1月27日、マリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)による「ディオール(DIOR)」が、2024年秋冬コレクションをパリで発表した。
1946年から続くブランドの歴史を遡り、あるトピックをピックアップし、フェミニズムと現代性を加える。端的にいえば、これがキウリの「ディオール」でのアプローチだ。今回、彼女の目に止まったのは、1967年の「ミス ディオール」。これは同名の香水のことではなく、それまでオートクチュールのみを発表していたメゾンが、当時のクリエイティブ・ディレクター、マルク・ボアン(Marc Bohan)のアシスタントであるフィリッペ・ギブルジェ(Philippe Guibourge)によってスタートした、初となるプレタポルテのコレクション名である。オートクチュールより若く、実用的なデザインで、控えめな価格であったため、新しい顧客層の獲得に成功した。限られた人しか身に付けることができなかった「ディオール」が、少しだけ民主的になった出来事だった。
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1ヶ月ほど前、2024年1月に発表された2024年春夏の「ディオール」クチュール・コレクションが、ベージュの連続だったことを覚えているだろうか?
並べることでオートクチュールとプレタポルテの違いを強調するかのように、2024年秋冬コレクションも(まったく同じトーンではないが)ベージュのオンパレードだ。ジョナサン・アンダーソン(Jonathan Anderson)、「グッチ(GUCCI)」のサバト・デ・サルノ(Sabato De Sarno)、「ボッテガ ヴェネタ(BOTTEGA VENETA)」のマチュー・ブレイジー(Matthieu Blazy)など、今シーズンは多くのデザイナーが "実用性"という言葉を発したが、キウリもそのムードを敏感に察知し、いつにも増して実用的なコレクションを披露した。シンプルなフォルムのジャケットやミドル丈のトレンチコート、直線的なスカート、ブルゾンと、1960年後半から引用されるシルエットは、布地の流動性が抑えられ、ある種のストイックさを示してもいる。
Image by: DIOR
Image by: DIOR
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キウリの「ディオール」は、毎度ランウェイのセットデザインに女性アーティストを招いているが、今回はインドのマルチメディア・アーティスト、シャクンタラ・クルカーニ(Shakuntala Kulkarni)だ。会場を竹で覆い、女性の身体性にまつわる政治に焦点を当てた「竹の鎧」を中央に展示。本来の鎧の目的である身体保護と、実際に着用した際に起こる動きづらさ=身体の拘束との矛盾を示唆した作品だ。
では「ディオール」の服が、作品と同じ本義を共有しているかというとむしろ逆で、ファーストルックのパンツスーツが象徴するように、動きやすさはコレクションにおける重要な要素だ。だからこそシャクンタラを起用した必然性には疑問が残ったが、キウリはランウェイ会場を、女性アーティストをエンパワーメントする場と考えているそうだ。
1967年に「ミス ディオール」ブティックのショッパーのためにデザインされたロゴは、手書きのグラフィックで大胆にジャケット、コート、スカートへと載せられ、ロゴブームが終焉を迎えた今では逆に、一瞬は新鮮に見える。黒のタートルネックニットとゴールドのネックレスのシンプルな組み合わせ、ウィンドウペン(窓枠の格子のようなチェック柄)のテキスタイルが、コレクションに円熟をもたらしながらも、ラップスカートの小さなバックルやドローコードといったキウリ得意のスポーティなディテールが、健康な若々しさと軽やかさをプラスしている。
Image by: DIOR
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後半にはレオパード柄のハラコが多く登場し、シャンパンゴールドの刺しゅうはかすみ草のごとく布地の上に無数に咲き乱れ、コレクションを締めくくった。
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ラストルック
Image by: DIOR
今回のキウリが“実用性”を語った上記のデザイナーたちと異なるのは、新しさやシルエットの探究と挑戦がなかったことだ。しかし、それが実際に彼女に期待されていることなのかどうかは定かではない。その是非は、「ディオール」ブティックの好調な売れ行きが物語っているのかもしれない。
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