日本国内の主要百貨店6社(三越伊勢丹HD、高島屋、大丸松坂屋百貨店、そごう・西武、松屋、阪急阪神百貨店)の月次既存店売上をレポート。各社の主要店舗で売れた商品もあわせて紹介する。
2022年7月度は各社で2桁増を記録。クリアランスセール開催もあったが、ブラウスやサングラス、日傘といった実需アイテムがプロパーで売れたという。
※売上増減率は各社いずれも速報値を参照
※売上は収益認識基準ではなく従来の総売上高で開示
目次
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三越伊勢丹HD
国内百貨店計で前年同月比14.6%増加。伊勢丹新宿店と三越日本橋店の基幹店は2019年の実績を上回り、三越伊勢丹としては9ヶ月ぶりに2019年の実績を超えた。
基幹店では引き続きラグジュアリーブランドなど高付加価値のある商品への購買意欲が高く、時計・宝飾・ハンドバッグに加え、早期の梅雨明けによる気温上昇でワンピースやカットソーといった夏物衣料、晴雨兼用傘やサングラスなどの服飾雑貨が大きく伸長した。
■伊勢丹新宿店メンズ館で注目されたアイテム:「トムウッド」のジュエリー
メンズジュエリー売り場全体で、前年対比で好調です。特に夏の需要として、リング、ブレスレット、バングルが例年同様に人気。ブランドとしては「トムウッド」を数多く展開していることもあり、売上を牽引しています。(伊勢丹新宿店 メンズ館 メンズアクセサリー アシスタントバイヤー 清水千晶)
トムウッドの売り場より
高島屋
高額品をはじめ消費意欲が引き続き堅調で、7月度も前年同月比2桁増で推移。免税を除いた店頭売上も同8.7%の増加となった。2019年同月比の店頭売上は6.8%減だった。
■高島屋新宿店で注目されたアイテム:中型・大型のスーツケース
コロナがまだおさまらない状況ではありますが、予防策をとった上で国内旅行や海外旅行を楽しむ方が増えているようで、7月のスーツケースの売上は前年同月と比べて4倍超となっています。「久しぶりに旅行できるのが楽しみで、この機会にスーツケースを新調したい」というお客様が増え、さまざまなカラーとサイズのスーツケースが売れています。出張も再開されているようでブラック、グレー、ネイビーが好調。旅行用にはイエローやパステルピンクなど明るめのカラーも人気です。サイズは、これまではロッカーに入る小型のものが売れていましたが、最近は中型・大型のものをお買い求めの方が増えています。(高島屋新宿店 担当者)
大丸松坂屋百貨店
新型コロナウイルス感染症の再拡大に伴う外出自粛から下旬に入店客数が減少したものの、前月に引き続き13.8%増と2桁成長を維持。店舗別では大丸神戸店と松坂屋名古屋店が2019年実績を上回った。ラグジュアリーブランドや宝飾品が引き続き全体を牽引したほか、パラソルやキャリーケースなど、猛暑影響や夏季休暇に向けた商材の動きが良かったという。また、6月の入国制限の緩和を受けて、免税売上高(大丸松坂屋百貨店既存店計)は同433.6%増、客数同441.0%増と大幅に伸長した。
※免税売上高の実績に大丸心斎橋店の定期賃貸借テナントの免税売上は含まない
■松坂屋名古屋店で注目されたアイテム:「ヴァシュロン・コンスタンタン」などの高級時計
7月6日に改装オープンした時計・宝飾のフロア合計の7月の売上が、前年同月比で+30%で好調に推移するなど、高額品の消費好調が続いています。新時計売場「GENTA the Watch」に新設されたライブリペアゾーン(時計修理工房)があるウォッチテラスには、連日賑わいを見せており、広くなった環境で多くのお客様をスムーズに対応できる様になりました。
今回の改装で新たにブティック化した「ヴァシュロン・コンスタンタン」では、ブランドの世界観に没入しやすいブースが構えられたことで高級商材をじっくり接客出来る様になり、売上は前年を上回っています。(本社 営業本部 MDコンテンツ開発第1部 松坂屋名古屋店 時計・メガネ担当 長谷川明宏)
そごう・西武
既存店全店計で前年同月比13.9%増と2桁増益を記録。ほぼすべての領域で前年を超えて推移した。高級雑貨とプレステージブランドが引き続き売上を牽引。高級雑貨は2019年同月比で45%増、プレステージブランドは同50%増とコロナ前よりも好調だ。衣料品計も前年比約20%増、2019年比でも9割まで回復した。気温上昇でワンピースや日傘など盛夏物が動いたほか、スーツケースなど旅行用品も動きを見せている。
■西武池袋本店で注目されたアイテム:暑さ対策アイテム 男性用日傘は売上5倍に
猛暑の影響で暑さ対策アイテムが好調。西武池袋本店の紳士フロアでは「暑さ対策クール雑貨特集」を開催し、男性用日傘が前年比で約500%と大幅に伸長しました。ブランドの軽量日傘や軽量&Wジャンプ機能付きの日傘など6000~1万円の価格帯が人気で、特に「遮光遮熱〇%」という表記を見て、しっかり暑さ対策のできるものを探される方が多く見られました。また、昨年に比べ暑いこともあってか、日傘=女性のものという抵抗少なくなっているようです。蒸し暑さから扇子の売上も好調で、ギフト・自家需要ともにお買い求めのお客さまが多かったほか、新規で入れた充電式のWファンなどのクール雑貨をついで買いされるお客さまも多く見られました。
また、3年ぶりの行動規制の無い夏休みのということもありトラベル関連アイテムも好調。スーツケースはそごう・西武合計で前年比約300%伸長しました。(リーシング本部商品計画部 MD担当 車田裕樹)
松屋
前年に対して約3割強の増加となり、高い伸長率を示した。好調のカテゴリーは化粧品(前年比約38%増)、ラグジュアリーブランド(同約51%増)、時計(同約78%増)。また、サングラスや日傘などの婦人雑貨が前年比約3割増となるなど、クリアランスセールと並行して厳しい暑さを反映した実需プロパー商材が健闘した。
免税を除く売上は2019年同月比で約17%増。入店客数も前年対比約3割増で推移し、新型コロナウイルスの再拡大による大きな影響は現時点で見られないという。
■松屋銀座で注目されたアイテム:日傘など夏の婦人雑貨 サングラスは細めフレームに熱視線
連日の猛暑を受け日傘やサングラスなど婦人雑貨が好調。日傘は急な雨にも耐えられる晴雨兼用を中心に、遮光・遮熱・UVなど機能性の高い商品を求められる方が多く、2倍以上の売上となりました。サングラスは、マスクの大きさとのバランスを意識して選ぶ傾向が見られ、フレームが細めで丸いミニマルなデザインのものが人気。売上高は前年比2割増で動いています。(松屋銀座 婦人雑貨バイヤー 原田敬太)
阪急阪神百貨店
阪急うめだ本店、阪神梅田本店の両本店が牽引し、売上高は前年同月比10.2%伸長。中旬以降、新型コロナウイルス感染再拡大の影響で売上高の伸びは鈍化したが、先月に引き続き2桁増となった。インバウンドを除く国内売上高の2019年対比は、都心店計で100%と同水準で推移。阪急・阪神両本店の国内売上高はともに同4%増、阪神に関してはインバウンドを含めた対比でも2%増といずれも実績を上回った。
阪急うめだ本店の概況としては、3年ぶりに夏のクリアランスを1日から一斉スタートしたものの、セールの勢いは限定的だった一方、婦人・紳士ファッションは定価商材の売上高が伸長。中でもブラウスや帽子、サンダル、サングラス、パラソルなどの実需アイテムの動きが良く、セールも含めて前年実績を上回った。カテゴリー別ではモード、ラグジュアリーファッションやアクセサリー、バッグ、宝飾品が好調を維持。100万円以上の高額品の売上高は前年比3割増となった。
■阪急うめだ本店で注目されたアイテム:パフスリーブやフリルのブラウスがママ世代から支持
婦人ファッションでは4階コンテンポラリーに今春よりオープンした「イットコンテンポラリー」などで、30~40代のママ世代を中心にパフスリーブやフリルのブラウスが好調。特に、ふんわりしたフェミニンでボリューム感のあるデザイン性の高いものが人気です。カラーは白や黒を選ばれる方が多く、色違いで2点購入されるお客様も見受けられました。(阪急うめだ本店 担当者)
※イットコンテンポラリー:自らのライフスタイルを発信する作り手に対する“共感”を大切にするお客様に向け期間MDを編集し提案する新売場。4階「アーバンスタイル」の一部をリニューアルし、今春オープンした。SNSなどで注目を集める人がプロデュースするブランドや、ライフスタイルを彩る旬のアイテムを展開している。
■「百貨店ウォッチ」バックナンバー
・2022年6月度:気温上昇でUVケア商品に注目、化粧品需要も回復
・2022年5月度:3年ぶりに行動制限のないGW商戦で売れたものは?
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