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全てのラベルを剥ぎ落とす“アンチファッション” テキサス発「グラス サイプレス」が提案するニュートラルな服

2024年秋冬コレクション

IMAGE by: グラス サイプレス

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全てのラベルを剥ぎ落とす“アンチファッション” テキサス発「グラス サイプレス」が提案するニュートラルな服

2024年秋冬コレクション

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 アメリカ・テキサス州ヒューストンを拠点に2016年にデビューし、2024年春夏シーズンに日本に上陸したメンズウェアブランド「グラス サイプレス(Glass Cypress)」。パールや刺繍といった手仕事による繊細なディテールが特徴で、現在は「エディション(EDITION)」をはじめ、「ユナイテッドアローズ&サンズ(UNITED ARROWS & SONS)」や「ヌビアン(NUBIAN)」などで取り扱っている。

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 ブランドを手掛けるのは、クリエイティブディレクターを務める弟のサバー・アメド(Saber Ahmed)と、ビジネス面やブランドの運営を担うサミー・アメド(Samee Ahmed)兄弟。サバーは、世界で最も長い歴史を持つ美術品オークション「クリスティーズ(Christie's)」に作品を出品するアーティストでもある。今年9月、日本初のポップアップの開催に合わせて来日したサバーへの取材を通して、日本ではまだあまり知られていないブランドの実態に迫る。

クリエイティブディレクターのサバー・アメド(Saber Ahmed)

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金融、医学、そしてファッションとアートの道へ

── まずは、ブランドを立ち上げた背景を教えてください。

 私も兄も子どもの頃から服が好きで、私はファッションセンスの良い兄にいつも競争心を抱いていました。競い合うように、ファッションで自分を表現する方法を探求していたので、共に服を作ることを決めたのも自然な成り行きでした。独学でファッションを勉強し、大学在学中にグラス サイプレスを立ち上げました。

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── ブランドを立ち上げるまでのキャリアは?

 私はヒューストン大学で金融を学んでいて、兄と共に医学部を目指していました。医学部は面接まで受けていましたが、同じ時期にブランドも軌道に乗り始めたのでファッションの道に専念することに決めたんです。

── 日本のファッションもお好きだと聞きました。

 最も好きなデザイナーは「ツモリチサト(TSUMORI CHISATO)」の創業者 津森千里さんです。ファッションとは、「立場と視点を持つこと」だと考えているのですが、日本の有名デザイナーたちは、クリエイションを通じて自身や社会の既成概念に立ち向かう挑戦をしていると感じます。中でも津森さんのクリエイションには、伝統に逆らって新しい何かを生み出そうとする姿勢をそのテクスチャーやシルエットから強く感じます。それはまさに私たちがやりたいことにも通じており、大きな影響を受けました。

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様々なラベルを削ぎ落とす“ニュートラル”な提案

── では、グラス サイプレスが目指しているものは?

 グラス サイプレスのヴィジョンは、構造やアイデンティティを取り払うことで、精神の可能性、つまり「自由の本質」を明らかにすることを目指しています。この「自由」とは、何にも縛られない「無」の状態とも言い換えられると考えています。自分を定義づけるものが「何もない状態」というのは怖いものです。そういった恐怖から身を守るために、我々は職業や国籍といった様々なフィルターで無意識に自分を定義付けしています。しかし、それを取り除いてこそ、初めて真に自分自身に向き合ったものづくりができるのではないでしょうか。

 権威に対抗するかたちで、パンクというカルチャーを育てたヴィヴィアン・ウエストウッド(Vivienne Westwood)のように、従来のものづくりは、既存のものに対するカウンターの側面がありました。でも私は、前提にあるものに依存しない「あるがまま」であることが真の自由でニュートラルなものであり、「無からの創造(Creating from Nothingness)」こそが、真に自由で新しいものだと考えているのです。

── 「無からの創造」という境地に至った経緯は?

 数ヶ月間にわたる瞑想の日々の中で、様々な文献を読み、「心のあらゆる動き」に極度に集中しました。すると次第に、「私」という自己のアイデンティティの存在感が薄れていったんです。そして、自分の職業や性別、さらには人間であるというアイデンティティすらも取り払われました。その瞬間、真に「あるがまま」である状態が「無」であると理解したんです。

── アーティストとしても活動されています。ファッションとアートの表現の違いは?

 ファッションは、最終的に「着用者が買って着用すること」を念頭におく必要がある、“デザイナーと着用者の2人によって作られる制約のあるアート”だと思います。一方でアートでは心から自由な表現を模索しています。それぞれ違った面白さがありますね。

── グラス サイプレスはメンズウェアブランドですが、性別を超えたニュートラルな提案を目指している?

 色やシルエット、ファブリックをはじめ、ジェンダーに関連するものを含む国籍や信条といった社会の非言語的なラベルから自身を引き離す「あらゆるアイデンティフィケーション(同一性の証明)の欠如」は、何かの対象物を必要としない、ファッション領域におけるアンチ(対抗)の新たなアプローチだと考えています。

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── パールや刺繍などがあしらわれたメンズウェアは、近年のムードともマッチしていますね。

 グラス サイプレスでは、「アンチ」的な視点を、プリミティブなデザインと手刺繍、パッチワーク、編み物、天然染めといったクラフトマンシップと掛け合わせることで服として描き出しています。

 近年、メンズファッションにおいてアンドロジナス*な要素が重要視される傾向が見られますが、これらは、昨今の世界におけるインクルーシビティ(包括性)や表現主義の重要性を示しすものでしょう。グラス サイプレスでは、セレブリティファッションシーンが変化する以前から、メンズウェアとしてのクロップドシルエットやカラフルな手刺繍、パール、ビーズといったスタイルを提唱し続けていました。

アンドロジナス:ステレオタイプな「男らしさ」「女らしさ」に当てはまらない、両方の性質が混ざり合っている、またはそのどちらの性質も持たないこと。

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「チャリティではない」必然性が生んだバングラデシュの雇用

── バングラデシュの伝統技法をあしらったアイテムはブランドのクリエイションのコアのひとつです。バングラデシュで生産をはじめた背景は?

 私は元々アーティストとしても活動していますが、ファッションとアートそれぞれの表現で大切にしているのは、複数の素材や技法を一つの作品に取り入れるというスタイルです。でも、個人で1枚の作品を描く絵画と違い、量産が求められるファッションでその要望を受け入れてくれる工場は少なく、ブランドを立ち上げた当初生産を行っていたイタリアでは実現できない表現が多かったんです。

 そうして生産拠点の見直しを検討していた2020年に、両親から「ナクシ(Nakshi)」という技法を紹介されました。これは、私たちの祖先の出身地であるバングラディシュに伝わる伝統的な刺繍で、女性たちは毛布やシーツに手刺繍を施して物語を伝えていたそうです。ナクシを通じて、バングラディシュには他にも天然染色やビーズ刺繍など、様々な伝統技法が伝わることを知りました。手仕事では、工業製品のような完璧に揃ったものは生まれません。しかし、そこにある人の手の温もりに感銘を受け、その不完全さに「何もない」状態の人間の本来の不完全さ通じる魅力を感じました。

手刺繍があしらわれたトートバッグ(エディション別注)

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 バングラデシュでも、もともと複数の技法を組み合わせることはあまりになかったそうなので、はじめは無理だと笑われましたが、私のヴィジョンを説明していくうちに現地の職人たちからも共感が得られるようになりました。コロナ禍でヨーロッパとのやりとりが難しくなった事を受けて、本格的に生産をバングラディシュに切り替え、2021年にバングラデシュに自社工場を立ち上げました。工場には、特殊な染色や手刺繍、日光乾燥、処理等の機能を備えており、製造プロセスは全て社内で完結しています。

 現在も職人の手によって丁寧にハンドメイドされているグラス サイプレスのアイテムは、無意識下でのヒューマンエラーによって一点一点表情が異なります。そうした不完全さは「非対称の価値(ASYMMETRY IS INVALUABLE)」と定義し、ブランド自体のデザインフィロソフィーにも取り入れています。

Imaged by グラス サイプレス

── バングラデシュの自社工場は地域に雇用を生み、コミュニティを形成していますね。

 工場を作った3年前は、バングラデシュにファッション産業国というイメージはあまりなかったと思いますが、自社工場の立ち上げによって結果的に地域に約200人の女性の雇用を生み出すことができました。

── 世界最大級のNGOであるBRAC(バングラデシュ復興支援委員会)と提携し、売上の一部を組織に寄付するという慈善活動を通して、現地の方々とのパートナーシップを持っています。慈善活動も活動の目的にしていたのでしょうか?

 慈善活動は、クリエイションの副産物であるべきで、現在過小評価されている人々の偉大さを見出し、光を当て、利益を出させることが最良な慈善活動の形だと考えています。私たちの場合も、彼らの技術を武器にデザインを洗練させるためにタッグを組んでいます。世界中の工場を調査した中で、私たちが求めるものを唯一提供できたのが彼らだっただけなのです。

 「慈善活動」というと、どうしても「施しを与える」といった「見下している」ような視線を感じますがそうではなく、バングラデシュでしかグラス サイプレスのものづくりができないというのが最も大切なポイントです。彼らのクリエイションを私たちは心から尊敬していて、結果としてそれがバングラディシュの経済活性化につながっているんだと思います。

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── 「ファッションブランドが果たすべき責任」についてどう考えていますか?

 デザイナーはそもそも、「人助けをすること」を目的にしてはいけないと思っています。唯一持つべきなのは、「デザイナーである以前に1人の人間である」という責任です。人間は、生まれた時から生活環境や文化の中でアイデンティティを“外的に”形成されていると思います。そういった“思い込み”を全て取り払うことで、全ての物事や他人に対して公正な目線で向き合うことができれば、外的要因によって過小評価されているものの価値に気が付くでしょう。それは結果的になんらかの形で誰かを助けることにつながっていくのではないでしょうか。

タグにも手刺繍が施されている。

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テキサス・ヒューストンから世界へ

── グラス サイプレスがアメリカ国内で人気を集めている理由をどのように分析していますか?

 「オーセンティックな服」という意味ではなくて、感覚として誰もが持っているピュアさや「普遍性」がデザインに現れているからこそ、国籍や性別を超えて支持していただけるのではないでしょうか。

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── グラス サイプレスは、テキサス州のヒューストンを拠点にしています。ファッションのイメージは強くありませんが、この土地にどのような可能性を感じていますか?

 ニューヨーク、LA、マイアミといった都市と比較すると、ヒューストンはまだ世界的なファッションシティとしては認識されていないと思います。しかし、近年ファッション産業が飛躍的に成長を遂げています。新しいアイデアを自然に受け入れる自由な風潮があり、ファッション産業が拡大するための高いポテンシャルを秘めているんです。ブランドとしては、ブランドを拡大する拠点となったヒューストンの街自体の成長も後押ししていきたい。同時に、ヒューストンのブランドとして、ヒューストンと共に成長していきたいです。

── 今後の展望を教えてください。

 これからもこの姿勢を貫いてクリエイションを続けること。近いうちにウィメンズラインも立ち上げる予定です。ゆくゆくは、ヒューストンを飛び出した世界的な都市、例えば東京の表参道にも出店することを目指しています。

 そして、私が尊敬する様々なデザイナーたちの出身地である日本でビジネスを拡大することはとても刺激的です。特に日本はクラフトマンシップの文化が根強いので、グラス サイプレスの手仕事も共感や馴染みを感じていただけるのではないでしょうか。日本のお客様にも楽しんでいただけると幸いです。

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◾️グラス サイプレス:Instagram

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