インサイド

　2019年春夏のデビューから「『ホウガ』の国の物語」をテーマに、ロマンティックなコレクションを提案してきたが、今季は一転。大音量のパンクロックではじまる演出が、ブランドの新章となるシーズンであることをショー開始前から暗示させる。　2023年春夏のテーマは「MY WILL,OUR WILL（私の意志、私たちの意思）」。世の中の「決まり・当たり前」という実は曖昧な概念に流されず、自分の意志で強く着こなす“ストリートなドレス”を打ち出した。　幼少期から少しずつ集めて、大切にしているという「鉱石や宝石」がインスピレーション源になったコレクションは、シルバーやライトグレー、ビビッドな“サファイアブルー”や“ルビーピンク”を組み合わせたカラーリングが新鮮だ。　テキスタイルには、石のゴツゴツ・ザラザラ感を表現した加工、凸凹感がユニークなシュリンクプリント、ドットレース刺繍などを施すことで、バリエーション豊かな質感を表現。これらの変化に併せて、デコルテを美しく見せるスクエアネックのドレス、ショート丈のパンツ、オーガンジーのアクセサリーによる品の良い肌見せで、「ホウガ」の世界観を拡張させた。　また、伸縮フリルを用いた人気シリーズからは、ハーネスや付け襟が登場。アイコンも素材やディテールの変化で、新たなイメージを持ったアイテムへと昇華させている。ハーネスは、ドラマティックなオーガンジーとシルバーの丸カンをミックスすることで、エレガントかつパンクなムードを両立。付け襟は、ハリのあるワッシャーナイロンで、独自のハイネックのシルエットへと落とし込んだ。さらにフリルやストラップで自由にアレンジできるバッグも登場するなど、ドレスを彩るアクセサリーが豊富に出揃った。　ショー中盤には、男性モデルも登場。ジェンダーレス、エイジレスに着られるブランドのイメージを発信した。　デザイナーの石田は、今季の変化について「自分の中にある“反抗心”をもっと表に出していきたいと思った。この感情や感覚は、最近湧き出たものだが、以前から物事に対する“違和感”や“疑問”がデザインのインスピレーション源になっている。『ホウガ』のコレクションには、皆にロマンティックで優しげなイメージを持っていただいているが、私自身は着る人のイメージが決まっている服よりも、自分だったらどう着ようかな？といった余白のある服が好き。もっと色々なテイストの方に楽しんでほしいと思ったことが、今回の表現に繋がった」と語った。

HOUGA

Fashion

パンクロックで表現する「ホウガ」の新章　強い意志で纏う“ストリートなドレス”

19世紀のレジャースポーツが着想源　テーマは「pleasant holiday（楽しい休日）」。ドレスを着て嗜むテニスやサイクリングなどの19世紀のレジャースポーツや、優雅な休暇からイメージを広げて、「自分自身を解放するためのレジャードレス」を提案した。 　アクティブに動いてもエレガントなシルエットを保つために用いられたのは、歩くとバネのように上下するプリーツ加工や、畝（うね）のように波打つパイピングのテクニックだ。さらにブランドが得意とするフリルを駆使することで、動きのあるデザインのドレスやセットアップを打ち出した。　生地をたっぷりと用いたボリューム感のあるドレスは、一見重たくなりがちだが、透け感のある素材を用いたり、素肌が覗くようなデザインにしたりすることで、軽やかな印象に仕上げている。特に、テクニックが光るのは、ストローハットやカゴバッグをイメージしたという、花柄のレース刺繍のキャミソールドレス。生地にはラメ糸が織り込まれており、動きに合わせてユニークな煌めきを楽しめる。 大人も子どもも「エイジレス」なコレクション　ヴィクトリア調のコルセットをソフトに表現したハーネス、付け襟、付け袖など、今季はアクセサリーも充実した。これらのアイテムには、都会の現代生活の中でも「何の制約もなく自由な装いを手軽に楽しんでほしい」という思いが込められている。　また「ホウガ」では、「エイジレス」をブランドコンセプトのひとつに掲げており、ショーでは、同じアイテムを使った大人用と子ども用のコーディネートを数通り提案。例えば、大人用のフリルスカートやポロシャツが、子ども用のドレスになるなど、時代や年齢を越えて長く着られるアイディアが盛り込まれている。 クリエイションの源は“らしさ”からの脱却　2019年春夏にブランドをスタートして、今季で7シーズン目。デザイナーの石田萌は、楽天ファッションウィークに初参加した理由について「ブランドが次のステップに進むタイミングだと感じて、今回の参加を決意した」とコメント。さらに「新型コロナの影響が出始める前から、大人らしさ、女らしさ、男らしさ、母親らしさなど、世間が抱く固定概念にずっと息苦しさを感じていた。ブランドのクリエイションの源は、そんな“らしさ”の打破。自分自身の世界に浸れるような服をコレクションを通して提案してきたい」と続けた。（文責：村上杏理）ファッションウィーク情報はこちら

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