渋谷パルコ4階 グリモワール
Image by: FASHIONSNAP
「ロアートヴィンテージ(LOART VINTAGE)」の路面店出店に密着した「人と服が出会う時」。準備・買い付け・オープンの全3回にわたりヴィンテージショップができるまでの様子をお届けしました。祝オープン!と幕を閉じたはずでしたが、実はそのすぐ後に「渋谷パルコ」からオープニング出店のお誘いが。「渋谷スクランブルスクエア」など大型の商業施設が開業し多くの企業が新店をオープンしていますが、商業施設への出店はどのように進んでいくのか。今回は、セレクトヴィンテージショップ「グリモワール(GRIMOIRE)」が、新生渋谷パルコにオープンするまでの約4ヶ月に密着しました。
株式会社グリモワールの元にパルコから出店の誘いが来たのは2018年5月ごろ。新生渋谷パルコオープンの約1年半前です。路面店のロアートヴィンテージがオープンしてすぐだったため、代表取締役の十倍直昭さんはとても悩んだそう。ただ、商業施設への出店依頼が来るのはごく限られたショップだけ、それも全面リニューアルで注目されている渋谷パルコ。施設への来客者の熱量を考え、熟慮の末に出店を決意したそうです。ただグリモワールのリソースは限られているため、従業員数や予算などを考慮し、ロアートヴィンテージをギャラリースペースとして展開。また、同じ渋谷エリアで運営していたグリモワール3店舗のうち2店舗を10月に閉店。パルコ店と本店の2店舗に絞ったところにかなりの決断だったことをうかがわせます。
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今回、密着したのは「仮契約→過去3年間の業績データなどの提出からの審査→出店場所を決める→図面の提出→パルコ側の図面チェック→審査が通り本契約」という流れを終え、渋谷パルコへの出店が発表されたあとの7月からです。
2019年7月23日(オープンまで残り約4ヶ月)
7月23日、十倍さんが初めて渋谷パルコに足を踏み入れました。この時期は、A工事とB工事が終わり、C工事が始まるタイミング。ちなみに、施設の工事は以下の通りA・B・Cの3段階に分かれています。
A工事:ビル本体の工事。オーナーが工事費を負担し、オーナー指定の業者が施工します。共用の施設や通路、ガス・給排水メーターなどビルの構造に関わる箇所の工事を主に行います。B工事:A工事の追加・変更工事。店子側が工事費を負担し、オーナー指定の業者が施工します。空調設備や給排水設備、分電盤などA工事で付けられた設備を店子の希望で変更が可能です。C工事:店舗の内装工事。電気配線工事、電話やインターネットの開設、什器の制作と設置などを行います。店子側で工事費を負担し、店子の希望の業者に依頼できます。
ビルや施設ごとに詳細は変わりますが、工事の進み方はざっくりと上記の感じ。店子側が関わるのはB工事からで、提出した図面に沿って作業が進んでいきます。
これまで阪急うめだ本店などでのポップアップショップは経験していますが、商業施設での常設店は初めてなので、渋谷パルコの担当者と相談しながら図面の制作を進めたそうです。「経験のないことは、プロに相談しながら決めることも大事」とのこと。ショップのイメージは、1920年代のヨーロッパのブティック。これまでヴィンテージに興味がなかった人にも綺麗で大人が着られるヴィンテージウェアを提案したいという想いから「Classic Mode」をテーマに、ショップ作りを進めていきます。
グリモワールが出店するのは「FASHION APARTMENT」をテーマに、東京のトレンドレディースファッションを提案する4階フロアで、西側のエスカレーターを上がってすぐ。「ユー バイ スピック&スパン(U by SPICK&SPAN)」「キイロ(KIIRO)」「フレイ アイディー(FRAY I.D)」などが周りに店舗を構えます。今回出店するにあたり、十倍さんが望んでいた条件は「角の位置であること」。セレクトショップなど新品の服を扱うショップが多い中で、ヴィンテージショップの世界観を崩さずに伝えることができるのは店舗に挟まれた場所ではなく、独立した角の位置だという考えからです。決まったのは通路に挟まれた場所。ここで十倍さんが思い描く理想の店作りを進めていきます。
前回オープンした路面店とは違い、作業の際に施設側への申請が必要で、作業時間が限られていたり、搬入の回数制限や、入館できない時期があるためスケジュールの調整が重要に。7月23日は作業ではなく進行状況の確認のために入館。商業施設へ初出店ということで、入念にチェックしていきます。
C工事の初期段階では、ショーウィンドウや試着室、バックルームなど図面の大枠のみが完成している状態。工事の進捗具合を確認しながら、これまで図面でしか見られなかった店舗に足を運ぶことで、予定している什器を設置したときに動線や接客スペースが充分に取れるかなどを確かめます。グリモワールはラックや鏡などを含む全ての什器をヴィンテージで揃えるため、予定しているものから変更する場合、新たな什器を探さなければなりません。店舗のあらゆる箇所を計測しながら、ラックの数や適切な大きさはどのくらいなのか、綿密に確認していきます。
新店舗の面積は約15坪。狭すぎるとポップアップ感が出てしまい、広すぎると商材が間に合わず持て余してしまう可能性があるとのこと。提案したい世界観に合う広さを把握しておくことが大事です。
ちなみに工事中の入館には、長袖長ズボンとヘルメットの着用が義務付けられています。ヘルメットは施工業者から借りることができました。
7月26日(オープンまで残り約4ヶ月)
この日は最高気温33度の猛暑日でしたが、規定に従って長袖長ズボンで館内へ。暑い中で黙々と作業をしている工事業者の方々には頭が下がります。徐々に進行するパルコ全体の工事に加え、他店舗の作業も進行していました。
初めての入館から3日後の7月26日は、前回計測して設置するのに問題ないと判断した大きな什器を運び込みます。小さい什器など細かいものは後日に。配線工事などが引き続き行われており、工事の最終仕上げに店内をクリーニングをするため運び込んだ什器は共有通路に置いておきます。クリーニングが終われば業者の人が図面通りに運び込んだ什器を設置してくれるのだそう。
8月から10月は施設の行政チェックなどで入館ができない時期。この間に買い付けやヴィジュアル撮影など店舗以外でできる作業を進めていきます。
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