の会場では、ヨウジヤマモト社より、ジェンダーレスで若々しいデザインが特徴のブランド「Ground Y」も展開されている。これまでヨーロッパではパリのルーブル美術館のみで販売されており、ロンドンで展開されるのは今回が初。こちらもあわせて注目したい。

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