ブランドデビューまでの道のりを赤裸々に綴っていく連載「デザイナー奮闘記」。前回は事業計画の立て方で学んだ事についてご紹介しました。今回は展示会で発表する洋服のデザイン詰めや制作過程の奮闘模様を綴らせていただきます。
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展示会で何を発表する?
展示会で発表するにあたり、作りたいと思うデザインは沢山ありました。コートもジャケットもスカートも......とキリがありません。ですが、前回の記事で書いた事業計画を基に、初めての展示会で発表するにあたり何を伝える必要があるかを考えました。
どういう世界観のブランドなのか
SNSなどに写真をアップした際、服を見てすぐにブランドのイメージが伝わりやすいシンボリックなアイテムを作る必要があると考えました。私たちは大切な日や特別な日に着る「Ceremonial wear」を提案したいと考えてるので、白と黒などわかりやすい色で表現したいと思っています。
どういう事に特化したブランドなのか
沢山ブランドがある中で、どうゆうことを得意とするブランドなのかが伝わりやすい商品にしたいと思いました。私たちは手作業を活かした編みと織りで表現するレースをメインに打ち出したいと考えています。
これらを踏まえて、私たちは全てのアイテムを細部まで拘り手作業なども加えた、ブランドのシンボルとなるアイテムのみを作るべきだと考え、6型のアイテムを発表することに決めました。
デザインを決めるにあたって長い間リサーチを行い、最後にデザインを詰めるために1週間泊まり込み合宿を行いました。イメージを共有しては絵型を描き、ディテールを詰めていく作業をひたすら繰り返しました。お泊まりという事もあり、夜ご飯を作る担当と食後の甘いものを買ってくる担当と生活の業務を分けたり、寝る寸前まで話し合ったりと色々な面でとても楽しい合宿となりました!
サンプル作りのフロー
私たちは展示会を2023年4月に行うことに決めました。それにあたり逆算してスケジュールを立てていきます。ここではそれぞれの項目別にサンプル作りにどれくらいの日数がかかるのかの目安を、参考までにご紹介させて頂きます!
— 布帛の場合 —
【生地について】
コレクションで使用する布帛生地は大きく2種類に分類できます。
・在庫のある生地
ベーシックな生地は、生地屋さんが在庫を持っている事があります。そういった場合は、生地屋さんに連絡をして在庫状況を確認する必要があります。流動的な事が多いので、必要な分をキープもしくは購入しておくのがおすすめです。
・別注の生地
織の組織や柄にこだわった生地を作りたい場合は、別注で生地を作ります。こちらは織の組織や機屋さんの状況によりリードタイム(生地を発注してから納品までにかかる時間)が異なります。
【サンプル反アップ】
1. 作りたい生地を確定後、図案を作成し機屋に依頼。
↓
2. ビーカー依頼と確認。(※ビーカー:生地や糸を染める時の指針となる色見本のことです。イメージしている色と合ってるか確認をします)
↓
3. マス見本の確認。(※マス見本:生地の一部分を何種類か織ってもらい、確認する為の見本のことです)
↓
4. サンプル反アップ。
【1stサンプル用のパターンアップ】
トワルという仮縫い用の生地を使用して、自分が作りたい服を立体的に確認し、それを平面にしたパターンを作成します。
1. パターン依頼書(絵型とイメージに近いディテールの写真や決まってる寸法をまとめたもの)を作成しパタンナーに依頼。
↓ (約2週間)
2. パターンアップ。トワルを確認し、修正事項をパタンナーに伝える。
↓ (約1週間)
3. 1stサンプル用パターンアップ。(※修正事項が多い場合は、2ndトワルを確認後に1stサンプル用パターンを作成してもらう事もあります)
【1stサンプルの作成】
実際に使う生地を使用してシルエットや仕様に不備が無いかを確認します。
1. 事前にサンプルを縫って頂く工場に連絡し、スケジュールを抑える。(※量産をお願いする際にも使える工場だと、クオリティのコントロールがしやすいです)
↓
2. 使用する生地の着分と付属を準備し、工場に発送。(※着分:衣服1着分として必要な生地の量のこと)
↓
3. 仕様書を作成し、サンプル作成を依頼をする。(※仕様書:服を生産するに当たって必要な情報を記載した書類のことです。 パターンを作成するにあたってのデザインやサイズスペック、使用する生地の種類や色、ボタンやファスナーなどの付属についてまとめます)
↓ (約2週間)
4. 1stサンプル完成。
【展示会用サンプル作成】
1stサンプルで不備があった所を直し、展示会用に完璧なサンプルを作ります。
1. 1stサンプルを確認後、展示会サンプル用にパターンの修正を依頼。
↓ (約1週間)
2. 展示会サンプル用パターンアップ。使用する生地の着分と付属とパターンと仕様書を準備し、工場に発送。
↓ (約2週間)
3. 展示会サンプル完成。
— ニットの場合 —
1. デザインと使用する糸を決定後、ニット工場さんの予定を抑える。
↓
2. 編み柄を指示して、試編みを編んでもらう。(※試編み:ニットは糸の太さやゲージによって編み柄の見え方が変わってきます)
3. 使用したいと考えている編地を試しに何種類か編んでもらい確認をします。
↓ (約2週間)
4. 仕様書を作成し依頼をする。(※ニット用仕様書:ニットは布帛と違ってパタンナーにパターンの作成を依頼せず、実寸の4分の1でデザインを図解し、仕様と寸法を細かく記載した書類を用意して依頼をします)
↓ (約2週間)
5. 1stサンプルアップ。
↓
6. 1stサンプル修正&展示会用サンプル依頼。(※ニットは着る度に伸びてしまうので、着る前に寸法が依頼通り上がっているか確認します)
↓ (約2週間)
7. 展示会用サンプルアップ。
こういった流れで展示会用のサンプルを作ります。
まとめ
一番重要である「展示会で発表するもの」も決まり、サンプル製作が始まりました。本当にブランドをスタートするんだなと改めて実感したのと同時に、展示会までにするべき事が沢山あると気付き、より一層気を引き締めて、楽しみながら頑張りたいなと思いました!
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補足:最近の私たちのこと
ブランド立ち上げを目指す一方で、現在「HUNDRED FLOWERS PROJECT」と題したデザインプロジェクトを行っています。プロジェクトでは魅力的なお仕事や生活をなさっている方から、過去の大切なお話を伺い、記憶の花のレースの編み手と織り手として、大切な記憶を守って新しい未来に導く修道服(守導服)を作り、お贈りしています。プロジェクト第4弾では美容室une代表の英香さんにお話を伺いました。
若い頃は負けず嫌いだったとお話してくださった英香さん。自分の立てた目標に対しては直向きに努力をなさっていたんだろうなと感じるようなチャーミングなエピソードをお話してくださいました。
美容師を始めたばかりの頃は、ヘアアレンジの参考などにもなるからと、時間が許す限り映画を沢山観るようにしていらっしゃったそうで、休日や仕事終わりにもお仕事に活かせそうなことをなさっていたそうです。
お話を伺い、仕事をとても大切にしている彼女に、仕事着をお贈りしたいと考えました。美容師はどうしても服に髪の毛がついてしまうため、ニットがなかなか着れないと話してくださり、花をオブラートで包んだようなニットのジャンプスーツを作りました。
また、彼女の思い出に合う花として選んだのは「トリカブト」。夢を叶えるために真摯に努力してらっしゃったのだろうなと感じ「騎士道」という花言葉がぴったりだと感じたからです。トリカブトの花は、形が頭巾に似ていることから、修道士の頭巾とも呼ばれています。彼女が勧めてくれた映画「ピアノレッスン」でも主人公が頭巾を被っていることから、トリカブトの刺繍を施した頭巾も作りました。
撮影は英香さんのお店である表参道にあるuneで撮影し、作った頭巾を使ってヘアアレンジをしている様子も撮影しました。
次回は展示会の準備にまつわる奮闘模様を綴らせていただきます。お楽しみに!
連載:デザイナー奮闘記
・まず何から始める?先輩デザイナーへの相談篇
・どこでオリジナル生地を作る?機屋探し篇
・ブランド名はどうやって決める?事業計画編
・展示会で何を発表する?サンプル作りのフロー
・ブランドロゴはどう作る?グラフィックデザイン編
・ルック撮影はどうやる?展示会準備編
・初めての展示会をレポート
■EUCHRONIA:インスタグラム
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