そごう・西武がセブン&アイ・ホールディングスによる米投資ファンドへの売却により経営環境が大きく変化したほか、地方百貨店の閉店発表が相次ぐなど、百貨店業界で淘汰が始まりつつあるなか、国内百貨店大手4社の2023年度上期決算はインバウンド売上の復活を背景に各社で増収増益を達成。各社の業績と主なトピックスを解説するとともに、下期のポイントをまとめた。
※業績はすべて百貨店事業の実績
※()内の増減は前年同期比
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三越伊勢丹HD
■三越伊勢丹ホールディングス 百貨店業 上期連結業績(2023年4月〜9月)
総額売上高:5215億6900万円(12.6%増)
セグメント利益:167億8600万円(227.0%増)
<主なトピック>
・統合後、上期として最高益を達成。8月に続き2度目となる通期業績予想の上方修正を実施。
・宝飾品やラグジュアリーブランドなどの高額品だけではなく、化粧品や食品など幅広いアイテムが好調。
・9月に開催した重要顧客向けの招待会である伊勢丹新宿本店の「丹青会」、三越日本橋本店の「逸品会」では、ともに過去最高の売上を記録。
・国内百貨店合計の免税売上高は上期において過去最高額を更新。
・創業350周年の三越日本橋本店でさまざまな催事を開催。オリジナル包装紙「華ひらく」では「ヨウジヤマモト(Yohji Yamamoto)」とタッグ。
・伊勢丹新宿店では新宿三丁目に移転して90周年を迎え、さまざまなプロモーションを展開。
・伊勢丹新宿店本館3階に上質なデイリーウェアが揃う新コンセプトゾーン「コンテンポラリー(Contemporary)」がオープン。
・伊勢丹新宿店メンズ館で「香水夏市」を開催。
<下期の注目>
・伊勢丹新宿店で香水の祭典「サロン ド パルファン」が今年も開催。
・従業員の賃上げ実施を検討。
・化粧品オンラインストア「ミーコ(meeco)」内にメンズコスメサイトがオープン。
・1月2日と3日に開催される新春祭ではバンダイのオリジナルカプセルトイブランド「ガシャポン」と初コラボ。
2024年3期通期業績予想
総額売上高:1兆1150億円(9.6%増)
セグメント利益:390億円(90.9%増)
高島屋
■高島屋(国内百貨店)上期連結業績(2023年3月~8月)
総額売上高:3695億9900万円(6.7%増)
営業利益:77億900万円(119.5%増)
純利益:102億6000万円(11.1%減)
<主なトピック>
・上期を通して、婦人服や紳士服、化粧品など、ファッション関連商品を中心に堅調に推移。
・高額品は値上げ実施も減速することなく好調を維持。
・高島屋新宿店でのプロレス催事が話題に。
・ジュンと高島屋限定の新業態「モア サロン エ ロペ(moi salon et ropé)」を開発。
・グループ商業施設において原則休業日を導入。
・ベースアップを実施。
<下期の注目>
・「立川高島屋S.C.」や「京都高島屋S.C.」が開業。百貨店区画縮小と専門店ゾーン拡大の動きが進む。
・独自で運営を行うサイト「高島屋クラウドファンディング」をスタート。
2024年2期通期業績予想
総額売上高:7851億円(6.2%増)
営業利益:178億円(62.2%増)
純利益:159億円(8.8%減)
大丸松坂屋百貨店
■大丸松坂屋百貨店 上期連結業績(2023年3月〜8月)
総額売上高:3199億9600万円(14.5%増)
営業利益:104億200万円(127.4%増)
四半期利益:70億2300万円(101.2%増)
<主なトピック>
・訪日外国人観光客による売上が大きく伸長。香港、台湾、韓国など東アジアの観光客がメインで、中国本土からも徐々に増加している。免税売上高は約250億円。
・引き続きラグジュアリーや時計、アートカテゴリーが売上を牽引。
・店舗別ではターミナル立地の大丸東京店や大丸梅田店、大丸札幌店が好調。また、大丸心斎橋店においては訪日外国人が売上を押し上げ、入店客数とともに大きく改善。
・ファッションサブスクリプション「アナザーアドレス」のサービス拡充に加えて、冷凍グルメ宅配のサブスクリプションサービス「ラクリッチ」をスタートさせるなど、オンラインビジネスを強化。
・外商売上高は950億円前後(前年同期比8.4%増)で着地。
<下期の注目>
・免税売上高は295億円程度の見込み。中国本土との直行便回復が進むことで押し上げ要因となることに期待。
・外商売上高は下期で約1050億円を計上する見込み。期初に目指していた「外商売上2100億円突破」達成も現実的となっている。
・大丸心斎橋店は⼼斎橋パルコとの相乗効果で過去最高売上を達成する見込み。
・百貨店業界としては初となるオリジナル3Dアバターの販売を開始。
・アナザーアドレスではブランド「リアドレス(reADdress)」を立ち上げ、一点物のレンタルに乗り出す。
2024年2期通期業績予想
総額売上高:6714億円(11.4%増)
営業利益:221億円(173.6%増)
当期利益:146億円(138.8%増)
阪急阪神百貨店
■阪急阪神百貨店 上期連結業績(2023年4月〜9月)
総額売上高:2574億7900万円(17.5%増)
営業利益:70億400万円(347.0%増)
<主なトピック>
・国内売上、インバウンド売上ともに、コロナ前にあたる2018年上期実績を上回り、過去最高を達成。
・インバウンド売上は6月以降、単月での最高売上を更新。中国売上の回復に加え、韓国や台湾、香港の売上が2018年から大きく伸長。
・阪急うめだ本店8階にサステナビリティを意識した商品やサービスを提供する新売場「グリーンエイジ(GREEN AGE)」がオープン。
・阪急うめだ本店に韓国発のアイウェアブランド「ジェントルモンスター(GENTLE MONSTER)」日本1号店がオープン。
・阪急うめだ本店と阪急メンズ大阪で毎年好評の「ピーナッツ(PEANUTS)」とのコラボレーション企画が今年も開催。
・阪急うめだ本店が3階にイベントスペース「ポップ アップ サーカス(POP UP CIRCUS)」を新設。
<下期の注目>
・神戸阪急の全館改装が完了。
・2022年2月から全館リモデルのため約1年半にわたり大規模な改装工事を行っていた高槻阪急が、「高槻阪急スクエア」に屋号を変更して10月にグランドオープン。
・阪神梅田本店を含めた大型店舗投資は一巡。
・阪神百貨店で「祝・リーグ優勝 阪神タイガースご声援感謝セール」を開催。
・阪急うめだ本店は2023年度通期予想も前年を上回り、過去最高売上の更新を見込む。
2024年3月期通期業績予想
総額売上高:5516億円(12.7%増)
営業利益:176億円(70.4%増)
知っておきたい百貨店業界のできごと
・約60年ぶりの百貨店スト 臨時休業の西武池袋本店前で抗議
・松屋銀座が24年ぶりに1月2日を休業日に、 ワークライフバランスを考慮
・「一畑百貨店」が来年1月に閉店 島根は“百貨店ゼロ”県に
・名鉄百貨店一宮店が閉店を正式発表、23年の歴史に幕
・そごう千葉店が約10年ぶりに全館リニューアル、ジュンヌ館の営業を一時終了
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