Image by: FASHIONSNAP
「フミト ガンリュウ(FUMITO GANRYU)」が、国立新美術館で2021-22年秋冬コレクションのショーを開催した。空間演出は「リトゥンアフターワーズ(writtenafterwards)」の山縣良和が手掛け、2者の異なるクリエイターによるそれぞれの"視点"から描き出された表現がショーというイベントを通し、同じ会場、時間に共存した。
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■生成から分解までを表したオブジェ
ランウェイとなったのは国立新美術館1階のスペース。会場には5体の中が空洞の三角のオブジェと土に埋められた服のショーケースが設置された。これは山縣が自身のブランドで今後展開させていくコレクションの序章だといい、三角屋根のオブジェは白川郷の合掌造り、そしてその土地でかつて盛んに行われていた養蚕業や和紙作り、火薬の原料となった焔硝作り(注目したのは、主にそれを作るために必要だった菌と発酵)に思いを馳せたもの。動物性繊維と植物性繊維の生成から菌による分解に渡る循環を一連のストーリーとして捉え、これらをインスタレーションで表現している。
■フミトガンリュウの哲学
ショーでは照明が落ち、白川郷を模したオブジェに明かりが灯り、その合間を縫うようにモデルがウォーキング。歩くたびに毛並みが揺れるファーのビッグハットを被ったファーストルックに始まり、「必然的多様性」をテーマに構成されたルックが次々に登場した。すでに発表しているコレクションから今回新たに作り足したものはフィナーレのコラボレーションTシャツを除き無く、スタイリングを変えたのみ。それはデザイナーの丸龍文人が掲げる本当に必要なものだけを作るというフィロソフィーに則ったもので、新たなピースを加える必要性を感じなかったからだ。
披露されたピースは基本的にベーシックなアイテムの数々で、ネルシャツや袖がたっぷりのオーバーサイズパーカ、ダッフルコートやノルウェージャンセーター、スウェットやセットアップ、ダウンジャケットなど。トップスやアウターは裾に向かって末広がりのデザインで、ボトムスはジーンズやジョガーパンツなどシンプルなもの。上下共にリラックスしたシルエットが見て取れる。そして時折、フィッシュベストをドッキングさせたような白シャツやフロントにパネルとステッチが入ったデニムシャツなど、ハイブリッドなアイテムがアクセントとして差し込まれていた。
■"髪飾り"が意味するもの
目を引いたのはアクセサリーのように服に取り付けられた髪の毛のピース。これは丸龍が考えるサステナブルなモノづくりの精神とのリンクを示し、切った髪を再利用したもの。ヘアメイクを手掛けた資生堂チームとの話し合いで採用されたアイデアだという。
■BiSHの視点で見るショー
ショーにはBiSHのメンバーがモデルとして登場。手に持っているGoProカメラで撮影した映像は、"彼女たちの視点"としてライブ配信された。
モデルがランプを持ち、ビートルズの楽曲「Across The Universe」をBGMに暗闇に光を灯す演出でフィナーレ。BiSHのメンバーを含めた複数のモデルはドラゴンやタイガー、丸龍のイラストが遊び心たっぷりに"ゆるく"描かれた「ネグレクトアダルトペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATiENTS)」とのコラボTシャツを着用した。
ショー終了後にはバックステージで「アフターパーティー」と称し、BiSHによるステージパフォーマンスが披露され、イベントは幕を閉じた。
それぞれの視点は決して交わり合うものではないのかもしれない。実際、クリエイター同士もイベント直前のインタビューで互いが全く異なるデザイナーであるということを語っていた。ただ、同じ会場の中でそれぞれの視点を持った作品が存在し、それがファッションショーという一つのイベントとなった時、2人のクリエイティブヴィジョンは共存という形で、同じファッションの未来を見据えているように見えた。
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