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熊谷隆志が今「GDC」を再始動する理由 yutoriとタッグを組み代官山へ原点回帰

熊谷隆志

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熊谷隆志が今「GDC」を再始動する理由 yutoriとタッグを組み代官山へ原点回帰

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 裏原ブーム全盛期の1998年に誕生し、ムーブメントをけん引したブランドの一つ「ジーディーシー(GDC)」。スタイリスト 熊谷隆志が手掛けるヴィンテージやアメトラのムードが漂うストリートウェアは、当時の20代の若者を中心に熱狂的なファンを獲得した。2010年以降、熊谷氏は新ブランドやセレクトショップのディレクション業に注力する中で「ジーディーシー」を離れる。自身のブランドだけでなく多方面に活躍の場を広げ、ファッション業界からオファーが絶えない名ディレクターの一人となった。そんな同氏が2025年春夏シーズンに「ジーディーシー」を再始動する。なぜ今のタイミングだったのか、どんな思いで復活するのか、話を聞いた。

熊谷隆志
1990年代からトップスタイリストとして活躍。98年に「ジーディーシー」を始動。ブランドディレクション、フォトグラファー、内装空間や植栽のディレクションなど幅広い分野で活動する。

若い世代との交流から受けた刺激

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⎯⎯「ジーディーシー」が再始動。驚きました。

 「ジーディーシー」は、yutoriと組んで再始動します。yutoriにとっては、小嶋陽菜さんの会社(「Her lip to」を手掛けるheart relation)などに続く、子会社化というかたちで。再びブランドを始めるなら、若い人たちと組みたかったんです。

GDC アーカイヴブック

2000年代のアーカイヴブック

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⎯⎯今の若い世代のファッション観をどのように見ていますか?

 服の選び方やSNS発信の仕方など、本当に面白いし刺激を受けますね。古着が好きな子は、その背景をどんどん深掘りしている。それにみんな、自己プロデュース力が高い。昔だったらちょっと恥ずかしいと思うことも、どんどんやっちゃうところがいい。20代の人たちにふと投げかけた疑問に対して返ってくる回答が、今の自分にとってかなりプラスになっています。

⎯⎯再始動するきっかけはあったのですか?

 若年層との接点が増えたことによって、この世代に刺さる服を作りたいと思うようになりました。彼・彼女たちは今、父親の世代の古着に熱中しています。その父親って、まさに僕と同世代なんですよ。彼・彼女たちにカッコいいと思ってもらえるリアルクローズは自信のあるジャンルだし、イオンなど大手企業との取り組みによって勉強になったこともたくさんありました。そして、自分のこれまでのファッション史を表現できるのは「ジーディーシー」しかないなと。「戻る場所はここだな」という考えは、以前から頭の中にありました。なんといっても自分のルーツですから。

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コレクションアーカイヴ

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 また、全てのアイテムを自分でデザインするものづくりに戻りたかったのもあります。「ジーディーシー」では全ての打ち合わせに参加して、状況を細部まで把握しています。おかげでかなり忙しいですけど、それが今とても楽しい。1998年のデビューの頃はあっという間にブームに火がついて、とにかく型数勝負だったのでたくさん服を作って売ることに必死でした。今振り返っても、当時の記憶はほとんどないですね。

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 あとは、昨年スタイリスト30年目を迎えたことも多少は関係しているのかもしれません。キャリアを振り返る機会もありましたし。そこから「ジーディーシー」にギアチェンジをした感じですね。

商業施設への出店や海外進出も視野に

⎯⎯新たな「ジーディーシー」について教えてください。

 コンセプトは「熊谷が好きなもの」。僕が好きなヴィンテージがベースなのは以前と変わりませんが、そこにトレンドや今のエッセンス、「ネサーンス」のような大人っぽい要素をプラスしていきます。また、以前は20〜30代の顧客が中心でしたが、今回は僕の世代まで着られる服を作っています。かつての顧客にもまた着てもらいたいですね。歴史も表現したいので、過去に人気だったグラフィック系のアイテムも復刻します。

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人気だったグラフィックTの一つ「キンスキー」Tシャツ(アーカイヴ)

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 一番悩んだのは商品の価格設定。価格帯は以前より上げました。自分がこれから着たい服は、ある程度プライスを上げていかないと作れないなと。その代わり、Tシャツはなるべく据え置きにしたいと努力しています。

⎯⎯1990年代の裏原カルチャーやストリートファッションが今、改めて若者たちに評価されていることも追い風になりそうです。

 裏原ブームの再来は感じていますね。海外の人たちも、当時の裏原ブランドのヴィンテージアイテムを古着屋で探していると聞きます。「ジーディーシー」にはストリートの要素がありますが、新しい感性も持っているブランドだと思ってもらいたいですね。

GDC 2025年春夏コレクション

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 昔の名品が再評価され、若い世代にも受け入れられているということを念頭に置いて服作りをしています。今、これまでにないくらいYouTubeをたくさん観ているんですよ。若い子たちによる古着紹介や買い物の動画、趣味のゴルフのチャンネルまで。ショート動画も含めかなりの番組数をチェックしていて、面白いなと思ったらスクリーンショットを撮るようにしています。

⎯⎯今後の展開について教えてください。

 3月8日のローンチと同時に、代官山に路面店をオープンします。まず直営から始めますが、いずれは卸もやる計画です。相性が良い商業施設のほか、昔からお付き合いが深かった地方のセレクトショップともまた一緒に頑張りたいという思いが強いですね。海外も視野に入れていて、アジアにも出店したいです。今季は、ストリートからモードまで数多くのブランドとのコラボレーションアイテムも用意していますので、楽しみにしていてください。

⎯⎯再始動してどのような「ジーディーシー」になるのか、期待しています。

 とにかく走り抜けたいと思っています。今の僕のライフスタイルはそのほとんどを「ジーディーシー」が占めていて、サーフィンやグリーンはほとんどやっていないし、ゴルフの回数も減りました。僕のリアリティの全てをこのブランドに詰め込んでいます。これまで多くのブランドを手掛けて得たノウハウを活かしながら、新しいことをやりたいですね。コスメラインを始めてもいいし、年齢を重ねた今の自分の等身大のスタイルを表現したセレクトショップを作っても面白そう。まずはお店とオンラインで、オリジナル商品をしっかり見せていくことが最優先。少し余裕ができたら、ブランドの屋号を使って色々なことを仕掛けていきたいですね。

一井智香子

Chikako Ichinoi

1986年神奈川生まれ。慶應義塾大学商学部を卒業後、三越伊勢丹に入社。伊勢丹新宿本店メンズ館の紳士雑貨でアシスタントバイヤーを務めた後、2011年にINFASパブリケーションズ入社。「WWDジャパン」記者として、主にメンズファッションを担当。ピッティ、ミラノ、パリメンズコレクション取材を始め、セレクトショップや百貨店、ファッションビルのビジネス動向を取材。現在はフリーランスとして、ファッションやライフスタイル系の記事執筆を手がける。男児と女児の母。

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