日本国内の主要百貨店6社(三越伊勢丹HD、高島屋、大丸松坂屋百貨店、そごう・西武、松屋、阪急阪神百貨店)の月次既存店売上をレポート。各社の主要店舗で売れた商品もあわせて紹介する。
2023年2月度は、前年度のまん延防止等重点措置の反動や、活況に沸いたバレンタイン催事などの影響で各社2桁増の好成績を収めた。インバウンド復活の兆しもあり、旅行関連の需要も伸びた。
※売上増減率は各社いずれも確定値
※売上は収益認識基準ではなく従来の総売上高で開示
目次
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三越伊勢丹HD
好調が続く三越伊勢丹ホールディングス。2月度は前年比28.4%増で着地した。時計・宝飾・ハンドバッグに加え、ラグジュアリーブランドの春物衣料も良く動いた。また、外商顧客向けのイベントやバレンタイン催事も前年実績を大きく超え、売上を押し上げた。
■伊勢丹新宿店で注目されたブランド:マメ クロゴウチ
2011年秋冬シーズンよりお取り扱いをスタートし、長きにわたってパートナーシップを築き上げてきた伊勢丹新宿店と「マメ クロゴウチ」。シーズンを重ねるごとに取り扱いのラインナップも広がっていき、今では世界随一の品揃えに加え、毎シーズン伊勢丹新宿店限定アイテムを制作。ファンが注目し、集まる場所へと発展を遂げています。2月22日からはリ・スタイル内に「マメ クロゴウチ」コーナーがオープン。青山店を手掛けたデザイナー柳原照弘氏によりデザインされた空間で、今まで以上にブランドの世界観をお楽しみいただけます。また、3月下旬には、本館1階でのイベントも開催予定。(伊勢丹新宿店 本館3階 リ・スタイル バイヤー 神谷将太)
高島屋
高島屋の2月度の実績は前年同月比17.8%増と前月に引き続き2桁伸長。特に伸長したのは婦人洋品を中心とした衣料品で、前年同月比3割増となった。
免税を除いた店頭売上高の好調を維持しながら、免税売上は2020年2月比では約2倍に回復した。
※売上高は高島屋各店および国内百貨店子会社計
■高島屋新宿店で注目された商品:インテリアとしても使えるハンモック
ご自宅で過ごす時間をより充実させたいという方が多く、家具全般の売れ行きが好調。家具を買い替えて気分を一新する方が多い中、スペイン製自立式ハンモックが人気です。ポールの取り外しが簡単にでき、設置もラクで移動もスムーズ。車に積んでアウトドアに持ち出すことができるという点も好評です。生地によって価格は異なりますが、中心価格帯は20万円前後で、ソファとは別に、リビングルームでパーソナルチェアとして使ったり、家の中と外のシームレス化により、ベランダや屋外で使う方も多くいらっしゃいます。(高島屋新宿店 担当者)
大丸松坂屋百貨店
大丸松坂屋百貨店の2月度は前年同月比26.7%増。前年度のまん延防止重点措置の反動に加え、人流の回復により高額品だけではなくファッション商品全般にも活発な動きが見られたほか、バレンタイン商戦も好調に推移したことが背景にある。大丸東京店(前年同月比58.5%増)や大丸梅田店(同41.0%増)といったターミナル店舗を中心に高い増率を示した。免税売上はコロナ前の2018年度比で61.0%増となった。
※免税売上高の実績に大丸心斎橋店の定期賃貸借テナントの免税売上は含まない
■松坂屋名古屋店で注目された売り場:松坂屋名古屋店旅行センター 外商催事で高額プランが売れる
政府が全国旅行支援策を行っていることや、新型コロナウイルスが感染症状の位置付けで「5類」に引き下げることが周知されたことで、旅行意欲が一気に高まっています。松坂屋名古屋店の旅行センターは、百貨店業界では稀な第一種旅行業登録をしているため、お客様のご要望に合わせたオーダーメイド旅行プランの作成が可能。昨年10月以降売り上げが急激に伸びており、2月には外商催事で特設会場を設けたことから高額プランが続々決定。総額250万円の2泊3日ヘリで国内周遊旅行や、総額2000万円弱のハワイ旅行が売れました。2月度の売上は驚異の対前年比429倍に。(松坂屋名古屋店 担当者)
そごう・西武
そごう・西武の2月全店の実績は前年同月比20.5%増で、17ヶ月連続前年伸長を果たした。プレステージブランド、呉服高級、雑貨といった継続して好調のカテゴリーに加え、卒業式・入学式など学校行事ニーズ復活を背景に、衣料品トータルも同30%増(2020年2月比では15%増)と大きく売上を伸ばした。
■西武池袋本店で注目されたアイテム:口元のメイクアイテムなど
3月13日以降のマスクの着用について、屋内や屋外を問わず「個人の判断に委ねる」という政府の発表後、今までマスクで隠れていた部分のメイクアイテムが好調。リップグロスなどの口元メイクアイテムは前年比で約30%増、チークは前年比約45%増と伸長しました。コロナ禍のマスク着用によってニーズが減少した口元メイクアイテムですが、5類感染症への移行発表から脱マスクに向けてお客さまの関心が日に日に高まっていることを感じています。(リーシング本部 リーシング一部 コスメ担当 温品龍)
松屋
松屋では前年に対して約5割増に迫る勢いを記録。牽引したのは化粧品(前年同月比約102%増)や、ラグジュアリーブランド(同77%増)、時計(同63%増)など。また、円安を背景に、主に台湾、韓国、香港、タイ等の東南アジアからの訪日外国人客による買い上げが目立ち、免税売上の銀座店全体に占めるシェアは22.4%(コロナ前は約25%の水準)だった。
■松屋銀座で注目されたアイテム:スーツケース 訪日外国人客の購入が約8割
松屋銀座では、スーツケースの需要が大きく伸びています。行動規制緩和による国内旅行需要の増加やインバウンド増加に伴い、売上高前年比が10倍以上となっています。特に訪日外国人客による売上が約8割を占め、店内でお買い求めになった商品を入れられる100リットル以上の大きなサイズで、10万円前後のスーツケースが売れています。(松屋銀座 担当者)
Image by: 松屋銀座
Image by: 松屋銀座
阪急阪神百貨店
阪急阪神百貨店の2月度は、前年同月比31.0%の増収。バレンタイン商戦が活況を呈し、阪急本店全館では期間売上高29億円と、2020年の25億円を大きく上回り過去最高を更新した。
2019年2月対比では2%増、インバウンドを除く国内売上高対比では6%増といずれもコロナ前を上回った。免税売上高は、引き続き韓国・台湾・香港からの訪日外国人客による買い上げが好調に推移したが、2019年の春節が2月だった影響もあり実績に対しては28%下回った。
■阪急うめだ本店で注目された売り場:過去最高の売上を記録したバレンタイン催事
今年は「チョコで広げるGood Harmony」をテーマに、約300ブランド・3000種類の商品をご紹介しました。メインフロアの9階では、「Welcome toプレイフルチョコワールド」「魔術師たちが織りなすチョコレート」「カカオと旅するカカオワールド」「かんきつジェット」「チョコっとひといき。焼菓子の森」とテーマを設けて展開。なかでも、砂糖漬けのオレンジや柑橘類にチョコレートをコーティングしたオランジット人気を受け、オレンジだけではなく柑橘類まで広げ約50ブランド、100種類以上を集めた初企画の「かんきつジェット」が大人気。味や食感をわかりやすく伝えるためのチャートを作成したことで、好みのオランジェットを選ぶことができるとSNSでも話題になるなど注目が集まりました。
また、チョコやカカオを使用した焼菓子を集積展開した初企画の「チョコっとひといき。焼菓子の森」は、まるで絵本の中に迷い込んだような環境の中で、クッキーやフィナンシェなどの焼菓子をブランドの枠を超えて、1個から購入できることから新たな発見を求め、様々なブランドや商品を楽しみながら購入されていました。(阪急うめだ本店 担当者)
Image by: 阪急うめだ本店
■「百貨店ウォッチ」バックナンバー
・2023年1月度:コロナ禍の反動でバレンタイン商戦過熱
・2022年12月度&23年初売り:インバウンド売上回復基調、クリスマス商戦で宝飾品が売れる
・2022年11月度:免税売上が大幅増、婦人向けのお出かけ着が回復
・2022年10月度:秋冬商戦スタート、コロナを経て買い替え需要も
・2022年9月度:ファッション・芸術・食欲の秋 ブーツ商戦にも熱
・2022年8月度:各社で売上2桁増、衣料品回復の兆し
・2022年7月度:セールよりも実需アイテム? 日傘やサングラスなど定価商材売れる
・2022年6月度:気温上昇でUVケア商品に注目、化粧品需要も回復
・2022年5月度:3年ぶりに行動制限のないGW商戦で売れたものは?
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