Image by: TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIO
フレグランスの魅力とは、単に“匂い”だけじゃない。どんな思いがどのような香料やボトルに託されているのか…そんな奥深さを解き明かすフレグランス連載。
第20回は、TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIOが展開するビスポークアロマ「ESSENTIA」をご紹介。
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第18回で紹介した「HOTEL THE MITSUI KYOTO」のシグニチャーアロマも、第19回の「FAS」の香りも、デザインしたのは、TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIO代表を務める齋藤智子氏。今、日本のアロマ調香デザイナーの第一人者と言っていいだろう。さまざまな企業から施設や製品、プロジェクトの香りの開発依頼がひっきりなしに届いている。
そもそもなぜ齋藤氏はアロマ調香デザインを始めたのか?実は意外にも、彼女がこの仕事を始めるまで「アロマデザイナー」という職はなく、「アロマ調香デザイン」という言葉は齋藤氏の登録商標である。
「京都生まれということもあって、幼い頃からお香は好きでした。会社員を一度経験していますが、アロマセラピーの道へ進んで20年になりますね。最初はトリートメントやオーガニックなどいろいろ学びましたが、最終的に『ブレンド』することに楽しさを見出したんです。ご存じのとおり、アロマの世界にはマッサージとかハーブとか資格がたくさんあって、『趣味でしょ?』と言われることがほとんど。それでも香りをちゃんと仕事にしたいと考えた時に、『香りを作ることが得意』『ブレンドが得意』と言っている人がいない、ということに気づいたんです。施術をする“ゴッドハンド”はいっぱいいるけれど、数種類ではなくさまざまな天然精油を使って、いろんなシーンにフィットする香りを作るということをやっている人、つまり調香をしている人が周りに見当たらなかったのです。
最初はスクール業からスタートし、天然精油が持つ効果効能を用いて、その方の目的に合わせて心や体に寄り添うように香りをデザインする、という考え方は今までになかった分野ゆえ、それを教えてほしいという人も現れたことで、2013年に社団法人を設立。そしてまもなく、究極のビスポークアロマ ESSENTIAをスタートした。その後2019年に『アロマ調香デザインの教科書』を上梓。
「よく『リラックスする香りを作って』と言われますが、それは人によって異なります。それまでの経験とか記憶とかいろいろな要素が関係してくるので、『ラベンダーは鎮静作用が高い』『オレンジは元気が出る』といった教科書的な作り方では、決してその人のベストにはならない。理由のない香りを作るのは気持ち悪いので、いろいろと試行錯誤の末、作り上げたメソッドがESSENTIA。その人が『なんかいいね』と感じる香りがベストだけど、『なんかいいね』には理由がある。そこまできちんとお伝えできるような香り作りということで辿り着きました」
ESSENTIAの所要時間は約90分。まずはライフスタイルから心身の状態まで多岐にわたる質問に答えるパーソナリティチェックからスタート。A4用紙両面3枚にぎっしりと書かれた質問に5段階評価で答えたのち、精油のブラインドチェックをこれでもかというほど試すことになる。
「アロマ心理学をもとに『こういう香りが好きな人はこういう傾向がある』という、約2000症例のアンケートから作られたデータがあるのですが、精油の種類が限られていたので、そこから私なりに調香を実践していく中で肉付けしていったのが、最初に行うコンサルテーション。考え方や気持ちを知る『心理チェック』と、体質や普段の生活パターンから元々持っている傾向やウィークポイントを知る『陰陽五行の体質チェック』を5段階評価で答えていただきます。さらにそこから導き出した精油のグループごとにブラインドテストを実施。考え方や好みの傾向を探るのに12グループ、好みの系統を探るのに7グループ、グループごとに試していただく精油はそれぞれ3種から10種。コンサルテーションも含めて時間をかけて丁寧に絞り込んでいくことで、今その人が欲している香りを目がけてデザインする、それがESSENTIAのメソッドです。同じ人でもその時の気持ちや体調、ホルモンバランスによって好みが全く変わってくるので、それを丁寧に紐解きながら、オンリーワンの香りを作っていくのです」
その後のコンサルテーションを経てセッションは終了。あとは齋藤氏が香りを選定し、その場で調香する完成品を待つばかりだ。目の前での調香は迷いがなく、ほどなくして5mLのブレンドオイル(原液)と30mLのルームフレグランス、選定した香りのレシピカードがパッケージに入れて渡される。ちなみに私が作ってもらったのは「自分をニュートラルにリセットする透明感のある香り」。熊野のヒノキや高知のユズ、直七、京都のクロモジなど約15種を使ったブレンドオイル。原液のエッセンスは、同梱される四角形の折り紙ムエットに染み込ませてディフューザーにしたり、ハチミツなどに垂らしてバスオイル代わりに使うことができる。
さらに新作ニュースが到着。ブランド初、肌にまとうことのできるロールオンタイプ「香油 - KŌYU -」が登場する。香りのラインナップは「NEW MOON」「CRESCENT MOON」「FULL MOON」の全3種で、2月19日からスタートする伊勢丹新宿店本館1階のポップアップストアで先行発売となる。ポップアップストアではTOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIOの香りづくりの軸であり、これまでは非売品だった「5 Signature Scents」(KUMANO-HINOKI / HOKKAIDO-TODOMATSU / KITAYAMA-SUGI / KAGOSHIMA-HOSHO / TOSA-YUZUの精油各5mLをセット、1万8700円)なども登場。ポップアップストアは25日までなので、お見逃しなく。
ビューティ・ジャーナリスト
大学卒業後、航空会社、化粧品会社AD/PR勤務を経て編集者に転身。VOGUE、marie claire、Harper’s BAZAARにてビューティを担当し、2023年独立。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了、経営管理修士(MBA)。専門職学位論文のテーマは「化粧品ビジネスにおけるラグジュアリーブランド戦略の考察—プロダクトにみるラグジュアリー構成因子—」。
◾️TOMOKO SAITO AROMATIQUE STUDIO:公式サイト
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