Malborough Vineyard New Zealand
フレグランスの奥深さを解き明かすいつもの連載はひと休み。今回は環境保全先進国ニュージーランド発スキンケアコスメブランド「アンティポディース(ANTIPODES)」をピックアップ。
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ナチュラル&ヘルシーなライフスタイル志向に環境保全意識が加わり、現代の化粧品は「サステナビリティ」なしでは語れない。優秀なOEMのおかげもあって、世の中にはサステナブルなナチュラル/オーガニックコスメがあふれているが、それらの中から自分が納得できる一品を見つけるのは至難の技。そんな時、創業者の考え方やバックグラウンドを知るのは、ひとつの手がかりになる。
数あるオーガニックコスメの中で「アンティポディース」の強みは、なんといっても“サイエンス”だ。創業者エリザベス・バーバリッチは大学で生物学を専攻し、卒業後は米国系医療機器メーカーに8年勤務。そこで学んだ生体構造、栄養学、処方設計などがブランドの基盤になっている。
「結果がすべて」という科学者目線は、ニュージーランド固有種を中心に植物が持つパワフルな有用成分とその美肌効果を探り出す。例えば新作「イヴ バイオRTN セラム」は“天然レチノール”として話題のバクチオールやカカイオイル、ウチワサボテンオイルなどをキー成分に開発した、オーガニック&ヴィーガン認証取得のエイジングケア美容液だ。
「ブランドを立ち上げて17年になるけれど、単に化粧品が好き、商品開発が好きということだけでは続かなかったと思う。私はこのブランドのあり方が大好きなの。グリーンウォッシュなしの100%天然由来を追求し、ウェルビーイング&ヘルシーに情熱を傾けながら、理系のバックグラウンドのほかにMBAとナチュロパシーも習得。健康的なライフスタイルを願うと同時に、世の中によい変化・影響をもたらしたいと思う。そんな心の強さがブランドの支柱になっていると思うわ」
さらに現在では、B Corp認証を取得すべく準備中でもある。これは製品に限らず企業全体が社会や環境にもたらす影響を評価する認証制度で、サステナビリティに真剣に取り組む企業の多くが目指している。
「実はこの認証制度について知らなくて、2年ほど前に20歳の娘から“B Corpを取らないとダメじゃない?”って言われたのよ。今の若い世代はサステナビリティに敏感で、そういうブランドをフォローしている人が多い。審査が厳しくて取得するのが大変だけど、その分高いレベルのサステナビリティを実現していることの証しになるわ」
コロナ禍には経営管理手法を見直し、若手に仕事を任せながら、エリザベス自身は自らの強みである商品開発にさらにフォーカスしているという。
「今準備しているのはSPF50のサンスクリーン。天然由来で実現するのは困難だし、ニュージーランドの規定は非常に厳格だけれど、完成は目前よ。それからビタミンCローションも作りたいと思っているの。商品開発をしていると、原材料の生産者や生産地の風景が思い浮かんできて、みんなで一緒に豊かになれると実感できる。それもこの仕事の醍醐味のひとつね」
ちなみにナチュラル/オーガニックブランドにありがちなヘアケアラインとサプリメントが、アンティポディースにはない。「髪は死んだ細胞なのでタンパク質を効かせられない、サプリメントは化粧品とは開発レギュレーションも市場も異なるから、まずはスキンケアに集中するわ」と、エリザベス。
堅実、まさにオーガニックな成長を基本とするアンティポディースの今後の展開に要注目だ。
(文:ビューティ・ジャーナリスト 木津由美子)
ビューティ・ジャーナリスト
大学卒業後、航空会社、化粧品会社AD/PR勤務を経て編集者に転身。VOGUE、marie claire、Harper’s BAZAARにてビューティを担当し、2023年独立。早稲田大学大学院商学研究科ビジネス専攻修了、経営管理修士(MBA)。専門職学位論文のテーマは「化粧品ビジネスにおけるラグジュアリーブランド戦略の考察—プロダクトにみるラグジュアリー構成因子—」。
⬛ アンティポディース:公式サイト
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