香水のつけ方といえば誰もが思い浮かべる、手首にひと吹きしてから軽く擦り合わせる方法。ですが、この香水のつけ方はプロから見るとちょっと“もったいない”そう。香水の特徴を知ることで、自分の好みやTPOに合った香りのまとい方に辿り着くことができます。今回はフレグランス・化粧品等の輸入販売を手掛けるブルーベル・ジャパンの香りのスペシャリスト「パルファム ソムリエ」に香りを最大限に楽しみながら、周りからも好印象を持ってもらえるとっておきの香水のつけ方やすれ違ったときに良い匂いを振りまく方法など香水のつけ方について詳しく教えてもらいました。
藤本茜
ブルーベル・ジャパンのパルファム ソムリエとして活躍する一方、大丸東京店のチーフとして後輩育成にも従事。幅広い知識を基に一人ひとりに寄り添った丁寧なアドバイスや接客は安心感がありファンも多い。
香水のつけ方で意識するべきはつける場所
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香水は賦香率(ふこうりつ/含まれる香料の割合)によって、「オーデコロン」「オードトワレ」「オードパルファム」「パルファム」に分けられます。香水は主にアルコールでできているため揮発性があり、下から上へと香りが立ちます。鼻に近い上半身につけると香りを強く感じるのは当然ですが、ウエストより下につけるとアルコールが揮発することで香りが立ち上り、さりげなくそして時間が経ってからほのかに香りを感じることができるのです。つけ方にルールはありませんが、どこにつけるかで香りの立ち方に変化が出るそうです。
藤本さん
例えば上から2番目の濃度のオードパルファムは、香水の中でもボリューム感がありしっかりと香ります。このオードパルファムをほんのりと香らせたいときや、あまり香りを主張させたくないシーンでは、ウエストラインから下につけると優しく香ります。またシトラスやフローラルの軽やかな香りやオードトワレは、上半身にプッシュしても爽やかに、そして周りの方にも嫌な印象を与えにくいです。対してウッド系やスパイス系といった印象的な香りは上半身につけると強く感じてしまいますので、鼻から遠い場所(ウエストより下)につけるのがおすすめです。
基本の香水のつけ方は清潔な素肌にまとう
香水のつけ方というと思い浮かぶ、手首につける方法も決して間違いではないそうです。ですが、身振りや手振りなどで上半身の中でも特に動きが伴うパーツゆえに、香りが強く出やすいということを理解しておくと良いでしょう。上半身につけるのであれば首の後ろやうなじ、肩がおすすめです。
─ 香りの移し方 ─
Video by FASHIONSNAP
うなじや耳の裏につけるときは直接スプレーするのではなく、一度手首にとってから軽く抑えて、香りを移すイメージでつけます。このとき擦り合わせると熱が加わり香りが損なわれる可能性があるので、軽く抑える程度に。
藤本さん
また空間にプッシュして浴びるようにまとう方法も映画のワンシーンのようで憧れたりもしますよね。しかしこのつけ方では高い位置に降りかかるため、揮発によって自分よりも高いところに香りが立ち昇ってしまうため、もったいないのだとか。藤本さん曰く、香水のつけ方の基本は素肌につけること。体温によって温められ、香りがきれいに立ちます。
藤本さん
身近な人がつけている香りと同じものをまとったとしてもつける人の肌によって香りの立ち方はそれぞれ。お揃いでも“お揃いではない”のです。肌と調和することで、その人独自の香りになります。店頭でも直接肌につけることを前提におすすめしています。空間にスプレーしたり、髪の毛や洋服に吹きかけたりするのはもったいない。ときに洋服はダメージになってしまうこともありますので、洋服に着替える前に素肌にプッシュすると良いでしょう。
─ 髪の毛につける際のコツ ─
髪の毛に香りをつけたいときは、手に取って温めてから揉み込むように塗布すると香りが飛ぶのを少しだけ抑えることができます。
藤本さん
デオドラントをつけたい場所に香水はつけない
加えて改めて認識しておきたいのは、香水とデオドラントは別物ということ。身だしなみとして考えるほど、汗で匂いが気になる脇の下などに香水をつけたくなると思いますが、汗と混ざると綺麗に香りません。汗をかきやすい脇や肘、膝裏などは避けるのがベターです。例えば朝の外出前、シャワーの後の清潔な肌は香水をまとう絶好のタイミングです。
香りを長持ちさせる方法
香水にはさまざまな香料が含まれ、揮発する速度が異なるため、トップ、ミドル、ラストと香りの移ろいを楽しむことができます。その時々の主役になる香りに思いを馳せるのも良いでしょう。
香水をつける時は、一般的にしっとりとした肌の方がトップが柔らかに香り、香りが持続すると言われています。乾燥しやすい冬場は特に保湿してから香水をつけることで肌への密着度が高まります。
藤本さん
気候が乾燥しているヨーロッパは香りが立ちにくいのに対して、湿度の高い日本は香りを強く感じやすい環境といえます。また気分もありますが湿気が多く香りが立ちやすい夏場には軽やかなものを、乾燥によって香りが立ちにくい冬は重みのある香りをと使い分けるのも良いでしょう。
つける場所のおすすめはウエストラインと肩
性別によって香水をつける場所に決まりはないものの、季節や服装に合わせてつける位置を変えると香りをさらに楽しむことができます。女性がスカートを履く日は足元に、男性がジャケットを羽織るときは肩につけると、体を動かしたときや着脱する際にふんわりと良い香りが。
ウエストにつける位置
肩につける位置
また肌の露出が増えたり、薄着が増えたりする夏は露出している部分に香水をつけると香りが強く出やすいため、ウエストラインがおすすめ。香りがほんのりと立ち上がります。冬場はウエストラインに加えて膝上や足首といった足元につけると、重ね着をした洋服の内側に香りの鎧をまとうかのように下から上へとさりげなく香らせることができます。
膝につける場合の位置
内腿につけるのもおすすめ
藤本さん
つける量の目安は1ヵ所1プッシュを2ヵ所程度です。手首につけたときに香りが強いと思うようであればウエストラインや足元へと位置を下げてみましょう。つける位置を工夫するのも香りの強弱を調整するための一つの手です。
すれ違いざまに香らせるにはどこにつけたらいい?
香りは空気の動きによって周りの人へと届きます。例えば歩いている時にふと立ち止まると、瞬時にいい香りが立つのです。
藤本さん
足首に香水をつけて意味があるのかしら...と思う方もいるかもしれません。実は立ち止まった時や椅子に座るときなど、動作が伴うと瞬発的に香りが漂ってハッとするのです。すれ違いざまに空気の動きでふわっと香りが届くと想定するとウエストや肩につけると良いかも知れません。
食事をする予定でもつけたい場合は?
香水はオードパルファムだと5時間程度、オードトワレだと3時間程度香りが持続します。1日持続するものではないため、例えば朝お出かけ前につけたら、夕方につけ直すのもおすすめだと藤本さんは話します。またつけたてはしっかりと香るため、高い位置ではなくウエストや足元にまとうと、優しく香らせることができます。
藤本さん
例えば仕事終わりのお食事に香水をつけて行きたいという場合は、香水の特性(揮発性)を利用して予定の2時間ほど前につけることでラストノートを穏やかに楽しむことができますよ。また食事をする際、テーブルの上での動作が生じます。手首につけると、グラスや食器を使うたびに香り、強すぎる可能性があります。なので、足首につけると香水の香りを楽しみながら食事の妨げにもならないでしょう。
まとめ
あなたにとって香水をつけたときに一番心地よい場所を探して、いろいろと試してみましょう。1ヶ所につき1プッシュ。香りの強さを調整するためには、体の中の2〜3か所に分けてつけるのも良いでしょう。つけ方には正解がないからこそ、その日の気分で元気が欲しいときは自分がより香りを楽しめる上半身につけるのもありです。ぜひ自分が一番心地よい場所を見つけてみてください。
(写真:フォトグラファー 村松正博 文:ライター 米山奈津美 編集:鴨下奈留)
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