日本国内の主要百貨店6社(三越伊勢丹HD、高島屋、大丸松坂屋百貨店、そごう・西武、松屋、阪急阪神百貨店)の月次既存店売上をレポート。各社の主要店舗で売れた商品もあわせて紹介する。
2022年9月度は、台風による臨時休業や営業時間短縮などの影響があったものの、各社で前月に引き続き売上2桁増で推移。一部店舗では上顧客向けのイベントが売上を後押しした。
※売上増減率は各社いずれも速報値を参照
※売上は収益認識基準ではなく従来の総売上高で開示
目次
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三越伊勢丹HD
伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店で好調が続く三越伊勢丹ホールディングス。9月度も国内百貨店計で22.8%増を記録した。伊勢丹新宿本店と三越日本橋本店では、コロナ前の2019年は増税前の大きな駆け込み需要があったたため実績には届かなかったが、2018年実績は大きく上回った。宝飾・ハンドバッグに加えて、ラグジュアリーブランドやデザイナーズブランドを中心とした秋冬の新作も好調に動いた。また、同月に上顧客向けに開いたイベントでの売上も押上要因となった。
■伊勢丹新宿店で注目されたアイテム:セルジオ ロッシなどのショートブーツ
9月はまだ残暑が厳しい気候であるものの、最初に取り入れやすい秋冬ファッションとしてラグジュアリーブランド中心に、ショートブーツの動き出しが年々早まっている傾向です。トレンドとしては継続してコンバットブーツやサイドゴアといったボリューム感のあるデザインが人気で、厚めのソールで歩きやすい機能性も兼ね備えていることから、幅広い年代に支持されています。中でもバリエーションが豊富にそろう、セルジオ ロッシが売上を牽引しています。今年はミドル丈やロングブーツ復活の新たな兆しもあり、これから本格化するブーツ商戦において注目しています。(伊勢丹新宿店 本館2階 婦人靴 バイヤー 霜田 修稔)
高島屋
高島屋の9月度は前年同月比20.1%増で、先月に引き続き2桁増。緊急事態宣言の影響を受けていた前年の反動に加えて、高額品が好調だった。
■高島屋新宿店で注目されたアイテム:成人式に向けた振袖や髪飾り
高島屋新宿店11階呉服サロンでは約100点の振袖を揃えており、来年1月に成人式を行うお客様にお買上げいただいております。9月の振袖の売上は昨年同月比62.7%増で、振袖をお召しになる際に着ける髪飾りは同月比77.7%増です。
振袖は、おばあ様やお母様のご意見を取り入れる方が多いのですが、ヘアメイクについてはご自分で決めたいという方が多く、また、振袖は事前の写真撮影と成人式当日の2回お召しになるため、髪飾りを2種類そろえるという方もいらっしゃいます。髪飾りはさまざまなデザイン、素材、色のものを約250種類取り揃えており、ハレの日を彩る髪飾りは、ボリューム感のあるもの、個性的なデザインのもの、成人式の後でもファッション小物として使えるものなどが注目されています。(高島屋新宿店 担当者)
大丸松坂屋百貨店
前年同時期に全国主要都市で新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言が実施されていたことによる反動増に加え、ラグジュアリーブランド、宝飾品などの好調持続により、大丸松坂屋百貨店の既存店ベースで前年同月比22.4%増の伸長率を示した。主要店舗の一つである松坂屋名古屋店では、9月中旬以降の気温の低下に伴い秋物衣料の動きが活発化も見られたという。
※免税売上高の実績に大丸心斎橋店の定期賃貸借テナントの免税売上は含まない
■松坂屋名古屋店で注目されたアイテム:現代アートを中心とした美術品
9月は新規催事の「D-art,Art」や「現代美術の過去・現在・未来展」など美術品の中でも勢いのある現代アートの大きなイベントが続き、美術品の売上は対前年比で約2倍、予算比でも40%増となりました。
9月2週目に開催した「現代美術の過去・現在・未来展」で販売が好調だったのは、ニック・ウォーカー氏の作品です。名古屋店では、以前からニック氏の作品が他店と比べてもよく売れていたのですが、今回のイベントでは特別にご本人に来場いただき、ニック氏の作品をお買い上げいただいたお客様に記念撮影やサイン色紙などのファンサービスを行ったことにより、リピーターのお客様にも多くご来場いただきました。ご本人による丁寧なファンサービスは非常に好評で、売約獲得に大きく寄与したものと考えます。
9月1週目に前半に開催した新しいコンセプトアートフェア「D-art,ART」では新たな取り組みとしてデジタルコレクティブルの販売にもトライしました。通常のアートイベントとは異なる客層が来場され、新たな客層へのアプローチにも手応えを感じています。(営業2部マネジャー 美術・呉服・学生服担当 小田知紀)
そごう・西武
そごう・西武では既存店ベースで前年同月比14.5%増となり、12ヶ月連続で伸長。今回もほぼ全領域で前年を超えて推移し、プレステージブランドの売上はコロナ前の2019年実績を維持している。
■西武池袋本店で注目されたアイテム:改装した食品フロアの銘菓や名産品 酒売場では行列も
約1000種類以上の商品を全国津々浦々から自分たちでチョイスした自主編集売場「諸国銘菓・諸国名産」が9月8日にリニューアルオープン。面積を2.2倍、品ぞろえを1.7倍に拡充し売上は前年比約220%増と大きく伸長しました。従来の百貨店顧客に加え、夕方のビジネスマンやOLに大人気。インスタ映えなどを意識して商品投入した次世代ターゲットの20代顧客も伸長しております。
9月22日には酒売場も新たにオープン。厳選導入した「日本の酒」「世界の酒」「プレミアムワイン」の3つのスペシャリティストアから成る地下2階の「酒蔵」の売上は、前年の酒売場比較で約240%に伸長。特に関東初出店の「酒商山田」はマニア垂涎の日本酒の品揃えでお客様からお褒めの声を多くいただいており、夕方には行列が出来るほど人気です。(リーシング本部 フード担当 溝部 智弘)
「諸国銘菓・諸国名産」
Image by: 西武池袋本店
松屋
松屋全体では約4割増と先月に引き続き大幅な伸長率を記録。銀座店で8月上旬に売場面積を2割拡大してリニューアルした化粧品は前年比約1.5倍、ラグジュアリーブランドは同約35%増、時計は同約79%増になる等、銀座店の強みとなるカテゴリーが大幅に売上を伸ばし館全体を牽引した。月上旬には松屋カードホルダー等を対象とした「松美会・秋の感謝祭」を開催し、2日間の売上高は過去最高となる16億円超を計上した。
■松屋銀座で注目されたアイテム:銀座の名店の人気メニューが揃う冷凍食品
8月31日にオープンした冷凍食品売場「ギンザフローズングルメ」が好調な滑り出し。銀座の名店の人気メニューを冷凍した「銀ぶらグルメ」をはじめ、ここでしか買えない冷凍食品が人気です。売上は想定の2倍以上。若いカップルからご年配の方まで、購入層は幅広く、近隣にお住まいの方はもちろん、遠方からお越しいただく方もいらっしゃいます。ECでの品揃えは現在7割程度ですが、そちらも順調。リピート購入される方もいて、冷凍食品ならではの美味しさをご理解いただけたのだと思います。(松屋銀座 食品1課 課長 今井克俊)
(上段左から)「ギンザフローズングルメ」の売り場、銀座みかわや「舌平目かに肉包揚げ」、(下段左から)銀座ピエスモンテ「チーズケーキ」銀座アスター「海老のチリソース」
「ギンザフローズングルメ」の売り場
銀座みかわや「舌平目かに肉包揚げ」
銀座ピエスモンテ「チーズケーキ」
銀座アスター「海老のチリソース」
阪急阪神百貨店
大型台風の影響から一部店舗で時短営業や臨時休業があったものの、前年の緊急事態宣言発出があった反動から、阪急阪神百貨店の9月の売上は36.1%増と大幅に伸長。都心部の店舗は前年比約5割増と好調に推移しており、中でもリモデルの一環で8月末にモード売り場や化粧品売り場がオープンした神戸阪急は新規顧客の獲得にもつながるなど手応えを感じているという。
阪急うめだ本店では、大阪での高齢者への外出自粛要請が8月下旬で解除となったことから年配客の来店が回復。月後半に入ると秋冬商品の動きが活発になり、モードやラグジュアリーファッションを中心にコートやジャケットが牽引した。ショートブーツやネックレス、バッグなどのアイテムも動いた。ブライダルニーズも高まった。
■神戸阪急で注目されたアイテム:NARSやDIORなど リニューアルしたビューティ売り場が好調
8月31日に神戸阪急本館2~4階に約1700平方メートル規模でリニューアルオープンした「HANKYU BEAUTY KOBE」が9月に入っても好調に推移。新たに導入した「ナーズ(NARS)」「ディオール(DIOR)」等が好調にスタート。既存ブランドについても限定品等リニューアルオープン企画による効果もあり、前年から2桁以上伸長し、HANKYU BEAUTY全体で前年から4割近い売上増がありました。
また、8月31日に新館1~3階に同時オープンした「Hankyu Mode Kobe」にご来店のお客様の買い廻り効果なども後押ししました。(神戸阪急 担当者)
■「百貨店ウォッチ」バックナンバー
・2022年8月度:各社で売上2桁増、衣料品回復の兆し
・2022年7月度:セールよりも実需アイテム? 日傘やサングラスなど定価商材売れる
・2022年6月度:気温上昇でUVケア商品に注目、化粧品需要も回復
・2022年5月度:3年ぶりに行動制限のないGW商戦で売れたものは?
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