FASHIONSNAPによる業界の職業図鑑。ファッション業界にはどんな職業があるのか? 名前は聞いたことあるけど実際どんな仕事をしているのか? という疑問を解消すべく立ち上がった連載企画です。業界の最前線で活躍する人を招き、リアルな職務内容や必要なスキルなどをファイリングしていきます。
第7弾はファッションエディター編。ファッション雑誌「エル・ジャポン(ELLE JAPON)」でシニアエディターを務める高倉由紀乃氏の協力を得て、この職業の魅力を探ります。
目次
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ファッションエディターってどんな仕事?
ファッションに関わる雑誌やWEB媒体などの編集をする仕事です。編集者は、企画の立案から撮影、原稿執筆までコンテンツ作りの全工程を担っているといっても過言ではありません。ブランドのファッションショーや展示会など新作発表会に出向き、ファッショントレンド動向を取材。シーズンごとのトレンドを分析して、分かりやすく世の中に届けます。
海外のファッションエディターはモデルさんのスタイリングまで担当することが多いので「ヴィジュアルメーカー」に近い位置付けになります。日本ではスタイリングに関してはスタイリストさんにお任せすることが多いですが、それ以前の企画のコンセプト作り、撮影現場のオーガナイザー(まとめ役)など、業務の範囲は広がります。
ファッションエディターになるには?
雑誌の編集部でインターンやアルバイトとして出版社に入社し、経験を積んで一人前のエディターになるというのが一般的な流れです。フリーランスのエディターのアシスタントとして働き、独立するといった方法もあります。
私の場合は、学生時代に出版社でインターンやアルバイトを経験しました。競争が激しく、狭き門なのでエディターになるまでそれなりに時間がかかる場合があります。
エルの場合、プリント(雑誌)とオンライン(ウェブ)でエディターの担当が分かれています。今はデジタルファーストの気運が高まっているので、適性に応じてウェブへの部署異動は活発に行われていますね。
必要な資格や勉強しておいた方が良いこと
ファッションエディターになるために必要不可欠な資格は特にありません。しかしモード誌で働きたい人は英語を学んでおくとコミュニケーションの幅が広がるほか、情報の取捨選択もしやすくなるので円滑に業務を進められます。また大学や専門学校でファッションや編集を学ぶことも有利になるでしょう。
企画書制作やキャプションの入稿など文章を書く機会は多いので、文章力を磨いておくといいでしょう。私は元々文章を書くのが苦手でしたが、トレーニングをすることで身につけました。ファッションやアート、カルチャーなど興味があることを掘り下げておくことも後々生きてくると思います。
ファッションエディターのある1日のスケジュール
やりがいは?
自分の仕事が雑誌という「形」として残ること。読者の方から「発売日が楽しみ」「宝物です」などの感想をいただいた時にやりがいを感じます。また世の中に出る前の最新のコレクションや商品を目にする機会も多く、ファッション好きで、最先端のトレンドに興味がある人にとってはモチベーションになります。
例えば、100万円もするような高価な服は誰しもが着用できるわけではないですが、そのバックグラウンドにある世界観や美的感覚を、エディトリアルを通して多くの人にお届けすることはできます。それはアートのように、人の生活を豊かにするものであると信じて日々業務に励んでいます。今、世界には様々な問題がありますが、基本的にポジティブな話題を提供できるのもこの仕事の魅力ですね。
大変だなと感じる時は?
締切がある仕事のため、スケジュールに沿って進行することが大事。校了直前は関係各所に連絡をとりながら、最終チェックを進めていくのでバタバタすることも。海外とのやりとりや出張も多いので、業務時間が不規則になったり、夜遅くになったりと忙しい時期もあります。
華やかな印象がある職業ですが、実はそれ以外の仕事が10倍くらいあります。いくつかのプロジェクトが同時並行で動いているので、日ごろから気を張っていないといけないところも大変だと感じますね。
ファッションエディターの収入はいくら?
ファッションエディターの年収はだいたい400〜700万円ほど。編集長などの重要なポストに就くと1000万円を超える人もいます。
初任給は手取りで25万円ほどと、他の業種と比べると少し高めではありますが、昇給はゆるやかな印象です。とはいえ、会社や個人の仕事量によって収入は変わるので、あくまで一つの目安として考えてください。
ファッションエディターからの発展性、転職などは?
別媒体のエディターへ転職する人もいれば、大手アパレルメーカーやラグジュアリーブランドのPR、SNS運営などに転身する人も増えています。またフリーランスエディターになって、ファッションブランドやメディアのコンテンツ制作に携わる人もいます。
コンテンツ制作は昨今、業界全体から求められているので、ファッション業界で仕事を探すことは難しくないと思います。ただ、マーケティングなどデータを分析する必要がある職種への転職は異なるスキルも必要になります。
ファッションエディターに向いている人や大切なこと
常に同時進行で複数の企画を担当することになるので、マルチタスクをこなせることが必須条件です。またコミュニケーション能力があり、情報収集能力に長けていて、常に新しいことに興味を持てる人が向いていると言えるでしょう。
客観的な視点やデータ分析ももちろん大事ですが、ファッションエディターは個性や主観もいかせる職業なので、日々美意識を磨くことも大事だと思います。
ファッションエディターを志す人に向けて
忙しい仕事ではありますが、ファッションが好きというパッションがある人なら楽しみながらこなすことができると思います。仕事範囲が広い分、活躍しているファッションエディターでも得意分野はそれぞれ違っていたりします。「文字を書くのが下手だから」など苦手意識で諦めずにファッションエディターへの憧れや、なりたいという思いがあるなら積極的にトライしてみてほしいです。
ファッションエディターの年間スケジュールの一例
1月
・3月号の校了や4月号・5月号の撮影仕込み、6月号の企画案作成など
2月
・4月号の校了や5月号・6月号の撮影仕込み、7月号の企画案作成など
・海外コレクション取材
・繁忙期
3月
・5月号の校了や6月号・7月号の撮影仕込み、8月号の企画案作成など
・海外コレクション取材
・繁忙期
4月
・6月号の校了や7月号・8月号の撮影仕込み、9月号の企画案作成など
・秋冬の立ち上げに向け、コレクションのムードを反映させた企画を考える
5月
・7月号の校了や8月号・9月号の撮影仕込み、10月号の企画案作成など
・比較的落ち着いている時期
6月
・8月号の校了や9月号・10月号の撮影仕込み、11月号の企画案作成など
・比較的落ち着いている時期
7月
・9月号の校了や10月号・11月号の撮影仕込み、12月号の企画案作成など
・秋冬の立ち上がりということもありタイアップが多め
8月
・10月号の校了や11月号・12月号の撮影仕込み、翌年1月号の企画案作成など
・秋冬の立ち上がりということもありタイアップが多め
9月
・11月号の校了や12月号・1月号の撮影仕込み、2月号の企画案作成など
・海外コレクション取材
・ジュエリーウォッチ企画
・繁忙期
10月
・12月号の校了や1月号・2月号の撮影仕込み、3月号の企画案作成など
・海外コレクション取材
・繁忙期
11月
・1月号の校了や2月号・3月号の撮影仕込み、4月号の企画案作成など
12月
・2月号の校了や3月号・4月号の撮影仕込み、5月号の企画案作成など
・年末年始は休暇を取得可能
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