インサイド

双子のモデルが一瞬で入れ替わる　会場は白一色。未来的な電子音が響く。着古したネルシャツをまとった無骨な男がオープニングに登場し、カプセル状の部屋に入ると、閃光が瞬いた。そして次の瞬間、スリークなブラックの装いに変身して再びランウェイに現れる。BGMの「absolutely flawless」という歌詞ともリンクして、まさに非の打ちどころのない姿となっていた。　この驚きの早着替えは、双子モデルを起用して実現したもの。「無骨」を演じる一人目と「洗練」を演じる二人目が“変身マシーン”の中で入れ替わる仕掛けだ。まさに双子のデザイナー、ディーン・ケイティンとダン・ケイティン（Dean/Dan Caten）ならではのアイデア。その手品のような演出に、会場からは驚きの声が上がった。 昼から夜へのメタモルフォーゼ　双子のモデルを起用したショーといえば、「グッチ（GUCCI）」の2023年春夏コレクションが記憶に新しいが、今回のショーで描かれたのは、昼から夜への変身。ディースクエアードのあらゆるシグネチャースタイルコードが取り入れられていた。デイルックはウェアだけでなく肌までも泥や雪の汚れが表現され、随所に着古したような加工が施されている。デニムやスウェットシャツ、毛皮のアウターウェアなど、おなじみのアイテムで構成され、スエードのダッフルバッグやジャカードニットのゴシックベルトバッグがアクセントを添えた。　一方、夜のルックは男女ともシャープなテーラリングで、ラグジュアリーな素材が採用されている。男性は細身のタキシード、女性は肌見せも大胆なイヴニングドレスがメインで、カラーストーンのメタルジュエリーやアンクルストラップのハイヒールがセクシーな装いを引き立てた。正反対な変身に見せながらも元の要素とリンクさせたアレンジとなっており、「Born in Canada, Made in Italy」というブランドのDNAと二面性を巧みに表現している。デザイナーもフィナーレで大変身　最後にはデザイナーのダンがデニムで現れ、変身マシーンでリンダ・エヴァンジェリスタ（Linda Evangelista）風のドラァグクイーンに変身。鮮やかなオレンジの髪にコルセットドレス姿で現れた（もちろんこれも中でディーンに入れ替わった形）。そして双子モデル全員が登場し、昼と夜の装いを対比させていく。「Change, you can change」と歌うティアーズ・フォー・フィアーズ（Tears for Fears）のBGMが流れ、同じ見た目の人間がどれだけ変われるかをユーモアたっぷりに可視化してみせた。 　クワイエット ラグジュアリーが席巻する時代で、あえてエキセントリックな演出を続けるディースクエアード。先シーズンはイタリアを代表する元ポルノ俳優・現監督 ロッコ・シフレディ（Rocco Siffredi）をフィーチャーして話題をさらったが、今回のコレクションにも一卵性双生児というデザイナーのアイデンティティを生かした独自路線が会場を大いに沸かせた。

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