日本国内の主要百貨店6社(三越伊勢丹HD、高島屋、大丸松坂屋百貨店、そごう・西武、松屋、阪急阪神百貨店)の月次既存店売上をレポート。各社の主要店舗で売れた商品もあわせて紹介する。
2022年11月度は新型コロナウイルス感染拡大に伴い規制していた観光目的の外国人の入国制限が緩和や円安を背景に、各社免税売上が大幅に増加。秋冬の実需として婦人服が好調だった。
※売上増減率は各社いずれも速報値を参照
※売上は収益認識基準ではなく従来の総売上高で開示
目次
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三越伊勢丹HD
三越伊勢丹ホールディングスの11月度の売り上げは前年同月比9.4%増で着地。基幹店の伊勢丹新宿店では8ヶ月連続でコロナ前の2018年実績を上回って推移している。高額品需要の継続に加え、婦人のコートやジャケットなどの重衣料も動いたという。また、免税売上も伸長し、伊勢丹新宿店と三越日本橋本店の両基幹店では2018年実績を超えた。
■伊勢丹新宿店で注目されたアイテム:「エブール」リュクスビーバーショートコートなどのショート丈コート
伊勢丹新宿店 本館3階 キャリアスタイルでは、ショート丈のコートが支持を得ています。今年のトレンドでもあるジャケットからの延長ということもありますが、コロナ禍を経てONとOFFの境目が曖昧になっている印象があり、日常シーンでも使いやすい着丈として、各ブランドのショート丈コートが好調です。また、長くロング丈が主流であったので、新鮮味もあるかと思います。
例としては「エブール(ebure)」のリュクスビーバーショートコートは人気アイテムのひとつです。スーパー120'sのウールリバーを使用した柔らかい手触りと上品な光沢感が特長。ショールカラーのような大きめのフードが目を惹くデザインで、ドロップショルダーのゆったりとしたサイズ感も好評です。重くならないように再度にスリットが入っているのがポイント。(伊勢丹新宿店 本館3階 キャリアスタイル バイヤー 藤本康介)
「エブール」のリュクスビーバー フーデットショートコート
高島屋
高島屋の国内百貨店の売り上げは前年同月比5.8%増と伸長が続いている。店舗別売り上げでは、大阪店、京都店、日本橋店、横浜店、新宿店、玉川店、大宮店、高崎店が前年実績を上回り、なかでも新宿店は2桁増が継続。免税売上はコロナ前の2019年同月比で約8割まで回復した。
■高島屋新宿店で注目されたアイテム:オレンジワイン
高島屋新宿店では食料品の売り上げが好調で、10月26日から11月8日まで開催した物産展「大北海道展」が大きな話題を集めました。
各カテゴリーとも好調な中、地下1階和洋酒売場では赤・白・ロゼに続く第4のワインとして注目されている「オレンジワイン」がよく売れました。「オレンジワイン」とは、オレンジで造ったフルーツワインではなく、白ブドウを果皮ごと使って赤ワインのように醸造するワインのこと。ボトルからグラスに注ぐとテーブルが華やぐことから、ご自宅用・ギフト用ともに人気があります。(高島屋新宿店 担当者)
大丸松坂屋百貨店
大丸松坂屋百貨店では免税売上が前年比約7倍に伸長。ラグジュアリーブランドや美術宝飾品が引き続き売り上げを大きく牽引し、合計では同9.5%増となった。
※免税売上高の実績に大丸心斎橋店の定期賃貸借テナントの免税売上は含まない
■松坂屋名古屋店で注目されたアイテム:「ジュン アシダ」などのミセス向けプレタポルテ
11月は気温が高めに推移したことでウールコートなどの冬物衣料がやや苦戦したものの、本館4階の婦人服フロアの売り上げが3ヶ月連続で前年を上回りました。「ジュン アシダ(jun ashida)」「レオナール(LEONARD)」「ヨシエイナバ(yoshie inaba)」「ダックス(DAKS)」といった婦人服のミセスプレタポルテが好調。その他では「ピンクハウス(PINK HOUSE)」 「フォーティーナインアベニュージュンコシマダ(49AV.junko shimada)」などのデザイナーブランドが売り上げを伸ばしました。カテゴリー別ではジャケットが前年同月比118%増、スーツが同116%増と大きく伸長し、ワンピース(同32%増)やスカート(同31%)も動きが良かったです。お出かけ需要が高まり、カジュアルよりエレガントなスタイリングが好調な傾向が見られます。北館5階の時計売場が7月に全面フロア改装となってから、連絡通路となっている本館4階フロアに立ち寄られるお客様も増え、改装による買い周り効果が表れていることも、売上好調の要因となっています。(営業1部 ミセスプレタ・NMコーディネート、フラワーサイズ担当マネジャー 野田善昭)
そごう・西武
そごう・西武の全店計は前年同月比2.0%増と、14ヶ月連続で伸長した。プレステージブランドや高級雑貨は引き続き好調で、コロナ前の2019年比で2桁成長。衣料品もトータルで同水準まで回復した。また、食品について前年の巣ごもり需要の反動が見られたが、そごう大宮店の食品フロアのリニューアルオープンが奏功し、前年並みに推移した。免税売上では2019年比で6割弱まで回復した。
■そごう大宮店で注目された売り場:リニューアルした食品フロアの「ケーキロード」
11月17日にリニューアルオープンしたそごう大宮店の食品フロアが好調。「ル ショコラ ドゥ アッシュ(LE CHOCOLAT DE H)」などケーキを扱うブランドを新たに集めた「ケーキロード」が特に好調で、「ケーキロード」の売上は計画比1.2倍、ケーキの売上は前年比1.5倍と大きく伸長しました。さいたま市はケーキの都市別支出額が高い地域という背景もあり、ケーキロードをきっかけに新たなお客さまの動員にもつながっています。
また、東京・文京区根津にある鮮魚店「根津松本」からのれん分けした百貨店初登場の「分 根津松本 鈴」は、「海苔弁 上」(税込2916円)が連日午前中に完売の人気ぶり。他にも惣菜の人気店「柿安ダイニング」や女性がゆっくりくつろげる「ベジプラットカフェ」などがオープンし、地域のお客さまの来店も増えています。(リーシング本部 フード担当 溝部智弘)
「ショコラドゥアッシュ・ジェラテリア」
Image by: そごう大宮店
松屋
松屋の売り上げは前年同月比25.5%増で、前月に引き続き2桁増で推移。富裕層を中心とした国内客による買い上げが好調だったほか、免税売上についても主に台湾、香港、韓国、タイ等の外国人観光客が軸となり、コロナ前となる2019年同月対比で約1割減の水準まで戻した。このような堅調な買い上げ動向は年末年始も続くと見ている。
■松屋銀座で注目された売り場:リニューアルした紳士フロアに新設「コンバインゾーン」で婦人アイテムが売れる
松屋銀座では、今秋リニューアルした紳士・婦人のウェアと雑貨を総合的に備えた「コンバインゾーン」が前年比1.5倍以上と好調。いずれもコートやニットなど防寒アイテムの動きが良いです。紳士と婦人の両方を同フロアで見られることから土日を中心に夫婦やカップルの来店が多く、コンバインのブランドにおいては紳士フロアにもかかわらず婦人アイテムの売上シェアが3割を占めています。また、女性が紳士アイテムを購入する姿や、女性向けのギフトを紳士フロアで買えるので嬉しいという男性の声も多く聞こえています。(松屋銀座 紳士MD担当課長 木村麻里)
コンバインゾーンの売り場
ブラックレーベル クレストブリッジ
Image by: 松屋銀座
阪急阪神百貨店
阪急阪神百貨店の11月度の売り上げは阪急・阪神両本店が牽引し、前年同月比11.0%増で2桁増を維持。コロナ前の2018年対比は同1%増、インバウンドを除いた国内売上高では同2%増とともに今月も上回った。免税売上高は、韓国・香港・台湾からの観光客の買い上げがコロナ前を大きく上回り、2018年対比で約9割にまで回復した。
阪急うめだ本店は先月に続き2ヶ月連続で過去最高の売上高を達成。2018年対比では同8%増とコロナ前の実績を上回った。秋冬商品の実需期を迎えたことで、化粧品も含む婦人ファッション全般の売上高が2桁増と活況している。コートやニット、ジャケット、ロングブーツのほか、人と会う機会の増加も背景にドレスにも動きが見られた。また、ラグジュアリーブランドをはじめとするブライダルが好調。エンゲージリングにおいては100万円以上の高額アイテムも動きがあり、購買意欲の高さを感じているという。
■阪急うめだ本店で注目されたアイテム:ジェンダーレスで身に着けられるチェーンネックレス
ご褒美・自分へのギフトで打ち出したチェーンネックレスは、トレンドのアクセサリーとして注目されていることに加え、秋冬ファッションに合わせてもコーディネートのアクセントになることから好調。「ミラモア」や「カオル」などジェンダーレスで身に着けられるブランドが性別・年代問わず人気を集めています。また、1階アクセサリーフロアでは、11月16日からチェーンアイテムをはじめとする大切な人とつながる様々な“絆”を表現したモチーフジュエリーを提案。クリスマスに向けてさらに需要が高まると期待しています。(阪急うめだ本店 担当者)
■「百貨店ウォッチ」バックナンバー
・2022年10月度:秋冬商戦スタート、コロナを経て買い替え需要も
・2022年9月度:ファッション・芸術・食欲の秋 ブーツ商戦にも熱
・2022年8月度:各社で売上2桁増、衣料品回復の兆し
・2022年7月度:セールよりも実需アイテム? 日傘やサングラスなど定価商材売れる
・2022年6月度:気温上昇でUVケア商品に注目、化粧品需要も回復
・2022年5月度:3年ぶりに行動制限のないGW商戦で売れたものは?
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