インサイド

概念を壊すピュアなフォルム　ショーの序盤6体は、モノクロームの世界を描いた先シーズンを思い出させる、白と黒のドレス。今回は、ランウェイの照明と同じ鮮やかなグリーンをはじめ、ブルーやピンクが特徴的なヘッドピースとソックスによって差し込まれた。ファーストルックの柄は巨大なリボンとドット。丸く膨らんだボディには袖が無く、その代わりに胸と背中に大きな袖を模したパーツが突き出している。造形的なシルエットはギャルソンの代名詞のひとつでもあるが、今回は既存のパターンや服の概念を覆すような表現が見られた。 リボンと花、ヘッドピースの違和感　目立ったモチーフはリボンと花。巨大な一輪の花そのものをドレスに仕立てたルックや、立体的な刺繍も見られたが、ケミカルなビニールのようなテクスチャーの素材やトゲのようなモチーフなど、純粋な美しさとは異なる表現が多い。一方で後半の白いシフォンを刺繍に用いたドレスは、繭のようなフォルムが無垢な印象。　特徴的なヘッドピースを手掛けたのは、セットデザインなどを手掛けるアーティストのゲイリー・カード（Gary Card）。固められたヘアスタイルがフィギュアを連想させ、ウィッグと重ねて着用することでアンリアルな違和感を与えた。  サロモンのコラボシューズ　パンプスにもリボンのもチーフが用いられたほか、大きなバックルのショートブーツが登場。毎シーズン注目のスニーカーは今回、「サロモン（SALOMON）」とのコラボシューズが発表された。  今、不要と感じること　今回のコレクションノートには、最後に「荒々しい上流の石が流れに洗われて何気ない石ころになるように」という言葉が書かれていた。川久保玲は今、凝った生地や複雑な配色、身体を綺麗に見せるパターン、そして服の意図やコンセプトなどは不要と考えているという。壊して取り払うことによって、何が残るのか。半世紀以上にわたり真の強さを追い求め続けている一人のデザイナーの姿勢や心境が、よりピュアな方向に向かっているように感じさせた。

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