Image by: FASHIONSNAP
"日本発のラグジュアリーブランド"へ
ADVERTISING
―実際に自身のブランドを立ち上げようと動き出したきっかけやタイミングは?
もともと自分のブランドを立ち上げようと考えていたので、「ジル サンダー」にいた最後の1年は仕事を終えたあとは、ひたすら事業計画書を作っていました。繊維業界のデータを引っ張り出してきたり、結構事細かにまとめたんです。その時、日本発のラグジュアリーブランドの確立という目標を設定しました。この事業計画書が完成して、もともと30歳になったら自分のブランドを始めようとは思っていたので、そのタイミングで帰国しました。
―売上やコスト計算などすごく丁寧にまとめられていますね。「日本発のラグジュアリーブランドの確立」にはどういった想いが込められているんですか?
海外のメゾンブランドの多くが日本の生地や技術を使っていることに気がつきました。それでなぜ日本からはいわゆる「ラグジュアリーブランド」が生まれないんだろう、できるはずだって思ったんです。メゾンブランドには、歴史や伝統から来るオーラがあると思うんですが、長い目でみた時、日本のブランドでもそのオーラを纏える可能性はある。僕は日本にもたくさん良いものがあることを知っていて、イタリアでもすごくいいものを見てきたので、それを組み合わせて"日本発のラグジュアリーブランド"を目指すことは、日本人デザイナーとして自分が取り組むべき課題だ、と考えたんです。
―村田さんの言うラグジュアリーブランドとはどういうものでしょうか?
ブランドとしてのラグジュアリーはなんなんだろうと考えた時、その中の一つの要素としてパーソナルな繋がりがあることだと思っています。例えばデザイナーから直接商品の説明があって、アイテムの背景やブランドの経緯も知れて服を買う、そのパーソナルなつながりを生むプロセスそのものが特別な体験になるのではないかなと。
―実際にデザインをするときにこだわっていることは?
僕はハンガーに掛かっているシャツをデザインするのではなく、着た時の女性の姿をデザインするように心がけています。常に自分たちのブランドの女性像があって、その女性像を表現するためには着た時にどういう風に見えるべきか、その人の生活をどう美しくすべきか、というのを考えてデザインしています。
―ブランドの女性像とは?
いくつか理想の女性像があるんですが、例えば「紅の豚」のマダム・ジーナとか。ジル サンダー時代に生産部門を束ねていたバレンティナやルーシーさんもそうですね。彼女たちのブランドとしてファッションを提案していきたいです。
―具体的にデザインにはどう落とし込んでいるんですか?
例えば、ドレスを含めたほとんどのアイテムにポケットを付けているんですが、それは手ぶらでポケットに手を入れている立ち姿を、力が抜けていてエレガントだなと思うからで。男性として客観的な視点でデザインしているからこそ、出せる色気みたいな部分もあると思うので、そこは大事にしていきたいんです。
HARUNOBUMURATA 2021年春夏コレクション
Image by: HARUNOBUMURATA
【全ルック】HARUNOBUMURATA 2021年春夏コレクション
―村田さんにとってのエレガントとは?
余裕があること、ですかね。もちろん実務的な忙しさは、誰しもに生じると思うんですが、その中でいかに余裕を持って焦らずに自分の価値観で生活できるか、が品の良さみたいなものに繋がっている気がします。急がずゆったりとした仕草や姿勢がエレガントに映る、それが色気にも繋がるから、自然と気持ちに余裕が生まれるようなデザインを重要視しています。
クリエイションと一続きになるビジネス
―ビジネスとクリエイティブのバランスについてどう考えていますか?
ビジネスもブランドの一部だと考えています。ものを作ること自体が目的の作家であればビジネスの部分は考えなくて良いんですけど、僕たちは服ではなく、それを着た女性の姿をデザインしているから、服を作ったらそれを届ける必要がある。その伝え方もブランドの一要素と考えたら、別にクリエイションとビジネスを分ける必要はなくて一続きになっているものだと思うんです。物を作ることが目的じゃなくて、作った物を着ていただいて、その人の生活を美しくしていくことが目的なんです。そこがブランドの最終的なゴールなので。
―いまの日本のファッション市場について、率直にどう思っていますか?
作り手と買い手の間に距離があるクラシックなビジネスモデルは見直していく必要があると思います。今後は個人的な繋がりを作っていくことが必要で、それができれば小さいブランドでもまだまだチャンスはあるんじゃないかと考えています。
―改めて海外進出していくとなったらやはりミラノですか?
ミラノですね。もともと日本で作った良いものを海外にも出していく、というのが最初の目的でもあったので、コロナが落ち着いていれば来シーズンに行きたいと思っています。
―今後「ハルノブムラタ」をどんなブランドにしていきたいですか?
ブランド名を自分の名前にしているのは、対ブランドではなく対人だと思って欲しいからなんです。イメージは、ヨーロッパ帰りのパティシエ。あの人が作っているなら食べてみたい、と思ってもらえるようになりたい。そのために、パーソナルなつながりを構築できるような場所も作っていけたらと考えています。服やブランドの背景もしっかり僕の口から説明できて、新しいつながりが生まれる、そこまでの体験も全部含めて「ハルノブムラタ」ですよって伝えていきたいです。
村田晴信
エスモード東京校を卒業後、ステディスタディでPRアシスタントを経験した後に渡伊。マランゴーニ学院を卒業し、「ジョン リッチモンド」のデザイナーを経て、「ジル・サンダー(JIL SANDER)」のデザインチームでコレクションを制作した。2018年8月の帰国後にハルノブムラタを設立。2019年秋冬シーズンにミラノファッションウィークでデビューコレクションを披露した。
(聞き手:渡部笑美香)
ADVERTISING
PAST ARTICLES
【インタビュー・対談】の過去記事
RELATED ARTICLE
関連記事
READ ALSO
あわせて読みたい
RANKING TOP 10
アクセスランキング
sacai Men's 2025 SS & Women's 2025 Spring Collection
【2024年下半期占い】12星座別「日曜日22時占い」特別編